目覚まし時計が鳴ったのは、午前4時半だった。
今日は金環日食だ。娘と私のお弁当を作り、観測をしてから出勤する。もたもたしてはいられない。気合いを入れて、布団から出た。
5時半に娘のミキが起きる。中間テストの最中なので、昨夜は遅くまで勉強していたようだが、日食は待っていてくれない。フラフラしながらも必死で起きる。
「お母さん、何時に出発だっけ」
「6時40分だよ」
「わかった」
仕度をしていたら、友人である鹿島田の純さんからメールが来た。
「川崎は霧雨が降ってきました。最悪!」
思わずヒエッと青ざめる。その後、本降りになったというから恐ろしい。
朝食を終えたら、日食グラスを持って出発だ。電車に乗って、娘の学校の最寄駅に行く。到着したのは、7時20分だった。
「公園はどこだろう」
私は地図を見ながら公園を探す。川崎と違って、池袋付近は晴れているが、綿のような雲が邪魔だ。見られるのかと心配になった。
「お母さん、公園よりもあっちのほうがいいんじゃないの?」
娘が指差すほうを見ると、立体交差の道路がある。山手通りだ。線路をまたぐ陸橋には広い歩道があり、観測中の歩行者が30人ほど群がっていた。
「あっ、いいじゃん! 行こう行こう」
観測は、一人でしてもつまらない。たとえ知らない人であっても、大勢集まれば連帯感も生まれ、気分が高揚する。
「このへんでいいか」
適当な場所に荷物を置き、日食グラスを取り出す。時計を見ると7時26分、まだ大丈夫だ。
まぶしくて、とても正視できない太陽だが、グラスを通すと輪郭がはっきりわかる。このときは、まだ金環になっていない。
(画像は日食グラスからのイメージです)
新聞やテレビでは、大きく映る太陽も、グラスを通してでは、碁石程度の大きさとなる。しかし、生で見ていることが大事なのだ。太陽は、白ではなく黄色かった。
「結構、雲があるのに、ちゃんと見えるんだね! すごい!!」
娘も興奮気味である。
そして、まさに7時31分、月が中央に移動する。
(画像は日食グラスからのイメージです)
「来た来た来たーッ!」
すごい、とてつもなく神秘的だ……!!
この瞬間のために、4時半起きしたのである。おそらくは、生涯に一度となる光景を目にし、信じがたい想いでいっぱいになった。愛娘と一緒に観測できた幸運は、神様からのプレゼントかもしれない。
だが、恐れていたことが起きる。2分もしないうちに、雲が金環を隠してしまったのだ。
視界が真っ暗になり、グラスを外す。
「おねえちゃん、何も見えないでしょ」
ミキの隣にいた、年配の女性が話しかけてきた。
「はい、見えません」
「雲がなけりゃねぇ」
彼女のグラスは、私たちのものと同じだった。さらに話題が広がる。
「日食グラスが同じですね」
「これ、東武デパートで買ったのよ~♪」
女性の反対隣に立っていたサラリーマンも、仲間に入ってきた。
「僕は、曇ると聞いていたので、グラスを買わなかったんですよ。でも、晴れましたね」
「あ、さっきよりも明るくなってきたわ。見えるかな」
いっせいにグラスをかける。しかし、すでに7時39分。金環のピークは過ぎていたので、左側が欠けていた。
(画像は日食グラスからのイメージです)
「お兄さん、ちょっと見てみる?」
年配女性が、サラリーマンにグラスを貸していた。
「いいんですか? ありがとうございます」
観測を通して、知らない人とのやり取りもまた楽しい。しかし、出勤時刻が迫っていたので、日食見物は終わりにした。
携帯を開くと、また鹿島田の純さんからのメールが来ている。
「金環日食きた~! 雲の間から今ちょうど見えています!」
ほほう。雨に降られた川崎市も、7時頃には日が照り、無事観測できたようだ。よかった、よかった。
心残りだったのは、夫のことだ。一人淋しく、テレビで見ていたらしい。まったく興味がないようなので、日食グラスすら買ってあげなかったのだが、こんなに白熱するものなら、無理やりにでも誘えばよかった。大勢で見てこそ、楽しいイベントなのだから。
