サラリーマンの気になったサイト

気になったサイト、ツール、読んだ本を紹介。

デジタルを哲学する

2005年12月15日 | 読んだ本
図書館でExcelとかWordのコーナーを見ていたら、ちょっと毛色の変わった本があったので読んでみた。
聞いたことのありそうな作者だなと思って、ググって見るとやっぱり「サイエンスZERO」に出ている人だった。
自分が生まれた時代とちがう、現在のパソコンや電子機器漬けの生活に漠然とした不安を感じていたので、なんか回答があればなあと思って読んでみた。

「哲学」という見たことのないタイトルがついているので、現在のデジタル社会をかなり変わった目線で見てるのかと思ったが、意外と普通だった。むしろ、ディープブルーがチェスチャンピオンに勝っても、ロボットが二足歩行してもそんなにたいしたことはないんだよ、これが加速したところで「鉄腕アトム」はできっこないんだよ、とごく常識的なことを説明していた。理系向けというより、一般の人?向けに書いているのかな。
私としてはそうゆう最新技術解説は不要なので、じゃ、その技術を哲学者としてどう捉えるのかをもっと入れて欲しかった。結構この技術に人間にどのような対応をとっていくのだろうか?といった疑問形が多く、「そこをあんたはどう考えるのか聞きたいんだよ!」と思ってしまった。
でも、この本で最大の収穫があった。人間はテクノロジーに不安を感じる存在だというところだった。
新幹線ができて何十時間もかかっていた汽車の旅が数時間になったとき、そんなのは旅じゃないという批判があったそうだ。しかし、これも徒歩で数十日が当たり前だった時代の人からは汽車での数十時間は旅ではないと言われるということだ。
確かに自分もパソコンと携帯がないと不安な自分はダメなのかなあという漠然とした不安があったけど、カラーテレビと固定電話には全く不安を感じない。そういえば、自分が子供だったころもテレビが子供に悪いとか、電話は失礼だとかそうゆうようなことってあったような気がした。
自分の感じているテクノロジーへの漠然とした不安は誰もが感じるものなんだとわかって、もの凄く気持ちが軽くなった。
SF「ISBN:415011272X:title」のように人間が今よりも良く生きたい、便利にしたいと思うからにはテクノロジーはあり続ける。しかし「万物理論」みたいに行き過ぎた技術には不快感を感じる。技術への適切な感じ方への哲学があればいいんだけどね...
ということでランキングはこちらで

デジタルを哲学する―時代のテンポに翻弄される“私”
作者: 黒崎政男
出版社/メーカー: PHP研究所
発売日: 2002/09
メディア: 新書

竜馬がゆく

2005年12月04日 | 読んだ本
恥ずかしながら、坂本竜馬という人が何をしたのかやっとわかった。さらに言うと西郷隆盛も銅像だけで何をした人なのかさっぱりだった。理系だとそんなひとも多いよね、たぶん...

そのうち読もう読もうと思っていたんだけど、やっと読み終わった。前半はかなり退屈な内容で、途中で他の本を読んだりして挫折しかけていたけど、後半は歴史の作られている場面を見ているような感じで楽しく読めた。
以前に3巻組ぐらいの新選組で血なまぐささと先行きの暗さで挫折した私でも最後まで行けたので、歴史物初心者でも最初がんばればいけるんじゃないかと思った。
歴史物では「項羽と劉邦」とか「真田幸村」のほうが楽しさはあると思うんだけど、これでとりあえず幕末についてなんとなくわかったかもという勉強的なお得感があるかも。

もっと若いうちに読んだら尊敬する人「坂本竜馬」ぐらいの気持ちになったかもしれないけど、もうこの歳になるとハイリスクな人生より、安定性を求めてしまうんだよな...
その辺が乗り切れない理由なのかな。ということでランキングはこんなところで。

