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空想的社会主義 (空想より科学へ―社会主義の発展(フリードリッヒ・エンゲルス))

2011-11-18 23:00:43 | 本と雑誌

Engels1862  先に読んだ「人間と国家」という本の中で、著者の坂本義和氏が影響を受けた本として紹介されていたので興味をもって読んでみました。社会主義関係の本はまず手にとったことはありません。もちろんエンゲルスの著作も初めてです。

 さて、本書ですが、エンゲルスが、マルクス理論を批判するデューリングへの反論として著した論文「反デューリング論」のエッセンスを労働者向けのパンフレットに取りまとめたものとのこと。エンゲルスの著作としてはとても分りやすいものらしいのですが、これが(予想どおり)なかなかの難物でした。

 私自身、社会主義思想についての基礎知識がほとんどないこともあり、到底、本書でのエンゲルスの主張が理解できたとは言い難いのですが、関心をもった部分を覚えに書き留めておきます。

 まずは、「一 空想的社会主義」の章から、エンゲルスによる空想的社会主義の議論状況の評価が垣間見られる記述です。

(p48より引用) これら空想家の考え方は19世紀の社会主義思想を久しいあいだ支配し、部分的には今もなお支配している。・・・彼ら全てにとって、社会主義とは絶対的真理、理性と正義の表現であって、それを発見しさえすれば、社会主義はそれ自身の力によって世界を征服するものである、そしてまた、絶対的真理というものは、時間や空間はもとより人間の歴史的発展とも無関係なものであるから、それがいつどこで発見されるかは単なる偶然である。さればこそ、絶対的真理や理性や正義は、各派の提唱者によってそれぞれにちがっている、・・・従ってまた絶対的真理と絶対的真理とのこの争もまた互いに排斥しあう以外に、解決法はない。

 フランス革命以降の啓蒙思想の流れを引くサン=シモン、フーリエ、ロバート・オーウェン等の思想は、理念の絶対性を重視するあまり個々独立で排他的なものでした。それ故に、先人の思索に自己の思想を重ねるという歴史の堆積による進歩が見られないとの指摘です。
 この流れから、本書の次章以降において、弁証法的史観が優位性をもって登場してきます。

 さて、本書ですが、全体では150ページ程度、そのうち本編は60ページ強です。
 初版はフランス語で書かれていましたが、その後、ドイツ語・英語、さらにイタリア語・ロシア語・デンマーク語・スペイン語・オランダ語・・・、もちろん日本語と、数多くの翻訳版が出ており、訳者大内兵衛氏によると、その発行部数は社会主義関係の文献としては断然一位とのことです。
 本書には、それらの各国の版から、フランス語版・ドイツ語版・英語版の序文も採録されています。中でも、英語版の序文は、30ページ強のボリュームがあり、エンゲルスの「史的唯物論」の概論の体です。
 その説明は哲学的というよりも歴史的な内容で、せめて高校時代の世界史の知識が残っていれば、もう少し理解できたのではと思います。まあ、高校生のころは、エンゲルスを読もうとは思わなかったのですが・・・。知識レベルと興味との時期のアンマッチが残念です。


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