SANGA BLOG

信越の山々の滑走ガイド「サンガ」のブログ

スプリットかソリッドか!

2019年03月11日 | ////
そんな論争をよく耳にします。
「スプリットじゃなきゃ山行けないよ」
「ソリッドじゃないとまともに滑れねーよ」
極端な意見だと
「スプリットはスノーボードじゃない」
なんて聞いた事があります。

まあ、不毛なことです。
どっちが良い悪いってことじゃなく「どんな人が、どうしたいか」によるんじゃないかと思います。

まずスプリットのメリットから。
①登りで邪魔にならない(風で煽られたり、枝に引っ掛かったり)
②スノーシューとは比べものにならない浮力
③何より、重い板を背負わなくていい
ということで、お客さんにも「もうスノーシュー履く気になれない」と公言しているわけです。

ただデメリットとしては
①高価
②扱うのに慣れが必要。
③雪が硬くてボコボコだと乗りにくい。
といったところでしょうか。

どんな道具も良し悪しありますよね。

お客さんにも「スプリットどうですかねー」と聞かれますが
①山に行く頻度が高い
②山奥に行きたい
③スキーヤーとパーティーを組む事が多い
などが当てはまるならオススメしてます。

逆に「シーズン中に山に入るのは2-3回程度で春のザラメ雪の時ぐらい、そんなに遠くまでツーリングしないよ」
なんて人は、わざわざ高くて慣らしの必要なものを買わなくてもいいんじゃないでしょうか。

僕も春になってザラメ雪の斜面の縦溝(融解水が流れて雪面に刻まれるやつ)が大きくなってくると「あーソリッド乗りてぇ!」って思いますね。
その状況で軽量スプリットだと全く面白くなくても、キャンバーのソリッドボードだと結構楽しめます。

極端な例ですが、プロスノーボーダーほどアンチスプリットの人が多いようですけど、それもごもっともなんです。

例えば硬いボコボコ助走の先のヒットポイントを狙う場合、スプリットは辛いです。
あと、部品点数が多いのでスピンする時は重さが邪魔になるはずです。

プロスノーボーダーじゃなくとも、体力があって滑りを重視したい人はソリッド&スノーシューで楽しめばいいんじゃないでしょうか。
「ラッセルは体力でカバー!」なんて心意気、いいですね。

そんな方への温故知新の提案としては、スノーシューの代わりに「ワカン」です!

昔ながらのアルミワカン、弱点は多々あるけれど軽いです。
バックパック取り付け時の重心バランスはスノーシューよりも良好になるはずですよ。

状況によって、アイゼンと併用したり分離したりという使い分けも可能です。
キック無しのストレートワカンとアルミアイゼンの組み合わせなら、定番高級スノーシューよりも安価で軽いですしね。

山岳地帯を攻めたいハードコアなスノーボーダーこそ、このスタイルで貫いて欲しいですが、誰か採用しませんかね。

雪崩のことは難しい、けど

2019年03月04日 | ////
日本雪崩ネットワーク主催の雪崩基礎講習会「セイフティキャンプ」に関わって何年も経ちました。
https://www.nadare.jp/seminars-training/basic_safetycamp/
拝見していると、セイフティキャンプ終了後のアンケートでは「難しかった」というお言葉が多いですね。

ごもっともです。
むしろ「よく理解できましたよ!」というご感想だと、逆に講師は心配しちゃいます。

かくいう僕自身も未だに同じ思いですよ。
でも「雪崩のことはわからない」というのとは違いますかね。
「雪崩とのお付き合いが難しいことがよく分かった」という表現が適切でしょうか。

「難しい」中で、リスクを軽減するために重要かつ基本的な方法をお伝えするのがこの講習の目的なわけですが。
実は雪崩ネットのサイト内の「基本講座」というページにまとまっています。
https://www.nadare.jp/basic/decision-making/