早起きして疲れた……。今日は早く寝よう。
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
今日は金環日食だ。娘と私のお弁当を作り、観測をしてから出勤する。もたもたしてはいられない。気合いを入れて、布団から出た。
5時半に娘のミキが起きる。中間テストの最中なので、昨夜は遅くまで勉強していたようだが、日食は待っていてくれない。フラフラしながらも必死で起きる。
「お母さん、何時に出発だっけ」
「6時40分だよ」
「わかった」
仕度をしていたら、友人である鹿島田の純さんからメールが来た。
「川崎は霧雨が降ってきました。最悪!」
思わずヒエッと青ざめる。その後、本降りになったというから恐ろしい。
朝食を終えたら、日食グラスを持って出発だ。電車に乗って、娘の学校の最寄駅に行く。到着したのは、7時20分だった。
「公園はどこだろう」
私は地図を見ながら公園を探す。川崎と違って、池袋付近は晴れているが、綿のような雲が邪魔だ。見られるのかと心配になった。
「お母さん、公園よりもあっちのほうがいいんじゃないの?」
娘が指差すほうを見ると、立体交差の道路がある。山手通りだ。線路をまたぐ陸橋には広い歩道があり、観測中の歩行者が30人ほど群がっていた。
「あっ、いいじゃん! 行こう行こう」
観測は、一人でしてもつまらない。たとえ知らない人であっても、大勢集まれば連帯感も生まれ、気分が高揚する。
「このへんでいいか」
適当な場所に荷物を置き、日食グラスを取り出す。時計を見ると7時26分、まだ大丈夫だ。
まぶしくて、とても正視できない太陽だが、グラスを通すと輪郭がはっきりわかる。このときは、まだ金環になっていない。
(画像は日食グラスからのイメージです)
新聞やテレビでは、大きく映る太陽も、グラスを通してでは、碁石程度の大きさとなる。しかし、生で見ていることが大事なのだ。太陽は、白ではなく黄色かった。
「結構、雲があるのに、ちゃんと見えるんだね! すごい!!」
娘も興奮気味である。
そして、まさに7時31分、月が中央に移動する。
(画像は日食グラスからのイメージです)
「来た来た来たーッ!」
すごい、とてつもなく神秘的だ……!!
この瞬間のために、4時半起きしたのである。おそらくは、生涯に一度となる光景を目にし、信じがたい想いでいっぱいになった。愛娘と一緒に観測できた幸運は、神様からのプレゼントかもしれない。
だが、恐れていたことが起きる。2分もしないうちに、雲が金環を隠してしまったのだ。
視界が真っ暗になり、グラスを外す。
「おねえちゃん、何も見えないでしょ」
ミキの隣にいた、年配の女性が話しかけてきた。
「はい、見えません」
「雲がなけりゃねぇ」
彼女のグラスは、私たちのものと同じだった。さらに話題が広がる。
「日食グラスが同じですね」
「これ、東武デパートで買ったのよ~♪」
女性の反対隣に立っていたサラリーマンも、仲間に入ってきた。
「僕は、曇ると聞いていたので、グラスを買わなかったんですよ。でも、晴れましたね」
「あ、さっきよりも明るくなってきたわ。見えるかな」
いっせいにグラスをかける。しかし、すでに7時39分。金環のピークは過ぎていたので、左側が欠けていた。
(画像は日食グラスからのイメージです)
「お兄さん、ちょっと見てみる?」
年配女性が、サラリーマンにグラスを貸していた。
「いいんですか? ありがとうございます」
観測を通して、知らない人とのやり取りもまた楽しい。しかし、出勤時刻が迫っていたので、日食見物は終わりにした。
携帯を開くと、また鹿島田の純さんからのメールが来ている。
「金環日食きた~! 雲の間から今ちょうど見えています!」
ほほう。雨に降られた川崎市も、7時頃には日が照り、無事観測できたようだ。よかった、よかった。
心残りだったのは、夫のことだ。一人淋しく、テレビで見ていたらしい。まったく興味がないようなので、日食グラスすら買ってあげなかったのだが、こんなに白熱するものなら、無理やりにでも誘えばよかった。大勢で見てこそ、楽しいイベントなのだから。
