随縁記

つれづれなるままに、ものの歴史や、社会に対して思いつくことどもを記す

DIYの勧め

2005-09-16 12:49:59 | 趣味
日本もアメリカなみのホームセンターが各地に出店している。
DIY用の素材と工具を中心に、園芸用品、ペット用品、そして豊富な家庭日用品まで品揃えしている。
特に大型ホームセンターの店内を見て回るのは楽しい。
素材も、職人が使うような専門的な物まで品揃えがあり、家一軒を自分で建てることが出来るくらいに幅広い。

それぞれの素材や専門的な工具、金具、接着剤などは、その使用方法を写真や図解で、実に懇切丁寧に説明している。
入り口付近には、実に多種多様のHOW TOシリーズの簡単な説明書を無料で配布してくれている。
じっくり素材や道具を見て回ると、家の各部分の構造がどうなっているのか、補修のポイントは何処なのかも自然と理解できるようになっている。

最近の素材は、専門家向けの素材でも、半加工されたものが増え、現場での施行を容易にしたものが多くなっている。特に現場で何工程も必要な施行や、高度な施行技術が必要なものは、殆ど工場で加工されたものになり、あまり高度な技術を必要としないように工夫されている。
建築関連の職人は、昔は親方に弟子入りして、殆ど無給で働きながら、親方の技術を盗むという伝統があった。
しかし、高度経済成長時代の建築ブームで、徒弟制度は崩壊した。
職人仕事の高報酬を目当てに、にわか職人が急増した。先輩について現場で仕事を覚えて、すぐに独立しても仕事に就けた。このため、職人仕事の質が落ちて、クレームも増大した。
いわゆる手抜き工事以前の、未熟職人の未熟な現場施行による不具合が多発した。

このような時代を背景に、まず電動道具がさまざまに改良された。
電動丸鋸、電動ジグソー、電気カンナ、電動ドライバー、インパクトドライバー、果ては電動の釘打ち機、電動サンダー、オートタッカーなど、さまざまな工具が販売されている。
測定器具でも、レーザーを使用した水準器、レーザー測距器など何でもある。

素材でもプレ加工した素材が殆どで、現場ではインストール(取り付け)作業が中心となっている。塗装でもスプレーガンによる吹きつけ作業となり、半素人職人でも施工可能となった。ペイントも扱いやすい水性塗料に切り替わっている。

木造建築の現場を見ていると、基礎工事の上に框や垂木をボルトで固定し、サイズ切りされたコンパネを並べて、インパクトドライバーでビス止めする。
柱や框も、工場でプレカットされた木材を、クレーンで吊り上げ図面の番号に合わせて、切り込みや枘(ほぞ)に差し込み、金具で固定するだけで、家の骨格がほぼ二日か三日で出来上がっている。
無論、様々な形をした耐震用のジョイント金具を、ビス止めしているから、高度な木組の技術も知識必要ない。
昔の様に、現場で職人が鋸を挽いたり、カンナを掛けたり、墨打ちして金槌で音をたてる事はまずない。
すべてプレ加工された材木を、共同作業でインストールするだけである。

昔のように網代を組んで、土を練り、左官が現場で、コテ塗りするという和壁も極端に減少している。
柱に垂木を通し、外側に建築合板をインパクトドライバーで取り付け、断熱材を貼り付けて、内側からも建築合板を取り付ける。
和風壁の場合は、合板の上から土壁を薄くスプレーガンで吹き付けする。水回りのタイルの場合は、既にシート状にプレ加工されたタイルを貼り付け、部分的な入り角や出角を調整施工するだけである。
外壁は、様々な意匠に工夫された見栄えのするサイディングを貼り付けるという、まさにインストールという感覚の建築工法に様変わりしている。

木造の家を一軒建てるのに必要な、上記のようなプレ加工された素材を殆どホームセンターで販売している。柱や框の材料だけはさすがにプレカットされたものは無いが、大概のホームセンターでは、パネルソーなどで材木をカットしてくれる。
難しい枘(ホゾ)加工は省略して、工夫された様々な木組用建築金具を使うことで、木組みも可能となっている。

つまりは、やる気を持ち、時間さえあれば、なんとか一部屋のリフォーム程度ならば、充分可能である。そのために必要な、最低限の知識も、施工方法も、重要なポイントも、素材を選ぶ選定基準さえも、ホームセンターの中で無料で手に入る。
素人に近い職人集団でも家が建つ便利な世の中になったために、逆に素人のDIYで、可成りのリフォームが可能となっている。

現在、悪質なリフォーム業者が横行している。しかし、住宅の構造について無知だから、そのような悪質リフォーム業者に騙されるのである。
家の補修が必要になったり、リフォームを考える場合、とにかく何日も大型ホームセンターに通うことである。
プロ向けの資材館がある店で研究すれば、まず素材や住設機器の種類や価格が分かる。また施行方法も知ることができる。職人の日当は高くても一日2万で計算すれば、大体のリフォーム費用の検討がつく。
そして、詳細な見積もりを取ることである。○○工事一式幾らというのは、見積もりとは言わない。見積もりで、ホームセンターの素材や住設機器より高い業者とは契約しないことである。

それよりも、気力体力があるならば、友人の協力や家族全員参加で、自分でチャレンジすべきである。家族の絆は深まるし、万一不具合があっても、何度でも手直しができる。
そして、ものを作る喜びは、何物にも代え難いのである。
さらには、もっとも安心な経済的なリフォームができるのである。

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