「これ読めば受講しなくていーじゃん」という事でもなく、やはりこれだけではイマイチなんです。
例えば「間隔を空けて移動する」というのが何のためなのかは、修了すれば嫌というほど体感できると思いますよ、筋肉痛と共に・・・。

あと、このページには大事な「地形」については解説されていません。
地形のことについては講習内で口酸っぱくお伝えしているいくつかのポイントがありますが、それを活かすには良い経験者と行動を共にして経験を積む必要があります。
なので、ウチのツアー来てくださいね(←実は真面目な話し)

先ほど「難しい」と言いましたが、雪崩とのお付き合いを無難にしてゆくのは実は簡単で単純なんです。
ただ、僕ら人間が欲張ってお作法を間違えるから怒られちゃうだけなんですけどね。

最後に一つだけ。

「積雪と気象の観測と記録」そのものに捉われないでください。

例えば気温計ったり、ピットチェックしたり、ですね。
その目的がはっきりしていない限り「俺はちゃんと勉強してやってるもんね!」という自己満足だけで終わります。

修了生(セイフティキャンプ以外のものも含めて)とお話ししたり様子を見ていると、そこに頭をもっていかれて重要なことをすっかり忘れている方が多いように感じます。
「雪」「人の行動」「地形」の組み合わせのうち、「地形」と「人」の方が理解しやすく間違えにくい、ということをお忘れなく。

※もちろん「積雪と気象の観測と記録」は、よりリスキーな地形に入る人にとって重要な作業です。
とあるプロガイドが「プローブで突くだけで分かるよ」と言っていましたが、プロは適切なタイミングで雪掘ることは欠かせないと思います。
だって、積雪の中身は掘らないと見えません・・・。

自由と責任、とは言うけれど

2018年12月05日 | ////
つい先日、ボルダリングをしていて膝を捻ってしまいました。
今期の本格始動は1月中旬以降となってしまいそうです。

世間様では「危ないことするからだ」の一言で呆れられてしまうんでしょうけど。
やらない人からすればそう思われても仕方ないかもしれませんね。

まあしかし。
思い返せば、スノーボードで飛んだり跳ねたり、幾度も雪崩地形に身をさらし、断崖の山で歩き回って危険作業、落ちたら完全にアウトな岩登りも数え切れずにやってきて20年。
自力歩行不能な怪我は皆無、1ヵ月くらいの休養で治る怪我がこれで2回目というくらいなので、リスク管理はできているほうなんだと思います。


さて、自己弁護ではありませんが(笑)
ひとつ述べさせて頂きます。

例えば、僕が夏の生業としている夏山常駐パトロール隊勤務のこと。

昔から山は「早出早着、15:00には行動終了しましょう」なんて言われますね。
まあ、初心者にとりあえずそうおすすめするのは、悪いことではないと思います。

それに対し、最近は長距離を昼夜問わずに行動する登山者が増えてます。
隊員としてそんな登山者にお会いすることがありますが、僕はできる限りやらせてあげたいと思っています。
※もとより、僕ら隊員には止める権限はありません。

だって、やりたいでしょうし、僕もたまにやりますよ。

月夜の晩、誰もいない稜線を歩くのは最高です。
特に今年の夏のような酷暑では、涼しい夜のうちに動く方が効率がいいですよね。

目的にもよると思います。

僕は若い頃、長時間の行動でも平静を保つ修行の一環として行ったりしました。
山岳レースだけでなく、海外の大きな山へ向けて長時間行動に慣れておきたい人もいると思います。
限られた休みの中で「ここからあっちまで抜けたいなぁ」と思ったら、計画は長時間行動になるかもしれません。

「夜歩きはダメ!」という理由が何によるものか理解し、それに自分で対処するつもりなら全く問題無いと思います。

・日頃から鍛え、徐々に行動時間を延ばす。
・ヘッドライトの行動に慣れる。
・夜間は岩場や迷いやすい道の行動を外す計画にしておく。もしくはそのリスクへの対応力をつけておく。
・ヘッドライトの予備を用意する。
・夜間にトラブルがあってもビバークしてしのげる装備とスキルをつけておく。
・テント場の受付が終わっている時間の到着に備え、山小屋へのメモとテント場代を用意しておく。
・無論、遅い時間に到着して山小屋に寝床や食事の用意を求めない。

