インターンシップとは、ご存じの通り「就業体験」のことで、学生が企業などで仕事を体験しながら研修することを指す。
私の勤務校でも長いこと実施されており、今年度も予定されている。
しかし、おっちょこちょいの生徒あゆみは、なかなかこの言葉をおぼえられない。
「先生、アタシ、本屋さんでインターシップするんだ~」
「インターシップ? インターンシップでしょ?」
すかさず、私が突っ込むと、あゆみは「しまった」という顔で苦笑いをした。
彼女が書いた学級日誌では、クラスメイトの「山本」が「本山」に、「東京都」が「京東都」となっている。テストでもイージーミスを連発するので、一度頭のフタを開けて、思考回路を点検したくなる。
私はさらに付け加えた。
「そのうち、インターンシッピなんて言うんじゃないの!?」
「いや、それはないね」
あゆみは口を尖らせて否定した。
インターンシップが広く行われるようになったのは、1990年代後半からである。
だが、私たち教員は、それ以前から「教育実習」として、就業体験を行っている。母校で実習した2週間は、同じクラスだった友達が一緒で、顔見知りの先生も多く、最初は同窓会ムードだった。
しかし、仕事は甘くない。早速、教職の洗礼を浴びた。
「このスリッパ、雑巾で拭いてきれいにしておいて」
指導教諭が、来客用に貸し出しをする何百足ものスリッパを持ってきた。中には、埃をかぶって白くなったものや、黒い汚れが付着したものもある。おびただしい数のスリッパは、拭いても拭いてもなくならない。実習生3人がかりで、1時間はかかっただろうか。 中腰での作業がきつかった。
高校時代の別の友達からは、「砂希が授業をしているところを見たい」と言われた。だが、スリッパと格闘しているこの姿は、とても見せられないと悲しくなった。
終わったあと、指導教諭からねぎらいの言葉があった。
「ありがとう、大変だったでしょ。教員は授業を教えるだけじゃないのよ。こういう汚い仕事もあるって、知っておいたほうがいいよ」
この体験の重みは、実際に教員になってからわかった。生徒が書いた落書きをアセトンで消し、トイレに散乱しているタバコの吸殻を掃除したり、廊下にこぼれたジュースをふき取って、床にへばりついたガムをはがす……。こんなことは日常茶飯事だ。
教室に消火器を撒かれたときは、部屋中が雪化粧をしたように粉で真っ白になり、さすがに驚いた。教員10名ほどで片付け始めたものの、粉をふき取るのは根気のいる作業で、非常に苦労したおぼえがある。
ついでに、授業料や積立金を払わない家庭に、電話で督促するのも給料のうちとなっている。
先日のニュースでは、1年間の試用期間後に正式採用とならなかった新任教員が、過去最多を記録したと報道されていた。せっかく倍率の高い採用試験に合格したのに、辞めてしまうとは残念なことだ。
私だって、長い教員生活のうち、一度や二度は仕事がイヤで辞めたくなったことがある。だが、そのたびに、実習中に聞かされた言葉が浮かんできて思いとどまった。
「仕事は、楽しいとか楽しくないの問題じゃない。どこまで我慢できるかだ」
「社会では、理屈より先に決まりがある」
学校行事としてのインターンシップは、長引く不況で逆風にさらされている。
「今年は受け入れる余裕がないため、申し訳ないのですが辞退させていただきます」とお断りされるケースが目立つからだ。
インターンシップによって離職率が低下し、定着率が上昇するといわれている。
次世代を担う人材を育成するためにも、景気の回復を願うばかりである。
楽しんでいただけましたか? クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
私の勤務校でも長いこと実施されており、今年度も予定されている。
しかし、おっちょこちょいの生徒あゆみは、なかなかこの言葉をおぼえられない。
「先生、アタシ、本屋さんでインターシップするんだ~」
「インターシップ? インターンシップでしょ?」
すかさず、私が突っ込むと、あゆみは「しまった」という顔で苦笑いをした。
彼女が書いた学級日誌では、クラスメイトの「山本」が「本山」に、「東京都」が「京東都」となっている。テストでもイージーミスを連発するので、一度頭のフタを開けて、思考回路を点検したくなる。
私はさらに付け加えた。
「そのうち、インターンシッピなんて言うんじゃないの!?」
「いや、それはないね」
あゆみは口を尖らせて否定した。
インターンシップが広く行われるようになったのは、1990年代後半からである。
だが、私たち教員は、それ以前から「教育実習」として、就業体験を行っている。母校で実習した2週間は、同じクラスだった友達が一緒で、顔見知りの先生も多く、最初は同窓会ムードだった。
しかし、仕事は甘くない。早速、教職の洗礼を浴びた。
「このスリッパ、雑巾で拭いてきれいにしておいて」
