その昔、人々は火を自由に使うことができなかった。冬になっても、暖をとることができなかったし、食べ物は生のまま食べた。火は雷が守っている大きな白い岩の中に、閉じ込められていた。雷はとても恐ろしく、誰もが怖がっていた。熊やクーガーでさえも、雷がゴロゴロいうと身を震わせた。
コヨーテは雷を恐れていなかった。実際、彼には何も怖いものがなかった。ある日、雷の機嫌が悪く、鼻息荒くうなり声をあげ、動物たちはこわがってみんな隠れていた。コヨーテは、雷から火を奪ってやるのによい機会だと考えた。彼は雷が住む高い高い山の上へ登って行った。「やあ旦那」コヨーテは言った。「サイコロゲームをしましょうや。旦那が勝てば、おいらを殺してもかまわないよ。おいらが勝ったら火をいただくってのはどうでしょう?」「よし、いいだろう。」と雷は答えた。
二人はビーバーとマーモットの歯でできたサイコロを使って、ゲームを始めた。ビーバーの歯は男サイコロ、マーモットの歯は女サイコロ。歯の片面には模様が彫られた。サイコロを平板の上に投げ、男サイコロの模様が上に出たら2点。女サイコロの模様なら1点。歯が平になって落ちなければ、得点はなし。木のひごで、得点を数えることにした。
さて、誰でもご存知のように、コヨーテは世にも知られたペテン師である。どんなゲームでも、うまくごまかして勝ってしまう。賭け事にかけて、雷はコヨーテの足もとにも及ばなかった。雷がちょっと目を離したすきに、コヨーテは自分のサイコロの模様の面が出るように、ひっくり返してしまう。雷のサイコロは、何も彫っていない面を上にする。ほんのまばたきした瞬間も逃さず、数え棒をサッと取ってくる。しまいに雷は、コヨーテがズルをしているのはわかっていたものの、どうしても証拠をつかむことができず、どんどん混乱してしまった。「旦那、わたしの勝ちのようですよ。」とコヨーテ。「さあ、火を渡していただきましょうか。」
コヨーテは他の動物を山の上に呼んで、火の入っている大きな岩を運ぶのを手伝ってもらうことにした。その岩は固く見えるが、貝殻のようにとても壊れやすかった。すべての動物は、注意深く岩を持ち上げようと構えた。すると雷は「ちょっと待った!」「コヨーテが勝ったのだから、お前たちに火をやるのはいいだろう。だが、あいつはズルをしおった。よって、わしはあいつの命をもらう権利があるぞ。奴はどこだ!」
コヨーテは、雷が怒ってこう言い出すだろうと重々承知であった。雷がやって来る前に、コヨーテはからだの外側、皮も毛もしっぽも耳も、まとめて体からはずすと雷のそばに置いた。そして内側、内蔵すべてを遠くに隠した。それから彼は自分がすぐ近くにいるように声色を調整して、「ここですよ。殺せるものならどうぞ。」と叫んだ。雷は火の入った大きな岩を持ち上げると、コヨーテめがけて投げつけた。しかし岩は、コヨーテのそと皮に当たっただけで、粉々に割れてしまった。山に集まった動物たちはみんな、小さくなった火の岩のかけらを脇の下や翼の下に入れて、てんでんばらばら世界中に帰って行った。そうやって、地上の部族はみんな火を使えるようになった。コヨーテは体の中身にそと皮をもどし、こう言って去って行った。「さよなら、旦那。もう二度と賭け事はいけませんよ。あなたはあまり上手じゃないようだ。」
コヨーテは雷を恐れていなかった。実際、彼には何も怖いものがなかった。ある日、雷の機嫌が悪く、鼻息荒くうなり声をあげ、動物たちはこわがってみんな隠れていた。コヨーテは、雷から火を奪ってやるのによい機会だと考えた。彼は雷が住む高い高い山の上へ登って行った。「やあ旦那」コヨーテは言った。「サイコロゲームをしましょうや。旦那が勝てば、おいらを殺してもかまわないよ。おいらが勝ったら火をいただくってのはどうでしょう?」「よし、いいだろう。」と雷は答えた。
二人はビーバーとマーモットの歯でできたサイコロを使って、ゲームを始めた。ビーバーの歯は男サイコロ、マーモットの歯は女サイコロ。歯の片面には模様が彫られた。サイコロを平板の上に投げ、男サイコロの模様が上に出たら2点。女サイコロの模様なら1点。歯が平になって落ちなければ、得点はなし。木のひごで、得点を数えることにした。
さて、誰でもご存知のように、コヨーテは世にも知られたペテン師である。どんなゲームでも、うまくごまかして勝ってしまう。賭け事にかけて、雷はコヨーテの足もとにも及ばなかった。雷がちょっと目を離したすきに、コヨーテは自分のサイコロの模様の面が出るように、ひっくり返してしまう。雷のサイコロは、何も彫っていない面を上にする。ほんのまばたきした瞬間も逃さず、数え棒をサッと取ってくる。しまいに雷は、コヨーテがズルをしているのはわかっていたものの、どうしても証拠をつかむことができず、どんどん混乱してしまった。「旦那、わたしの勝ちのようですよ。」とコヨーテ。「さあ、火を渡していただきましょうか。」
コヨーテは他の動物を山の上に呼んで、火の入っている大きな岩を運ぶのを手伝ってもらうことにした。その岩は固く見えるが、貝殻のようにとても壊れやすかった。すべての動物は、注意深く岩を持ち上げようと構えた。すると雷は「ちょっと待った!」「コヨーテが勝ったのだから、お前たちに火をやるのはいいだろう。だが、あいつはズルをしおった。よって、わしはあいつの命をもらう権利があるぞ。奴はどこだ!」
コヨーテは、雷が怒ってこう言い出すだろうと重々承知であった。雷がやって来る前に、コヨーテはからだの外側、皮も毛もしっぽも耳も、まとめて体からはずすと雷のそばに置いた。そして内側、内蔵すべてを遠くに隠した。それから彼は自分がすぐ近くにいるように声色を調整して、「ここですよ。殺せるものならどうぞ。」と叫んだ。雷は火の入った大きな岩を持ち上げると、コヨーテめがけて投げつけた。しかし岩は、コヨーテのそと皮に当たっただけで、粉々に割れてしまった。山に集まった動物たちはみんな、小さくなった火の岩のかけらを脇の下や翼の下に入れて、てんでんばらばら世界中に帰って行った。そうやって、地上の部族はみんな火を使えるようになった。コヨーテは体の中身にそと皮をもどし、こう言って去って行った。「さよなら、旦那。もう二度と賭け事はいけませんよ。あなたはあまり上手じゃないようだ。」