アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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首相会見で「東京五輪」を追及しない日本メディア

2021年07月31日 | 五輪と政治・社会・メディア

    
 30日午後7時から行われた菅義偉首相の記者会見(写真左・中)。新型コロナ感染のかつてない急拡大の責任と今後の対策を徹底的に追及しなければならない会見でした。とりわけ、東京五輪の無謀な開催強行が感染の急拡大を招いたことは明白で、五輪の即時中止をめぐる質疑が注目されました。

 ところが、1時間5分に及ぶ会見で、計13人の記者(日本の新聞・放送=10人、外国メディア=2人、フリー=1人)が質問しましたが、東京五輪開催の責任と中止を追及した日本のメディアの記者は1人もいませんでした。

 冒頭の「幹事社代表質問」で、北海道新聞の記者が「五輪は予定通り続けるのか」と“お伺い質問”を行っただけです。菅首相は例によって質問にまともに答えませんでしたが、幹事社は再確認・再質問することはありませんでした。

 その後の質問は、「人流の規制」「ワクチン」に終始し、東京五輪に関する質問は皆無でした。読売新聞記者に至っては、コロナ対策とまったく関係のない「解散・総選挙」についての質問で、菅首相への助け舟を出しました。

 これは全滅か、と思ったとき、最後の質問者となった外国メディアの記者(おそらく日本人の特派員)が、こう質問しました。
「感染拡大をデルタ株のせいにしているが、それは見通しが甘かったということではないのか。見通しの甘さでオリンピックを開催した。オリンピックの結果、感染がさらに拡大し医療体制が崩壊したら、菅首相は責任をとって総理を辞職するのか」

 これこそ多くの市民の声を代弁している質問ではないでしょうか。菅氏の答弁は「コロナ対策が私の責任だ」と相変わらず質問にまともに答えない(答えられない)ものでしたが、一瞬場の雰囲気が変わった質問でした。しかし、NHKは会見の中継を7時50分で止めたため、ユーチューブの中継を見ていなければこの質問は分かりませんでした。

 こうした質問を日本の記者はなぜやらない、できないのでしょうか。

 五輪の感染対策の甘さ・不備については追及しなければならないことは山ほどあります。政権に対して腰が引けている「専門家」でも、いまや「五輪の中止」を口にするようになっています。記者たちはなぜ東京五輪に固執している首相を追及することができないのでしょうか。社の方針として「五輪の中止」は質問するなと指示されているのでしょうか。

 コロナ禍の中で開会を強行し、かつてない感染拡大でも「中止」要求の声に全く耳を貸そうとしない。これは安倍政権から続く菅政権の反市民的・独裁的体質を顕著に示すものです。同時に、「金メダル」報道に狂奔し、連日五輪熱を煽っている日本のメディアも、菅政権と共犯であることが、この日の記者会見で改めて露呈したと言えるでしょう。




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