佐藤直曉の「リーダーの人間行動学」 blog

リーダー育成のための人間行動と人間心理の解説、組織行動に関するトピック

マイナスの暗示効果が発揮されている日本

2008-12-08 10:34:58 | 暗示型戦略
いま私は新聞小説のように、毎日連載小説『整体師 諸星玄丈』を書いていまして、そこでいよいよ「プロセス暗示」が登場してきます。

詳しいことは拙著『暗示型戦略』に載っているのですが、今日は簡単にこれを説明いたしましょう。

プロセス暗示というのは、何か目標があるとき、そこにどうやって到達するかをプロセスで示すことです。

プロセスというとわかりにくいですね。まあ難しいことではありません。「まずこれをやる。するとこうなる。さらにこれこれこうやって、最後はこういうふうにうまくいくんだ」と説明することです。

それで、このプロセス暗示で大事なのは、もちろんプロセスが合理的で達成可能なことです。これは設計者の能力に依存します。

それととても大事なことは、最初のステップが成功すること。成功すると、みんなが「この調子ならあいつのいうことは正しいかもしれない」と思い出す。これが暗示効果なんですね。

つまり、プロセスの設計者に対する信頼感が、プロセスを通過するたびにどんどん高まる。その最初の段階こそ大事だということです。

こういうのは、いろいろなところでいろいろな人が活用している。もちろん、プロセス暗示とはいっておりませんけれどね。

たとえば、三国志の諸葛孔明。彼は、有名な「天下三分の計」という戦略を劉備に授けています。

それまで、劉備は連戦連敗で、戦争下手、戦が弱いことで有名だったんです。そのめげている軍隊を立て直す策というのが孔明の天下三分の計でした。簡単にいうとこうです。

当時圧倒的に強かった魏の曹操に対抗するために、まず荊州と益州(四川省)を領有する。それによって、劉備、曹操、呉の孫権とで中国を大きく三分割する。

次いで、孫権と結んで曹操に対抗する。

そして、天下に何か変事があった際、勝負に出て、一挙に漢王朝を再興する。

このプロセスのなかで、最初のステップにおける重要な戦いが、「赤壁の戦い」ということです。これに勝利したことで、劉備は荊州を領有し、益州に攻め込んで214年には劉璋を降したことで天下三分割ができました。

残念なことに、その後関羽の失敗で荊州を維持できず、その先はうまくいきませんでしたが。

しかし、ともかく赤壁の戦いからしばらくは、負け犬軍団が急速に力をつけたわけです。これは、プロセスを提示することによる威力であったからだともいえます。孔明のいうことなら信用がおける、あの人についていけばなんとかなると、軍団が思って自信をつけたわけです。

このメンバーの自信と、リーダーに対する信頼感を与えるのが、プロセス暗示の特徴です。

こういう暗示が必要なときは、そうめったにはありません。必要なのはまさにいまのような時期です。

状況は非常に苦しい。みんながどうしたらいいかわからず、リーダーの顔色をうかがうようになる。このときこそ、プロセス暗示を発動しなければいけない。しかも、第一ステップは必ず成功させなければいけない。そうでないと、プロセスに対する信頼性やリーダーの信頼性は跡形もなく消え去ります。

残念ながら、麻生さんはそれに失敗してしまった。それが今日、新聞社が発表した支持率ということです。

経済の麻生を前面に打ち出したものの、政策がなかなか出てこない。ちっとも進まない。

そもそも、最初の段階で失敗してしまった。それは例の2兆円のばらまきです。内容に批判がある上に、その実施策でももたもたしてしまった。そのあとにも、道路税などなど迷走状態。

総理大臣は、明確なプロセス暗示を発表することもしない。しかも、今では、どうやらゴールすら発表できないリーダーではないのかとみんなが疑心暗鬼になっている。

これ以上ない悪いパターンです。“マイナスの暗示プロセス”ですか。

もう総選挙をやるしかないと思いますけれどもね。しかし、それをやれる人かどうか。このまま来年の秋まで居座るつもりなのでしょうか。


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