おんぼらと山陰流 ~わしやちのこだわり~

山陰でおんぼらと(ゆったりと穏やかに)、志した活動に励む人を紹介し応援する「おんぼらと山陰流 わしやちのこだわり」

一途な想いを秘めて 自動車模型職人 渡部洋士さん

2020-09-11 11:00:37 | 日記
まるで本物の車のように今にも動きだしそうなほど精巧な模型を仕上げるのは、自動車模型職人の渡部洋士さん。

必要と思った部品は樹脂や金属で新たに作ったり、業者に依頼して金属で鋳造し直してでも仕上げる仕事ぶり。
そのこだわりは全国の愛好者から注目されており、なんと注文の予約が3年先まで埋まっているそうです。




「プロモデルフィニッシャー」という肩書で活動する渡部さんに、自動車模型への情熱とこれからの夢について語ってもらいました。

▼Studio_Rosso作品ギャラリー


渡部さんが手掛けたマツダキャロル


(渡部洋士さん)
父の影響で幼少期から自動車雑誌などに触れる機会が多く、車にのめりこみました。


家族で経営するカフェに併設された工房「Studio_Rosso」

所有する実車のメンテナンスを自分で行うことも多いので、エンジンなどの仕組みも分かっています。
だから細かい部分まで再現したくなるんです。



制作の際に参考にする車雑誌などの資料。父が生前に集めていたものが多い

工房に資料として置いてある車雑誌の多くは、父が生前に購読していたものです。
この年代の車雑誌は、カメラの性能が今ほど高くないため、走っている様子ではなく、静止画が多い。それがまた資料として役立つのです。

細部を研究し、模型で再現する。私には欠かせない貴重な「相棒」です。


自動車模型制作の世界に身を投じたのも、サラリーマンだったころ、 偶然目を通した模型雑誌がきっかけでした。
「自分のしたい仕事はこれだ」と直感しました。「定年退職後に挑戦しよう」と考えた矢先に父が亡くなりました。
父は自宅周辺の土地に自前のサーキットのようなものを造ろうと画策するほど車好き。
ですが、60歳で退職して6年後に急逝したので「自分もすぐにやらねば絶対に後悔する」と思ったのです。


模型の部品作りに取り組む渡部さん。細部にこだわり手作業で仕上げる

最初は東京の模型販売会社からの委託業務をメインに手掛け、技術を磨きました。次第に個人の注文が増えました。


渡部さんが専属フィニッシャーを務める模型会社の市販品
塗装の手法など、渡部さんの技術やこだわりが反映されたものも多い


自分のこだわりをすべてぶつけた作品を作りたいので、プラスチック製のパーツを製造するための専用機械を導入したりもしています。


制作途中の模型。塗装を施しパーツをはめ込んで本物さながらに仕上げる

こだわりの詰まった注文書を見る度に腕が鳴りますが、同時に「自分が心の底から愛している車、自分の技術を詰め込んだ一品を作りたい」という思いもあります。



渡部さんが制作したフェラーリ360モデナ・スパイダー

将来的には受注を少なめにし、自分の作りたいものに没頭したい、という夢も芽生えています。


愛車や思い出の車、実物は高価で買えないが、模型だけでも手元に置いておきたい憧れの車など、さまざまな思いを込めた依頼を受ける渡部さん。


手掛けた自動車模型を手にする渡部洋士さん

依頼者と相談して決める価格は1台十数万円、高い物は100万円を超えるものもあるそうです。
「それでもほしい、と注文してくださる。お客さまのこだわりを寸分の狂いもなく反映したい、期待に応えたい」。
依頼者の想いをその身に受け、渡部さんは今日も磨き上げた技術を模型に注ぎます。


渡部洋士さんのブログ「Studio_Rosso 1/43 自動車模型制作日記」


山陰中央新報のホームページでは、渡部洋士さんの記事を始め、島根・鳥取両県のさまざまな情報を配信しています。
ぜひご覧ください。

▼山陰中央新報社ホームページ
https://www.sanin-chuo.co.jp/

出雲にしかないチョコ ラ・ショコラトリ・ナナイロ 西森亜矢さん

2020-09-04 11:00:00 | 日記
島根には世界のチョコレート好きが注目する専門店があります。
その名も「ラ・ショコラトリ・ナナイロ」(出雲市斐川町坂田)。


