『きみ去りしのち』 重松清

2013年04月18日 20時13分17秒 | 重松清
春の陽気というより、初夏だね。

「幼い息子を喪った「私」は旅に出た。前妻のもとに残してきた娘とともに。かつて「私」が愛した妻もまた、命の尽きる日を迎えようとしていたのだ。恐山、奥尻、オホーツク、ハワイ、与那国島、島原…“この世の彼岸”の圧倒的な風景に向き合い、包まれて、父と娘の巡礼の旅はつづく。鎮魂と再生への祈りを込めた長編小説。」(BOOKデータベースより)


「旅をしている。」

9章にわたるこの作品ですが、ほぼ必ずこの言葉からはじまります。
文字通り主人公である関根が日本中を旅してまわる話です。

関根と妻・洋子のもとに生まれた夕紀也は生後1年と10日で心臓が止まってしまった。
あまりに早すぎる死に、自分を責めることしかできない関根と洋子。
なぜ心臓が止まってしまう前に気付くことができなかったのか。
もしも心臓が止まってしまう前に気付くことができていたら。
自問自答は終わることなく二人を苦しめていた。

関根は2回目の結婚だった。
前の妻である美恵子の間に生まれた明日香は5歳のとき離婚して以来、会うこともなかったのだが、ふとしたきっかけで10年ぶりに再会した。
そしてふとしたきっかけで、関根と明日香は一緒に旅をすることになる。
青森の恐山では風車に見立て、奥尻島では津波でなくなった人たちの悲しみを乗り越えて暮らす人たちに自分を重ねる。
旅を重ねるうちに、関根はいろいろな風景と人たちに出会うのだった。

洋子はそんな関根と居るのがつらくなってしまう。
関根と一緒に居ないときは眠れるのに、一緒には眠れない。
二人には離婚の危機が迫っていた。

そして美恵子は病魔に襲われることになる。
刻一刻と容体が悪化していく恵美子によりそう明日香。

死と、悲しみと、苦しみと、それを乗り越えた人たちの、悲しくて明るい物語です。


旅をしていくたびに、関根と明日香は壮大な景色に心を奪われたり、強く生きる人たちに心励まされたりします。
突然子を亡くしてしまった親と、親とに別れが徐々に近づく子。
すれ違っているような二人も悲しみや苦しみを乗り越えていく。

重松清の切り取った「死」はあまりに悲しく、辛いものだけど、そこを乗り越えていく人たちにこころ揺れ動かされるような作品です。

飲み会の前には読まないことをお勧めします。w

★★★★☆

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