指導教諭が、来客用に貸し出しをする何百足ものスリッパを持ってきた。中には、埃をかぶって白くなったものや、黒い汚れが付着したものもある。おびただしい数のスリッパは、拭いても拭いてもなくならない。実習生3人がかりで、1時間はかかっただろうか。 中腰での作業がきつかった。
高校時代の別の友達からは、「砂希が授業をしているところを見たい」と言われた。だが、スリッパと格闘しているこの姿は、とても見せられないと悲しくなった。
終わったあと、指導教諭からねぎらいの言葉があった。
「ありがとう、大変だったでしょ。教員は授業を教えるだけじゃないのよ。こういう汚い仕事もあるって、知っておいたほうがいいよ」
この体験の重みは、実際に教員になってからわかった。生徒が書いた落書きをアセトンで消し、トイレに散乱しているタバコの吸殻を掃除したり、廊下にこぼれたジュースをふき取って、床にへばりついたガムをはがす……。こんなことは日常茶飯事だ。
教室に消火器を撒かれたときは、部屋中が雪化粧をしたように粉で真っ白になり、さすがに驚いた。教員10名ほどで片付け始めたものの、粉をふき取るのは根気のいる作業で、非常に苦労したおぼえがある。
ついでに、授業料や積立金を払わない家庭に、電話で督促するのも給料のうちとなっている。
先日のニュースでは、1年間の試用期間後に正式採用とならなかった新任教員が、過去最多を記録したと報道されていた。せっかく倍率の高い採用試験に合格したのに、辞めてしまうとは残念なことだ。
私だって、長い教員生活のうち、一度や二度は仕事がイヤで辞めたくなったことがある。だが、そのたびに、実習中に聞かされた言葉が浮かんできて思いとどまった。
「仕事は、楽しいとか楽しくないの問題じゃない。どこまで我慢できるかだ」
「社会では、理屈より先に決まりがある」
学校行事としてのインターンシップは、長引く不況で逆風にさらされている。
「今年は受け入れる余裕がないため、申し訳ないのですが辞退させていただきます」とお断りされるケースが目立つからだ。
インターンシップによって離職率が低下し、定着率が上昇するといわれている。
次世代を担う人材を育成するためにも、景気の回復を願うばかりである。
楽しんでいただけましたか? クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
まあ、今のメインの写真も6時間、15キロの機材ぶら下げて歩き続けるとか、今は今でハードではありますが。。。
よっぽど慌てたんでしょうね。
しかし、指導教諭は流石ですね!
教える事だけじゃないって、体験からでしょうけど、普通はそこまで頭が回らないんじゃないのかな?良い先生で良かったですね。
しかし、これから先生になる人はかなり大変みたいですね。教育実習も一年間になるみたいな噂もちらほら?
それで確実に採用される訳じゃないんでしょ?
まぁ、かなり精神的に強くないと出来ない仕事なんでしょうね、砂希さんみたいに!
似たようなの学生時代にやった
NTTの仕事を手伝わされた
会社の雰囲気を知ることができたが
仕事中にテレビ見てる
コーヒー飲み放題
凄い楽だった
後で民間企業に就職したら
凄い大変だった
NTTて当時は
コネ就職だったけど
甘やかされてたね
ブラジル人と話したいが為に下手の横好きで、ポルトガル語の挨拶とか、簡単な単語を覚えた事があったんだけど、それは使わなくても不思議と忘れないんだよね。
高校で二週間の停学になった時、夏休みも重なった為、暑い中登校して校内の落書き消しと掃除をやらされた事を思い出したよ。大変なんだよねぇ。
久しぶりに教育実習や教員時代を思い出しました。
苦労したよな~~、あの頃。
未来ある若者には、自分を見つめて頑張ってほしいですね。
私は今、ぬるま湯につかっちゃってるから・・・
・・・申し訳ない感じです。
先生、頑張れ!
ところでうちの子(中学生)も最近、就業体験ならぬホスピタリティー研修とやらでディズニーランドに。昼過ぎまでの講習より、そっからの自由時間を満喫したよう。
農業体験の方がいいんとちゃう!
黙々と作業したのを思い出しました(笑)
働いてお金をいただくって、タイヘンなことですね(^^;
ある程度は自分の望む仕事に就けるみたいですがそうでない場合も多々あるそうです。社会に出る前に仕事の厳しさや仕組みなどを経験させるみたいですが、効果があるのかないのか疑問です。少しでもバイト代ぐらい貰えたら張り切って仕事をするんじゃないかなぁ~って(笑)
ただ働きじゃぁね^ロ^;
忙フォトにしなくていいんですか(笑)
重フォトとか。
趣味を仕事にすることはよくない、なんて聞きますが、納得しましたよ。
体力の続く限り、全力投球ですね!!
だからこそ、好きじゃないとやってられないのかも?
教員だけに限らず、仕事のストレスで心を病む人は多いですね。
自己否定感が強いというか、自分を責める人が目立つような気が…。
私も悩むことはありますが、自分で自分の味方をすることが大事なのではないでしょうか。
職場でも、やさしく声をかけてくれる人がいるといいですね。
そういう人になりたいな♪