竜馬がゆく〈1-8〉
作者: 司馬遼太郎
出版社/メーカー: 文藝春秋
発売日: 1998/09
メディア: 文庫

仮想空間計画

2005年11月23日 | 読んだ本
直前にタイミングよく「サイボーグ技術が人類を変える」で現実世界の医学で聴覚を外部から入力したりしているという番組を見ていたので、この話が遠い先のSFではなく現在の科学の思考実験のように感じられた。
タイトルのとおりに仮想空間に入り込んでいる話なので、イーガンの作品やマトリックス、ニューロマンサーなんかとアイディア的には同じなんだけど、どうやって仮想世界に入るかの原理が細かく段階的に書かれていて、なんかありえるかもってあたりがこの作品は違っているかな。また、自分が仮想世界に入っているのか本人がわかっていないところとかは子供の頃から好きだった「フェッセンデンの宇宙」のように感じられて、現在の世界も神様のシミュレーションだったらというお約束の感覚がよみがえって来た。
今回初めてJ・P.ホーガンを読んだ。巨人系の話?なんだそりゃとか全然読もうという気にならずにいた作家だったけど、気に入ったので今後J・Pホーガン読んでいこう。
途中話が細かくて面倒なところもあったが、テーマとしてSF好きにぴったりだったし、最近見たテレビや子供の頃からの思い入れも込みこみで、ポイント高かった。ということでランキングはこんな感じで。

仮想空間計画
作者: ジェイムズ・P.ホーガン, James P. Hogan, 大島豊
出版社/メーカー: 東京創元社
発売日: 1999/07
メディア: 文庫

タイム・シップ

2005年10月25日 | 読んだ本
小さい頃から古典SFを読んでいた私としてはウェルズのタイムマシンか基本だよなあ、と続編のこの作品を読んだんだけど、昔読んだタイムマシンを全然覚えていなかった...小学校の頃に読んだはずなんだけど、当時、あんまり面白くないなと思ったような気がするのでそのせいかな。小学生といえば、もうドラえもんでタイムパラドックスとかわかっていたので物足りなかったのかな。自分のタイムマシンものの本当の基本はドラえもんなのかもしれない。
そのせいか未来と過去が自分の行動で周りが一気に変わるバックトゥザフューチャーよりも、結局は自分が原因だった的なドラえもんのタイムマシンのほうが好きだな。

そうゆう意味ではこの作品はループしない系のタイムマシン思想なのであんまり好きじゃないかなあと思って読んでいたんだけど、途中でどんどんスケールが大きくなってきて、さすがバクスター楽しませてくれるなあーと思った。
とはいえ、さすがに最後はわけわからなくなってちょっとついていけなかった。終わりもなんか納得いかなかったし。
でもタイムマシン系の話の変わったバージョンだと思うのでタイムマシン好きなら必読でしょう。

ということで読んだ本ランキングは真ん中ぐらいで

タイム・シップ〈上・下〉
作者: スティーヴンバクスター, Stephen Baxter, 中原尚哉
出版社/メーカー: 早川書房
発売日: 1998/02
メディア: 文庫

99%の誘拐

2005年09月15日 | 読んだ本
「音響カプラ」「ラップトップパソコン」といった懐かしいパソコン用語がいっぱい入っていて自分がパソコンを始めた頃を懐かしみながら読むことができた。
最初からいきなり誘拐が始まり、次から次へと新しいトリックが出てくるところなんかは飽きずに読むことができた。
でもなにか読んでいて楽しくない
犯人がマニアックにこれでもかと機械を利用したトリックを使っているのをみると、どうしてそれを使う必要があるの?警察に犯人像を狭めるチャンスをやっているだけじゃないの?と思ってしまった。
自分が普段から技術を悪用、濫用しないことを心がけているので、安易に技術トリックを乱発している技術系の犯人が許せなかったからかな?
いつも参考にさせてもらっている「この文庫がすごい!」の2005年版第1位ということで期待が大きかったせいもあるかな?