などなど、色々やれる事やるべき事はあると思います。

それを尽くしても遭難してしまったら、それはそれでもう責めないであげて欲しいです。
そもそも、山に入る以上リスクを皆無にすることはできないのだから。
軽減する努力さえしていれば、立派なもんだと思います。

むしろ「いやだーあの人夜に歩いてるよ、危ないわねぇ」と言う人が夜中3時に起きて「山頂で日の出を見たいから」と真っ暗な岩場を登っていくのはよく分かんないですし、何も考えていないんでしょうね。


結局のところ何が言いたいかというと、

 はたから見たら危ないことでも、誰にも迷惑をかけずに事故らないための努力をしている奴は、やらせてやろうぜ!

ということです。

何かというとレールから外れたことは責めたてられて謝罪と自粛を強制される昨今にはがっかりします。
自然の中での遊びが何でも「スポーツ」として整えられ、本質である自由さが失われてしまうのだけは避けて欲しい、と願います。


講習の利用

2018年11月09日 | ////
先日は別業界である「ツリーワーク」の講習を受けてきました。



春と秋は植木屋として働いていますが、難しい樹木伐採ができたらと思い、少しずつ勉強しています。
クライミングやレスキューのロープワークと通ずるところも多く、早く実践してみたい思いに駆られますね。

ガイドディング、クライミング&レスキュー、雪崩、ファーストエイドと様々な講習を何度も受けてきたし、ここ数年は講師の側に回ることもあります。
受講経験を生かすも殺すも自分次第ですから、そのコツをまとめてみますのでご参考くださいませ。


1、うまく質問する

質問できるということは「よく考えている」ことの裏返しなので、いいことです。
ただし、講習内容に則していない質問は脱線してしまい、時間の無駄になるだけですよね。

今回のツリーワーク講習でも講習生の1人が幾度となくそれを繰り返すので、僕は貧乏ゆすりしっぱなしでした(笑)
「このメーカーのこのパーツってどうですか?」という瑣末なことだったり、さらに上の段階の講習内容のことだったり・・・。

こういうのは受講後の空き時間に質問してもらうのが一番ですが、受講生も当然知りたくて受けにくるのだから脱線することもあるでしょう。
なので質問はどんどんしてもらって、内容次第で講師が止めて「後で個人的に対応しますね」という対処で済むことでもあります。


2、頭をまっさらにし、プライドは捨てる

勉強より先に経験を積み、自分の中でやり方が確立していると他のやり方を受け入れ難くなりがちです。
特に経験豊富な人、カリスマ的な先生から教えられてきた人はそうなりやすいと思います。

今回の僕だと、ガイドやクライミングの経験は全て隠してド素人の状態から受講しています。
とっくの昔にマスターしている基本的なロープの結びも、初めて触るくらいの気持ちと態度で臨んでいました。
別業界のスキルなので教え方もやり方も違いはありましたが、そこに新たな発見があったりして新鮮でした。

既知のことも他の人から教わると「こっちのやり方のほうがいいなぁ」と思うこともよくあるので、とりあえず今までの蓄積は置いといて、その講習の「やり方」を素直に受け入れる方がいいと思います。
その後で、自分に合うほうのやり方を選択すればいいだけのことですから。

また、講師も人間なので教えたことを素直にやってくれる方がやりやすいはずだし、教えがいもありますよね。

たまに自分が優秀であることを主張するかのごとく「それ知ってますよ」アピールが強かったり、些細なことを「これ違うんじゃないですか」と突っかかってくる講習生がいますが、受講料の無駄です。
試験じゃないので「できる人自慢」をしても全く意味は無いし、他の受講生の迷惑だし、講師としてもいい気持ちにはなりませんよね。