早起きして疲れた……。今日は早く寝よう。
クリックしてくださるとウレシイです♪
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
何はともあれ、次は無いのだから(2030年に北海道では見られるらしいけど)、見られて良かったね。
数ヶ月前までは金環日食なんて興味もなかったけど、これ程全国的に盛り上がる一大イベントだとは思わなかったね。
まあ、残念なお天気だったのね。
2030年だと、18年後か(笑)
Yanoさんも還暦を迎えているかしら。
それより、今年のケアンズの皆既日食が見たい…。
貯金をはたいて出かけてしまおうか。
ダメだ、仕事がある…。
金環日食は、経済効果も高いから、仕掛け人がいるんじゃないかな。
太陽の真ん中にないと、意味がないような気がしていました
関西は和歌山県潮岬まで行かないと望めません
朝のウォーキング中、まだまだ始まらないのに
登ったばかりの太陽をチラ見したりしました
帰宅して入浴、朝食を作っていただきそれを片付け…
ふと窓の外が少しずつ暗くなります
黒いセルロイドの下敷きで見れば、おお♪
わずかに太陽がかじられています
きっと犯人はうちのハムスターでしょう
同じ目的で集まっている人ばかりだからなんか賑やかでしたね。
僕は太陽グラスにスマホのカメラ部分に装置する太陽撮影プリズムを準備して臨みましたが、ほとんど曇り空でした。
グラスもプリズムも無くても大丈夫な空…。
みんなちょっと残念そうでしたし、僕もおんなじ気持ちでしたわ。
まぁ、小学生の彼らは18年後、それこそ北海道も行けるでしょうが、僕は視力的に無理そう…。
そういえば前回の皆既日食の時は出張で北海道に居たけど、やっぱ曇り空だったなぁ。
ま、そんなもんでしょ。
私は、ダメでした。
雨。
もっともグッズも用意していなかったので、そんなにショックを受けているわけではありませんが(^^;)
でも、日本中をこれだけ熱狂させたのだから、すごいのもです。
昨日は日食、今日はスカイツリー一色ですね。テレビも。
しかし、神様が普段の行いが良い私にご褒美をくれました。(笑)
冗談はともかく、なんても神秘的な光景でしたね!職場の人たちは金環日食が始まる前に諦めて社内に戻ってしまい、私が終わってから見えたよ!って言ったら
すげ~ショックって嘆いてました。目の前の交番ではマイクで
上を見ないで前を見て運転してください!って叫んでました。怖いですね~!次回は6月6日(オーメンの日)の太陽面金星通過ですね!グラスを無くさないように!
食欲旺盛なハムちゃんですね(笑)
日食グラスで見た太陽は、ホットケーキのようでした。
メープルシロップをたっぷりかけて、さあ召し上がれ♪という感じかも。
グラスなしだと、とても正視できません。
厚い雲がかかり、グラスで見えなくなったときがあります。
ちょうどいいタイミングで雲がグラスの役目を果たし、肉眼で金環がくっきり見えましたよ。
私の勤務先でも、理科の先生が観測をしたようです。
同じことを言っていました。
あらま~、それは残念でしたね。
太陽撮影プリズムなんてものがあるんですか。
装備はバッチリだったのに、雲が嫌がらせをしたとは。
風女、風男がいればよかったのに。
地域によって、当たりハズレがあったようです。
チビっ子たちは、ぜひ北海道にチャレンジしてほしいもので…。
私たちはテレビでいいか(笑)
ご自宅で観測できたのですね。
羨ましいです。
近隣の方と喜びを共にでき、貴重な経験だったと思います。
どよめきが、盛り上がりを象徴していますね。
しかし。
誤操作で削除してしまった画像はお気の毒です。
たまに、そういうことってありますね。
私もカメラを持っていけばよかったと思いました。
厚い雲に覆われたとき、雲の上から金環が見えた瞬間があったんです。
あれを撮りたかった…。
記憶の映像で我慢します(笑)