ということでランキングはかなり低くなっちゃいました。

99%の誘拐
作者: 岡嶋二人
出版社/メーカー: 講談社
発売日: 2004/06
メディア: 文庫

第六大陸

2005年07月14日 | 読んだ本
小川一水の作品を初めて読んだけど、はっきり言って文章が下手だと思った。ちょっと前に「象られた力」を読んだばかりなんで比較してしまうからなのかもしれないけど、やっぱりイマイチだと思う。
でも、テーマとしては大好きだ。現在の科学技術や社会情勢の延長線上の世界をいかにもありそうな感じで描いているのがいい。
ここ30年で機械技術なんてもの凄い進化したのに、30年以上前に一度だけ月にいったきりでそのあと誰も行っていないというのもなんかさみしいし、どこかの国で行かないものなんだろうか。中国あたりなんか有人宇宙船上げたんだし、行ってくれたら楽しそうだよなあ。さらに言えば国産ロケットが月に行ったら楽しいのに。なんていうあたりをしっかりシミュレーションしてくれているのがいい感じ。

きつい条件の中夢をもって仕事に打ち込んでいる現場のプロジェクトXみたいな熱さがいい。
これぞ日本人による日本人のためのSFという感じ。

2004年「SFが読みたい!」ではマルドゥックスクランブルが1位、第六大陸が2位だったようなんだけど、個人的には第六大陸のほうが好きだな。
ということで、ランキングは第3位ということで
てくりさんにTB)

象られた力

2005年06月16日 | 読んだ本
SFが読みたい!2005 日本第1位というので読んでみたが、期待を裏切らない作品だった。

「デュオ」と「夜と泥の」が良かった。
日本人作家のせいか言葉とか表現がすごくきれいだ。文章を読んでいると引き込まれていく感じがする。

SFとしては結構オーソドックスなテレパシーとかテレフォーミングだとかなんで、SF魂を揺さぶられるのはないんだけど、それなしで楽しめた。

「象られた力」「呪界のほとり」に関しては呪文とかいう系なのでどっちかっていうとファンタジーじゃないのという感じがした。どうせ科学根拠なしならマルドゥック・スクランブルのようにもっと派手なほうが好みだな。でも、全体の中身的にはマルドゥック・スクランブルよりこっちが好きだ。

国産SFとしては、いいほうだったのでランキングはこんなもので

象られた力
作者: 飛浩隆
出版社/メーカー: 早川書房
発売日: 2004/09/08

しあわせの理由

2005年05月23日 | 読んだ本
イーガンの「万物理論」ついて書いた記事にSENさんからコメントをいただいたので、「しあわせの理由」のそれそれぞれの短編ってどんなんだっけということで、「しあわせの理由」を読み直した。

そしたらやっぱり、おもしろい!
いきなり読み始めの「適切な愛」で引き込まれて、もう一度全部を読むことにして、やっと最後まで読んだ。(最近電車に乗る時間が短くなったので、読書ペースが落ちている)

二回目に読んでいるので、だいたい落ちとかは思い出せるんだけど、それでも楽しめた。結局イーガンってストリーがどうのっていう読み方より、背景としてちらちらと出る現代技術をそのままに延長すればあり得るかもねっていう未来を楽しんだりするのが楽しいのかなあと思った。

今よりももっと、信仰も生死も快楽も自由に選択が可能な世界で、自分がどうゆう風に生きていきたいのか、それぞれの主人公が選択している物語が、現代風で共感する。
昔の人みたいに完全なる「神」とか「善」を信じられたらいいのにと思いつつ、絶対に一つの「神」とか「善」でみんなが納得できるわけないだろ。と覚めてしまっている自分をイーガンの登場人物に重ね合わせてしまう。

イーガンの登場人物もかなり論理思考の塊のような人物がでるけど、根が理系な自分も結構理詰めで自分の感情を観察してしまう部分があって、そうゆう部分も笑ってしまう。自分の子供をかわいいと思うとき、これは自分の感情か、遺伝子にいいように操作されているかと思ってしまう自分が悲しくなる...

