アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

韓国報告<中>韓国は歴史を忘れない

2019年09月09日 | 日記・エッセイ・コラム

      

 3回目の訪韓であらためて胸に刻まれたのは、韓国という国そして国民は、けっして歴史を忘れない、とりわけ帝国日本による侵略・植民地支配の歴史は忘れない。忘れないどころか、新たな史実の発掘も含め、歴史の教訓を今と今後に生かそうとしていることです。

  国立日帝強制動員歴史館(プサン駅からバスで約30分、徒歩約10分)…「日本によって行われた強制動員の惨状を国民に広く知らしめ、正しい歴史意識を鼓舞し、人権と世界平和に対する国民教育の場を提供する目的」で、2015年12月10日、国が約52億円を投じて設立しました(写真左から1)。 

 強制動員とは、「日本帝国主義がアジア・太平洋地域で行った人的・物的動員と資金統制のこと」と定義されています。その内訳は、労務動員(徴用工)約755万人(重複動員を含む)、軍属動員、軍人動員・約20万人以上、女性動員(性奴隷・「40万人以上と言われている」)。

  展示品でとりわけ目を引いたのは、徴用工らを使役した三菱重工など日本企業の各種の書類です(写真2)。徴用工問題はこうして徴用工を酷使した日本企業と犠牲になった朝鮮の人々(被害者)の問題、被害工員に対する加害企業の補償の問題です。国家間の条約・協定(1965年)で解決したという安倍政権の言い分がまったく誤りであることがあらためて実感されました。

 〇 漢陽(ハニャン)都城博物館(ソウル駅から地下鉄で5番目東大門駅すぐ)…「朝鮮時代(14C-引用者)から現代にいたるまでの漢陽都城(首都の城郭)の歴史と文化」を伝えるものです(写真3)。

 注目されたのは、近年の発掘調査で、「日帝強占(植民地支配)期」に潰された水路跡が発見されたことです(写真4)。日本は韓国の首都を占領し、水路まで破壊して都市を造り替えたのです。それが遺跡として残り、最近になって発見され展示されている。そのことを私たち日本人は知る必要があります。

 〇 孫基禎(ソン・ギジョン)像・記念館(ソウル駅から徒歩約10分)…ベルリンオリンピック(1936年)のマラソンで優勝しながら、帝国日本の侵略・植民支配の象徴である「日の丸」を胸に付けざるをえなかったことに涙した孫選手。当時東亜日報は、孫選手の胸の「日の丸」を消す修正を行って紙面に出しました(「日章旗抹消事件」。7月30日のブログ参照)。

 その孫基禎の像(写真5)が首都の中心・ソウル駅から歩いてすぐの所にあり、母校の財団によって記念館(写真6)が設立・運営されている(無料で観られます)。このことも、韓国の人々の日帝支配に対する怒りを端的に示しているのではないでしょうか。

 〇 東大門・平和市場の全泰壱(チョン・テイル)像(東大門駅そば)…東大門に600㍍にわたって軒を連ねる平和市場は、衣料市場として有名です。そこを流れる清渓川(チョンゲチョン)の橋の上に1人の青年の像がありました(写真7=夜撮影)。労働運動家・全泰壱です。韓国の人ならみんな知っているそうです。

 「全泰壹は1965年からソウルの東大門平和ピョンファ市場で働き、劣悪な労働条件と人権侵害を体験して、労働運動家となり、活動していました。そして1970年11月、「勤労基準法を遵守しろ」「私たちは機械ではない」「日曜日は休ませろ」など叫びながら、抗議の焼身自殺をしました。その時彼は22歳でした」(ブログ「シンナラ韓国」http://sinnara9.com/pyeonghwamarket/より)

 韓国は日帝支配の歴史だけでなく、市井の労働運動家のたたかいの歴史も忘れず、讃え、教訓にし続けているのです。

 〇 深夜に公共放送で連日ドキュメンタリー…ハングルが分からないまま、ホテルでテレビをみていたら、午後11時から1時間、KBS放送(韓国の公共放送)でドキュメンタリー番組をしていました。テーマは「慰安婦」「朝鮮軍夫」など。沖縄の具志堅隆松さん(ガマファー)も出ていました。翌日も同じ時間、局でドキュメンタリーはありました。やはり日帝支配に関連するもののようです。これが韓国の公共放送、市民が見るテレビです。
  ほかにも新たに気づいたことがありますが、別の機会にします。

 博物館・史跡に共通していることがあります。それは日本語の説明板がほとんどないことです(博物館には日本語のリーフはあります)。「3・1独立運動」の記念地・タプコル公園(鐘路3街駅徒歩5分)にある「独立宣言文」(写真8)も、ハングル訳、英訳はありますが日本語訳はありません。

  「日本人観光客に親切」な韓国と矛盾するようなこの現状をどうみればいいでしょうか。
 私はこう考えます。「日本語の説明がない」とぼやく前に、グルメやエステを目的に韓国を訪れる日本人観光客のいったい何人が国立日帝強制動員歴史館やタプコル公園を訪れるのかを問うべきだろう。もし多くの日本人観光客がこうした博物館・史跡を訪れていれば、韓国はおそらく日本語説明板を設置するだろう。日本語の説明が少ないのは、日本人の歴史に対する無関心の反映ではないか。

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