原理原則を逸脱した日本共産党の「共闘」路線の誤りが、またしても表面化しています。
2月20日告示、同27日投開票の沖縄・石垣市長選は、「現職の中山義隆氏が4期目に向けて出馬を正式に表明したのに対し、市議会野党(「オール沖縄」陣営―引用者)は市議の砥板(といた)芳行氏を保革合同で擁立することを決めた。一騎打ちの流れが固まったかに思われたものの、年が明けて野党内に新たな候補者の擁立を模索する動きが表面化。「オール沖縄」を中心とした野党は分裂含みの様相も呈している」(14日付琉球新報。写真左は砥板氏擁立の説明会。反対の市議の空席が目立つ=同紙より)。
「オール沖縄」陣営の混迷の原因はどこにあるのでしょうか。
それは、「中山氏、砥板氏ともに保守系で、これまで市内への陸上自衛隊配備計画を推進してきた。このため…陸上自衛隊配備計画を抱える地元住民や革新支持層の一部に、砥板氏の擁立を決めた選考への反発が収束していない」(同、琉球新報)からです(写真中は石垣市の自衛隊配備予定地)。
砥板氏の擁立は、昨年12月末、「急転直下で発表」(同)されました。「自他共に認める自衛隊石垣配備の推進論者」(同)である砥板氏を「オール沖縄」陣営が擁立するのはなぜか。昨年1月の宮古島市長選の経験から、「石垣市長選でも保守の票を切り崩す候補者でなければ当選は難しいという認識」(同)のためです。
日本共産党は砥板氏を擁立する立場です。同党の井上美智子市議は、「砥板氏の考えと党の思想は対極だが「本人が自民党を抜けると言っているので問題ない」と説明する」(13日付沖縄タイムス)。しかし、「党員からは批判が噴出しているという。それでも砥板氏を推す理由に、保守分裂しながら敗れた4年前の反省を挙げる。「革新が一つになっても勝てなかった。配備反対を唱えても厳しい。砥板氏の過去ではなく今を見て『反中山』でまとまるしかない」と一本化を模索する」(同沖縄タイムス)。
これこそ政策そっちのけの数合わせであり、たたかう前から「勝てない」とみる敗北主義にほかなりません。
共産党はじめ「オール沖縄」陣営は昨年の宮古島市長選を成功事例として踏襲しようとしているようですが、とんでもないことです。
宮古島市長選で「オール沖縄」が擁立したのは、同市への自衛隊配備賛成を公言している元自民党県議の座喜味一幸氏でした。その結果、市長選は自衛隊配備に賛成する者同士の選挙となり、配備反対の市民の声は完全に排除されたのです(2021年1月12日、19日のブログ参照)。これがどうして成功例なのでしょうか。
「砥板氏では投票できないと悩んだり、涙ぐんだりする支持者がいる。そういう声を受け止める選択肢を用意しなければならない」(同沖縄タイムス)
「オール沖縄」陣営内で砥板氏以外の候補擁立を模索する会派(「ゆがふ」)の市議の言葉です。共産党・井上市議の言葉と比較して、どちらが有権者の立場に立っているかは明らかでしょう。
沖縄は米軍と自衛隊の一体化がすすみ、県内各地とりわけ島嶼部への自衛隊配備を強化して、沖縄をミサイル基地化しようとしています。
それは辺野古新基地建設強行と並んで、沖縄の、いや、日本の最重要問題です。それに賛成する人物を擁立し、選挙の争点にしない。それが「勝てる選挙を」という数合わせ優先の「保革共闘」です。ここに、日本共産党の「共闘」路線の誤り、日本の「平和・民主」勢力の悲しい実態が端的に表れています。
石垣市長選では、「自衛隊配備・ミサイル基地化反対」を正面から掲げる候補を擁立し、それを最大争点にしてたたかうべきです。「本土」の私たちも、沖縄の人たちとともに、その候補を応援し、沖縄の戦場化、日本の戦争国家化をなんとしても阻止しなければなりません。