まるで本物の車のように今にも動きだしそうなほど精巧な模型を仕上げるのは、自動車模型職人の渡部洋士さん。
必要と思った部品は樹脂や金属で新たに作ったり、業者に依頼して金属で鋳造し直してでも仕上げる仕事ぶり。
そのこだわりは全国の愛好者から注目されており、なんと注文の予約が3年先まで埋まっているそうです。
「プロモデルフィニッシャー」という肩書で活動する渡部さんに、自動車模型への情熱とこれからの夢について語ってもらいました。
▼Studio_Rosso作品ギャラリー
渡部さんが手掛けたマツダキャロル
(渡部洋士さん)
父の影響で幼少期から自動車雑誌などに触れる機会が多く、車にのめりこみました。
家族で経営するカフェに併設された工房「Studio_Rosso」
所有する実車のメンテナンスを自分で行うことも多いので、エンジンなどの仕組みも分かっています。
だから細かい部分まで再現したくなるんです。
制作の際に参考にする車雑誌などの資料。父が生前に集めていたものが多い
工房に資料として置いてある車雑誌の多くは、父が生前に購読していたものです。
この年代の車雑誌は、カメラの性能が今ほど高くないため、走っている様子ではなく、静止画が多い。それがまた資料として役立つのです。
この年代の車雑誌は、カメラの性能が今ほど高くないため、走っている様子ではなく、静止画が多い。それがまた資料として役立つのです。
細部を研究し、模型で再現する。私には欠かせない貴重な「相棒」です。
自動車模型制作の世界に身を投じたのも、サラリーマンだったころ、 偶然目を通した模型雑誌がきっかけでした。
「自分のしたい仕事はこれだ」と直感しました。「定年退職後に挑戦しよう」と考えた矢先に父が亡くなりました。
「自分のしたい仕事はこれだ」と直感しました。「定年退職後に挑戦しよう」と考えた矢先に父が亡くなりました。
父は自宅周辺の土地に自前のサーキットのようなものを造ろうと画策するほど車好き。
ですが、60歳で退職して6年後に急逝したので「自分もすぐにやらねば絶対に後悔する」と思ったのです。
ですが、60歳で退職して6年後に急逝したので「自分もすぐにやらねば絶対に後悔する」と思ったのです。
模型の部品作りに取り組む渡部さん。細部にこだわり手作業で仕上げる
最初は東京の模型販売会社からの委託業務をメインに手掛け、技術を磨きました。次第に個人の注文が増えました。
渡部さんが専属フィニッシャーを務める模型会社の市販品
塗装の手法など、渡部さんの技術やこだわりが反映されたものも多い
自分のこだわりをすべてぶつけた作品を作りたいので、プラスチック製のパーツを製造するための専用機械を導入したりもしています。
制作途中の模型。塗装を施しパーツをはめ込んで本物さながらに仕上げる
こだわりの詰まった注文書を見る度に腕が鳴りますが、同時に「自分が心の底から愛している車、自分の技術を詰め込んだ一品を作りたい」という思いもあります。
渡部さんが制作したフェラーリ360モデナ・スパイダー
将来的には受注を少なめにし、自分の作りたいものに没頭したい、という夢も芽生えています。
愛車や思い出の車、実物は高価で買えないが、模型だけでも手元に置いておきたい憧れの車など、さまざまな思いを込めた依頼を受ける渡部さん。
手掛けた自動車模型を手にする渡部洋士さん
依頼者と相談して決める価格は1台十数万円、高い物は100万円を超えるものもあるそうです。
「それでもほしい、と注文してくださる。お客さまのこだわりを寸分の狂いもなく反映したい、期待に応えたい」。
依頼者の想いをその身に受け、渡部さんは今日も磨き上げた技術を模型に注ぎます。
▼渡部洋士さんのブログ「Studio_Rosso 1/43 自動車模型制作日記」
山陰中央新報のホームページでは、渡部洋士さんの記事を始め、島根・鳥取両県のさまざまな情報を配信しています。
ぜひご覧ください。
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https://www.sanin-chuo.co.jp/
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