そして、教えられたことをサラっと成功するよりも、ボッコボコにされるくらいに失敗した方が心に刻まれて自分の糧になるはずです。
かくいう僕も、野外救急の講習であるウィルダネスファーストエイドの初回では、誰よりも実戦想定にトライしては9割方失敗していました(笑)


3、お勉強と経験

勉強だけで終わったり、経験だけに頼ってもよろしくないと思います。

例えば読図の講習を受けたとしても、いつも誰かに連れてってもらっているばかりでは「考える」ことすらしなくなり、生かす機会はゼロですよね。
せっかく習ったのだから、ある程度バックアップを取れている範囲でどんどん突っ込んでいかないと血肉にならないし、面白くもないでしょう。

かといって、イチから我流で始めて間違ったまま経験を積み重ねてギリギリ成功を続けたとしたら「このやり方で大丈夫」と思い込んでしまいますよね。
自ら切り開く精神は素晴らしいけど、他者の意見を学ばない一人よがりは、危険な方向に走りがちです。

特に経験豊富な「先輩」的な登山者から「講習なんて金の無駄。頭でっかちになるだけだよ」と聞くことはよくありますが、そういう人ほど危ないスキルを正しいと信じ込んで後輩に伝承してしまうパターンが多いようです。
良かれと思って教える気持ちは分かりますが、こういう場合は感謝と尊敬の念から先輩を妄信してしまいがちで、他の人からの修正を受け付けなくなることが多く、非常にタチが悪いです。
アウトローで叩き上げの先輩は格好よく見えるので、それに惑わされないように・・・。

でも「頭でっかち」という気持ちも分からなくはありませんから、やはりバランスの問題ですね。
良い知識を基礎にして実践を続けることだと思います。

なので、僕も講習生の皆さんには「死なない程度にガンガン遊んでいってくださいね」とお伝えしていますが、おちゃらけているようでいて本気の一言なんです。

屋号に込めた思い

2018年10月20日 | ////
ガイドサービスの屋号を「サンガ」としていますが、立ち上げ数年後には
「気取ってる感じもするし、そのまんま『稲垣力ガイド事務所』でもいいよなぁ」
なんて考えていました。
が、初めてお会いする方にも「サンガのリキくんですね」
なんて言って頂けるようになったので、そのままにしています。

屋号の由来をたまに聞かれますが、有名な「国やぶれて山河あり」から拝借しています。

~人がどうあろうと山や河は変わらない~

そんな意味らしいのですが

~自然にとって人間はとても小さな存在である~

と、個人的には解釈していて、それが僕の山への関わり方の根本となっています。

だから僕は「ピークハント」「制覇」「敗退」「リベンジ」といった言葉は使う気になれません。
はなっから人間は山に勝てないどころか、勝負にすらなっていないと思います。
「攻める」とは言うものの、その相手はつまるところは自分自身なんでしょうね。

「山において人は弱いものなので、やり過ぎない程度にお邪魔しましょう」という思いで良いお付き合いを続けていきたいですし、そういうガイディングにしていきたいと願っています。

11年目の始まり

2018年10月19日 | ////
このブログは過去記事を削除して再スタートすることにしました。

10年分の記事は今の自分にとって「おはずかしい」というのが一番の理由です。
それは僕自身の変化の表れでもあります。
「昔があるからこその今」とはいえ、自分の意に沿わないものを垂れ流しておきたくないですよね。

ここ数年の変化をざっくり挙げれば

①ちゃんとしたガイド資格を取得
②スポンサードを全て解消
③スノーボードへの熱がスキーやクライミングにも移った
④雪崩の勉強を続けてたら教える側になった(もちろん勉強は継続)

といったところです。
それぞれのことは、また書きたくなったら書くこともあるかと思います。

SNSの登場でブログの役割は減りましたが、しっかり伝えたいことはこちらに綴っていきたいと思います。