佐久市 ヤナギダ 趣味の店

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別れむとする悲しみにつながれてあへばかはゆしすてもかねたる

2023-04-06 11:48:52 | 日記

 恋愛末期の心の様子を正直に、

残酷までにも観察記録のような歌。

 今は冷めてしまった間柄でも、や

はりいざ別れるとなると、悲しさが

胸をよぎる。きっぱりゼロの関係に

なる前に、少し会ってもいいかなと

気になる。それは、未練というほど

はっきりしたものではなく、単に

「別れ」というイベントによる感情

のさざ波だ。そして会ってみると、

意外とかわいいところが見えてきて、

なんだか捨てるには惜しいような

気までしてくる・・・・・。

 

 が、今起こっている感情は、すべて

「別れ」を前提に従うものだから

こそ。どうせ別れる相手と思えば、

多少の欠点は今さら気にならない。

二人の関係は、半分思い出になりつ

つあるから、感傷のベールがかかって、

楽しかったことや相手のいいところ

が、クローズアップされてくる。

あれ、ほんとうに別れてしまって

いいのかな、という迷いまで湧いて

くる。

 

しかし、じゃあ、やり直そうという

ほどのファイトは、もちろんない。

そのあたりの優柔不断な気分は、

結句の「すてもかねたり」と言い切

るのではなく、「たる」と連体形で

余情を残している。

 

 別れるとは、つながりを切ること。

その悲しみによってつながって

いるという矛盾。こういう皮肉な

ことは、恋愛にはよくある。

しかしこれは、切り捨てられる

相手にとっては、残酷な話だ。

蛇の生殺しである。別れぎわの

相手の優しさを勘違いして、苦

しんだひともいるはずだ。あき

らめようと決意した心には、中

途半端な優しさは、かえって毒

になる。

 

たとえカップルになったとしても、

決して安心できないことや、男

の人ってこんなこと考えているん

だ、ということなど、どちらかと

いうと辛い教訓だ。冷めた目で

心を観察していたということなのだ。

「一つの吾君をえたりとこをどりす

二のわれさめて沈みはてたる」「おご

そかに隔つるもののあるをおぼゆ

愛すといへど恋ひすといへど」

 

※ホームページ

https://www.yanagida-sakushi.com/

 

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