代表でもありショコラティエの西森亜矢さんは、常識を覆す製法で出雲にしかないチョコレートを作りあげます。



「ラ・ショコラトリ・ナナイロ」西森亜矢さん

味の秘密は出雲の気候にあります。
チョコレート作りは低温・低湿度が基本で、厳密な温度管理で品質を一定に保つことが重要なのですが、手作りの工房では密閉が難しく、条件を一定にできませんでした。

そこで、「いっそ気温が変動する時期に作ろう」と発想を転換。
乾燥する5月から梅雨を経て暑くなる8月まで、同じ製法でもひと月ごとに異
なる味になりました。その差も魅力として、年間を通じて製造しています。

美味しさの秘密は出雲の気候にあるのですね。

▼La chocolaterie NANAIRO ホームページ

▼La chocolaterie NANAIRO (Instagram)


西森さんは2015年10月にネット上で手作りチョコの販売を始め、海外に向けて英語で発信。

するとすぐに注文が入るようになり、翌年の2016年には専門サイトで「世界のチョコレート10選」に選ばれ、国内からも多くの注文が寄せられるようになりました。


目をひく外観の店舗兼工房


テーマに沿った包装の商品が並ぶ店内


そんな世界中のチョコレート好きから注目される西森さんに、チョコレートへの想いを語っていただきました。


「ラ・ショコラトリ・ナナイロ」西森亜矢さん
(西森亜矢さん)
大好きなチョコレート、子どもの頃からどうやって作るのか疑問でした。
フードプロセッサーで手作りしている映像をネットで見つけ、すり鉢とすりこぎで作ってみたんです。




焙煎した豆を砕き、滑らかにすることで味や香りを引き出す

出来上がったものは、当時はおいしいと思ったんですけど、取っておいたのを最近、改めて食べてみたら、まずかったです。ざらざらしていて。



バッチNo47は、マダガスカル産カカオ豆65%のダークチョコレート。
山葡萄のジャムのようなしっかりした甘味の中にほどよい酸味と爽やかな苦味が混じる

売り始めた頃は、納得できる味にはなっていましたが、自分の中では、まだまだ突き詰められると思っています。
豆の品種や産地が変わると味が変わりますが、カカオ豆は世界で500種類もあるんです。



こだわりのカカオ豆を丁寧に選別

ビーントゥバー(※)でも「一定の味のものを作らなければ」と考えているところは多いんです。それがチョコレート界の常識だし。
でも、そうしなかったから、同じ産地で味の違うものを作ることができる。
それだけカカオは魅力的な素材なんです。

ビーントゥバー(Bean To Bar) 
カカオ豆(Bean)の仕入れから板チョコ(Bar)になるまで1カ所で製造されたチョコレート。添加物や香料も加えず、作り手の個性が際立つこだわりの製品が多い。2000年代初めにアメリカで生まれて世界に広がり、日本でも人気を集めている。


 




 
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季節の素材を使ったホワイトチョコレート(インスタグラムより)

よくカカオ豆本来の味を求められるけど、作り手によって素材以上の味を提供できる。それがビーントゥバーの面白さ。
ひたすら手作業でやって、初めて素材を越えられると思っています。



店内のカフェでは食べ比べもできる

思うようにならないところがチョコレート作りの魅力ですね。作れば作るほど、やってみたいことも増えます。

お客さまにも、研究を手伝ってもらっている気分です。


店内には凝った包装の商品が並ぶ

店内のコレクションには「交響曲」「魔法と宝石」など、想像力をかき立てる名前がつけられます。製品にはフレーバーノート(味の説明書)が添えられ、美味しさへの期待感を膨らませてくます。

「まだ使ったことのない産地の材料がたくさん。一生終わらないんじゃないかって思います」と、西森さんは語ってくれました。

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