Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

Vol133:JSiSE2004全国大会見聞記2

2004年09月15日 | セミナー学会研究会見聞録
前回に引き続き、JSiSE(教育システム情報学会)の第29回全国大会(大会案内サイトhttp://jsise2004.eng.kagawa-u.ac.jp/)での面白かった発表を報告していきたいと思います。(写真は高松名物?菊池寛像の前の筆者)

>教室収録コンテンツとスタジオ収録コンテンツの比較
(早稲田大学人間科学部:西村昭治先生他)
学会の発表論文の題名というのは、妙にひねって難しいものが多いのですが、この題名はそのまんまです。最近授業の模様をビデオで録画し、それにpptをくっつけて作成するe-Learningコンテンツが多くなっていますが、この発表は講義の「ライブ版」と「スタジオ版」どちらに軍配があがったかを学生のアンケート結果から比較したものです。結論としては、画質に関して教室収録がスタジオより若干劣るということが明確になったが、科目内容度や授業全体の面白さについては有意な差が見出せなかったということです。

>実世界での学習活動と連携するe-Learnin活動
(専修大学ネットワーク情報学部:香山瑞恵先生)
この発表もそうなのですが、今回の学会全体のトーンとして「教室の授業等、今の学習の方法が中心であってe-Learningはそれを補助するもの」という考え方があったように思えます。香山先生の発表もそうした教室授業等の「実世界」がまずあって、そこでの学習者や教員の本分(コアコンピタンス)を育成強化することにe-Learningが寄与すべきだというスタンスにたっていました。具体的にはアノトペンという特殊なデジタルペンを用いて実世界での学習活動を追尾解析する研究についての発表でした。

このアノトペンというのが大変面白く、新しモノ好きの私は香山先生の発表よりこの機械に興味がいってしまいました。詳しくはhttp://www.anoto.co.jp/まで。

>携帯ユビキタス環境における授業運営管理システム
(金沢学院大学基礎教育機構:樋川和伸先生)
携帯電話を教育の場面で有効に活用するという視点での発表です。実際に金沢学院大学の中で運用実験されている仕組みで、これも通常の授業が中心にあって、それを補完したり、付随する事務運営を効率化するという視点で開発されていました。具体的には、科目履修登録や授業の出欠管理、休講等の連絡といった効率化のためのツールや、教員から学生への質問、テスト、アンケートなど教師と生徒のコミュニケーションを強化するツールなどを実装したシステムでした。

所詮はケータイ電話なのだから、過度な期待はせず、できる範囲の事をやらせる中で、学校の本分である授業をよりよいものにしていこうという気概が感じられました。

>集合教育支援の視点からのe-Learningの機能比較とCEASの役割
(関西大学工学部:冬木正彦)
関西大学は複数の発表をされており、どの発表も学内に導入したCEAS(Web型自発学習促進クラス授業支援システム)を用いたものでした。CEASとは大学の授業とあわせて活用することを前提としたe-Learningのシステムで、現在CEASのバージョン2.0はオープンソースとして無償で公開されています。CEASについての詳細は下記をご覧下さい。
http://ceasdemo.iecs.kansai-u.ac.jp/

さて、さっそく本題。CEASは元々大学での業務モデルを前提として開発されているので、前号で東北大学が企業用に開発された某社のシステムを導入し「かゆいところに手が届かない」システムでないところが最大の特徴。また、「あれも、これもできる」を目指すのでなく、「これだけはしたい」ことを簡単にできるようにしたシステムであるとのことです。発表の中では、同様の学校向けのLMSであるBlackBoardやWebCT、ex-Campusとの機能比較も行っていました。

>国際eラーニングにおけるドロップアウトモデル
(青山学院大学 国際政治経済学研究科 松田岳士先生)
松田先生は、以前このメルマガで紹介した『ここからはじまる人材育成 - ワークプレイスラーニング・デザイン入門』の著者でもあります。今回の発表はeラーニングでの落ちこぼれ(ドロップアウト)がどういうタイミングと原因で発生するかを分析検討したものです。分析結果のひとつに、ドロップアウトはコースの開始の時点に集中しているというものがありました。(本学の提供する通信教育やeラーニングでも同様の現象が見られます)

従ってメンタは、ドロップアウトが起こる可能性の高いイベントを念頭に入れて学習指導していくのが効果的ということを述べられていました。本学のeラーニングでも、受講開始2週間でのログイン率を向上させるため、その時期にメンタリングメールの頻度を高めていますが、こうしたことは高等教育でも社会人教育でも共通なのかもしれませんね。

>高松までいかずとも
2回に渡り、教育システム情報学会の見聞記をお送りして参りましたが、いかがでしたか?学会というと敷居が高い感じを抱くかもしれませんが、eラーニングに関しては、とても得るところが多いんですよ。そうそう、今度9月23~25日に東京でも開催します。日本教育工学会という、似たようでちょっと違う学会の全国大会が、これは東京工業大学のキャンパスで開催されます。ぜひ皆さんも顔をだしてみてはいかがでしょうか?詳細は下記のURLをご参照願います。
http://www.mr.hum.titech.ac.jp/jset2004/

最新の画像もっと見る

コメントを投稿