三筋北陸・ワインダー(糸捲き機)の専門機料店

繊維産業のウラ話に迫る、メンテナンスのお気楽日記。

メンテお気楽日記 5月22日 糸切りハサミ

2018-05-22 | メンテナンスお気楽日記
幡屋さんの生地から、糸繋ぎの端糸が見つかりました。約2㎝強の飛び出しですが、結び目がダンゴ結び?
だそうです。当然?幡屋さんから糸商へクレームが入りました。

糸商は撚糸屋さんに飛んで行き、ワインダーでの仕上げ巻きにクレームを付けました。しかし、撚糸屋さんでは
ゼッタイ、うちではない。と言い張ります。女工さんは年配者ばかりで?「幡結び」しかしないと。

そうなると、糸加工のルートつぶしが始まります。撚糸屋のコーン巻きは、染色工場の前巻き(ソフト巻き)工場
に運ばれ、染色ボビンに巻き上げ、それが染色加工されれば、今度は仕上げ巻きコーン巻きとして、幡屋さんに
納品されます。他にも、経糸は分割ワインダー工場にも運ばれ、長さが揃えられます。

どっかの国のお役人と一緒で?「自分が悪かった」とは、絶対言わない。認めれば「ゴメンね」だけでは
収まらない。不安はあっても、責任は取りたくないのが本心。そもそも、自分の工場で不良糸を出荷するハズも
ないとも思っている。もう一つ言えば、チェックもままならない現状もある。

結局は、ムヤムヤになるか?糸を作った撚糸屋さんに責任がくる事が多い。不条理でもあるが誰かが悪者にならな
ければ、収まらない。製造責任は厳しいが、販売者責任は見えてこない。「信用していた」で終わりか?


そもそも、生地になってからの「不良糸」ってのもオカシイ。ヒケや織ムラなら、まだって事も。撚りムラでもない。
糸に目が届いていない以上に、各工場の機械を通って来た事自体も不思議なところ。

仮に、節取り装置は付いていなくとも、糸口やスリットゲージで大きな結び目は引っ掛かることになっている。
ゲージが甘いのも認めるが、糸が切れた時、繋ぎ直す人員が不足している方に、原因があるような気がする。

女工さんの仕事は「糸を繋ぐこと」と言っても過言ではない。切れた糸を手繰り寄せ、撚りムラのない様に
手先で器用に「幡結び」をする。仕上げは、糸切り鋏でチョンチョンと糸端を揃える。

だから、女工さんのエプロンのポケットには、自分専用の糸切り鋏が入っている。ひも付きが主流。

問題は、女工さんの技術が伝承されない事にあります。高齢退職した後は、パート募集のお姉さん?に引継ぎます。
工場主は出来るのが当たり前と思ってはいるが、大きな間違いです。教えてこそ習ってこその、技術の伝承です。

ノッターを支給すれば、って対応もありますが、これも問題があります。幡結びを知らないまま仕事を続けます。
機器が壊れたときの対応が出来ない。その結果、自分勝手な方法で対処することとなる。

多分、今回の事故も「何気ない行動」からだろう。「後、で誰かが直してくれるだろう」悪気はない。


次回は「雇用」について考えたいと思います。「人を雇ってこその工場」が厳しくなっている。
生産率の低下はもちろんのこと、見守りや担当責任のムヤムヤにより、品質さえ危ぶまれています。

もっと大事なのは、技術の伝承が途絶えるという事です。跡継ぎがいない以上に、影響は大きい。

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