私はSF好きだからイーガンが好きと言うよりも理系なんでイーガンが好きってところが、正しいのかなあと思った。
      >
SENさんへTB

だれが「本」を殺すのか

2005年04月04日 | 読んだ本
なかなか考えさせられる良い本だった。ということで今回は内容がかたいよ。

作者は本を図書館から借りたり、ブックオフから買ったり、ベストセラーしか読まなかったりするような人間は本好きとはいえないと思っているようだが、どうも全く私とは「本」というものの考え方が全く違うようだ。

著者以外の本を作り、流通させ、読者に届ける人たちにはかなり詳細に書かれていてとてもためになったんだけど、本当に肝心な本を著す人と読む人について書かれていない点が足りないなと思った。
私の場合技術系の本、資格の本なんかは買うが、娯楽としての本はブックオフで文庫を買うとか、図書館で借りるのがメインで、好きな作家の文庫だけAmazonかbk1で買ういう生活だ。(電車でしか本は読まないので、片手で読める文庫のサイズが重要。京極夏彦は腕が痛くなるのでダメ)
今回の「だれが「本」を殺すのか」もブックオフで発見して買ったし。

本を読む側はより安く、よりいろんな形態(電子ブックや文庫や)で、いつでも好きな本を手に入れたいと思っているのはわかりきったことなので、書く側の人が今の状況をどう思っているのか聞きたいと思った。

あと、さらに続編としてブログと本という新しいつながりについても書いて欲しいと思った。実際この数ヶ月本を選ぶのに、ブログで紹介された本を多く読んでいるけど、ブログで話題になっていたり、ブログで薦められた本を読むとかなり自分に合った本が読める可能性が高いことがわかった。

まあ、私の場合は電車と言う限定されてた空間でいかに時間を有効に使えるかということで本を読んでいるだけなので、PSPを買って十分便利だったら、PSPで映画とか好きなテレビでも見る可能性は十分あるんだけどね。(やっぱり本当の本好きじゃないって言われそう...)

コモンズとか青空文庫にもちょっと触れられているので、IT系の人も読んでおいたほうがいいと思うということで、ランキングはやや高めの現在6位ということで

だれが「本」を殺すのか〈上〉
作者: 佐野真一,
メーカー/出版社: 新潮社
発売日: 2004/05

万物理論

2005年03月10日 | 読んだ本
イーガンの新刊が出ていたので、さっそく読んだ。
さすがイーガン!!最高っ!

前半は4つのエピソードが短編的に出てきて、そのアイディアだけでも面白いのに、さらに中盤以降は表題の万物論を中心に、カルトや宗教での精神の救済や、7つのジェンダーや、無政府主義など、それぞれに興味深いテーマを編んでひとつの大きな物語にしていく感じ、やっぱり最高の現代SFでしょう。

今回は物理学系の聞いたこともないような言葉が多くて(全位相モデルのテンソル方程式なんて言葉の切れ端もわからなかった)かなりイヤになったけど、理系じゃない人はもっとわからない用語だらけでで、きっと小難しい本だなあと思うんだろうな。

この作品の中で一番心に想像力の琴線に触れたのは無政府主義国家の概念だった。十分に情報化されて責任を持ち、社会のルールを選択して秩序をもった生活をしている島。社会生物学を学び人間の社会的生物的特性を十分理解したうえで、社会を築いている市民。特許を無効にして科学を無料で利用しつつ、資本主義を続けている社会。
すごく気になる。
トラブルが起きてもパニックを起こさず粛々と行動をする市民とそれを主人公が不思議に見つめる状況は、スマートモブスを見つけた一般の人を想像してしまった。

この辺のくだりであれば、理系でなくとも十分想像力を刺激されてSFの面白さを堪能できるのじゃないかなあと思った。

当然、ランキングは現在1位に


○社会生物学にいいサイトがあったのでリンク
 http://www.let.kumamoto-u.ac.jp/cs/cu/000721sb.html
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%AD%A6

万物理論 創元SF文庫
グレッグ・イーガン (著), 山岸 真 (翻訳)