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2018.8.3(fri) フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2018

2018-08-04 07:25:10 | コンサートレポート
2018.8.3(fri) フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2018
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
指揮:川瀬賢太郎
ヴァイオリン:神尾真由子
オルガン:大木麻理
コンサートマスター:石田泰尚





今日のプログラムは、多くの作曲家が自作自演で自分の曲を発表していた時代から、作曲と演奏の分業が主流になり始めた時代の作曲家。ロマン派、印象主義以降のフランス音楽に大きく貢献した、サン=サーンスの曲目から演奏。
サン=サーンスを好きになったきっかけは、プログレ界のヴァイオリニスト、ダリル・ウェイがサン=サーンスの交響詩を録音したものを聴いたことが始まりであった。



曲目:
サン=サーンス:歌劇「サムソンとデリラ」から バッカナール
サン=サーンス:ヴァイオリン協奏曲第3番 ロ短調 作品61
サン=サーンス:交響曲第3番 ハ長調 作品78「オルガン付き」

オーケストラ全体の演奏は、乱れたり、偏ったりすることなく、会場全体に広がる様に、よくまとまって聴こえてきた。
全ての曲目が素晴らしかったのだが、特に、素晴らしかったのは、神尾真由子さんがソリストとして演奏に参加していた、ヴァイオリン協奏曲第3番 ロ短調 作品61でした。
何でも、この曲は、サン=サーンスが45歳の1880年に、超絶技巧ヴァイオリニスト、パブロ・ザ・サラサーテ(1844〜1908)のために作曲され、彼によって初演されたそうだ。
作曲家自身が発表する曲ではなく、献呈された曲の場合は、客観的、複眼的な作曲になってくると思いますので、演奏を託した演奏家の名誉を考えたり、決して演奏できないことがないような配慮をしつつも、いい曲を書くことにも念頭に置き、作曲家としての知名度を上げることまで考えていたことだろう。

今日は、果たして、神尾真由子さんは、パブロ・ザ・サラサーテに成り切って、演奏していたのだろうか。ソリスト自身は、完璧主義、神経質そうな感じはするのだが、いざ演奏が始まると、激しく薙ぎ倒すような弓さばき。聴衆はツボを刺激されたような感覚。意識して情感を乗せて弾く感じではなく、緊張感たっぷりの演奏に、後から情熱が炸裂。ヒステリックに弓を返す瞬間を、何度も目撃することが出来たことからも、やはり超絶技巧ヴァイオリニストの魂が宿っていたかのようであった。しかしながら、オーケストラのまとまった演奏に調和して、洗練された演奏のようにも聴こえてきたから、不思議だ。

ラストの曲目、交響曲第3番 ハ長調 作品78「オルガン付き」では、衣装にもこだわった、オルガニストの大木麻理による、全身全霊を注いだ演奏(オルガンの音色)に、耳だけではなく、身体で迫力を感じ取れた聴衆も多かったのではなかろうか。