佐藤直曉の「リーダーの人間行動学」 blog

リーダー育成のための人間行動と人間心理の解説、組織行動に関するトピック

リーダーの暗示学605――ビジョンの価値

2006-09-27 09:43:50 | 暗示型戦略
 安倍政権が船出しました。日本丸をどこへ連れて行くのか。ビジョンを示していただきたいものです。今日は、このビジョンについての考え方を、拙著『暗示型戦略』をベースに展開してみます。
 
 「ビジョンの意義」
 言うまでもなく、ビジョンは人々を一つの方向にまとめるのに大きな役割をもっています。
 
 美しいビジョンを示されると、人はそれにあこがれ、それを手に入れたくなります。
 
 しかし、近年においては、リーダーはこのビジョンの使い方があまりうまくないように思います。ビジョンといっても、どこか絵空事のような空虚なものを感じさせられてしまうのです。
 
 ビジョンが、理想にとどまっている間は、ビジョンその役割を果たしたことになりません。重要なのは、むしろ、ビジョンという理想と、現実との間をつなぐ橋なのだと私は思います。
 
 夢と現実をつなぐ橋です。しかも、リーダーは、この橋をかけただけではまだ不十分で、その橋をメンバーに渡るように仕向けなければなりません。この橋が堅牢な橋だと信じさせ、自信をもって渡らせる必要があります。
 
 これをまとめたのが拙著『暗示型戦略』ですが、そこに行く前に、ビジョンについて、一言。

 組織が小さい間は、ビジョンを掲げるだけでも相当効果があります。ビジョンに魅かれた人が集まって、わいわいやっていると、新しいものが生まれる可能性が大きいのです。
 
 ところが、ある程度組織の規模が大きくなると、「ただ美しい夢」だけでは間に合わなくなります。私はこんな方程式を考えました。
 
 ビジョンの力・効果=(夢の美しさ・偉大さ)÷(人数)

 人数が多くなるほど、情熱的な人は減ります。そして、ビジョンから少し距離をおく人や、懐疑的な人が増えてきます。
 
 そこで、ただビジョンを打ち出すだけでなく、それが確実に成功をもたらすのだと確信させるために、戦略を立て、メンバーを説得しながら、戦略を実行していかなけらばなりません。これが私の「暗示型戦略」です。
 
 簡単に言えば、懐疑的な連中をこちらに引き入れるためには、まず実績を示さなければなりません。その実績は、それほど大きなものでなくてもよいのです。小さな成功でいい。その代わり100パーセントの成功でないといけません。
 
 まずは、懐疑的な相手に一目置かせることができればよい。
「へーえ、あの人、結構やれそうじゃん」と思わせれば大成功です。

 そうやって、斜に構えている人たちの受容度を少しずつあげていきます。
 
 そうしたら、もう少し大きい目標に取り掛かります。こうやっていくと、どんどん信頼感が高まっていくわけです。詳しいことは、拙著『暗示型戦略』をご一読下さい。

 暗示型戦略の詳細紹介
 

「安倍政権のビジョン?」 
 安倍さんの本『美しい日本』だったか『美しい国』だったか忘れましたが、本屋においてありました。さっと斜め読みしましたが、あれはビジョンではないですね。今までの実績と政治信条とがごちゃ混ぜになっているような気がしました。どんな国をつくるのか、具体性が希薄です。
 
 ビジョンはもっとクリアにしなければなりません。どういう国をつくるのかということですね。「誇りある国にする」だけでは、わかりません。もっとかみくだいて政策論が戦わせられるレベルにしないと、政治家のビジョンとしては失格でしょう。いずれ、そういうものが出されると期待します。
 
 小泉さんの場合は、民間の力をいかすということで、その象徴が「郵政民営化」でした。しかし、これはあまりにも中途半端でしたね。ビッグプロジェクトすぎたと思います。そして、道はまだ半ば。100パーセントの成功とはいえません。
 
 これですと、国民の間に、「民間活力がどんどん導入され、これからは抵抗勢力の打破がどんどん進むぞ」といったイメージは十分に得られなかったと思います。そのうえ、近々造反組みの人が復党しそうですから、なおさらそういうイメージは得られないでしょう。
 
 最初にどんな仕事を手がけるかが、安倍政権の行方を占う上で、とても重要になるでしょう。あまり大向こう受けを狙わずに、確実に仕事ができることを示すべきでしょう。私が安倍さんならそうしますが。


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