Sandy Cowgirl

植田昌宏。在阪奄美人。座右の銘は、「死ぬまで生きる。」

ニキの屈辱

2017-09-26 22:33:24 | 書評


ヒトは恒温動物だと分類されるらしい。
だが恋人たちの体温は、きっと変わるだろう。

無償の愛、献身的な愛。それは、本心から、真に愛する気持ちから産まれるかもしれない。
それが、体温が下がり、相手が喜ぶ、と思ってやるようになる。
そして、さらに体温が下がり、そうしてあげてる、になる。
最後には、冷えきって、「それなのに、なんで」になる。

容姿や才能、性格の良さ、器用さ、マメさ、それらは単純に愛する理由になるかもしれない。
それが、体温が下がり、相手に申し訳なくなるようになる。
そして、さらに体温が下がり、劣等感を感じるようになる。
最後には、冷えきって,「私を必要としていないんでしょ、愛してないんでしょ」になる。



山崎 ナオコーラ さんの ニキの屈辱 を紹介します。
あるカップルの、彼らの体温の変化を描いた作品です。
生き物として、恋愛をするという欲望が存在する一方で、
その生き物は、社会での立ち位置を気にしている。
客観的に測れるのは、収入だったりするし、もっと、ほかに、名声とかいろいろあるだろう。

それらは、恋愛感情と無関係でいられるのだろうか。

この作品は、そんな、テーマで描かれた作品のように思います。

決して、腹黒いとか、うちに秘めたる野心とか、そういうことではなく、
あくまで、自然に生きて、当たり前のように生きている2人が、
いつのまに変わっていってしまう、という話です。

もっともっと、大げさに脚色しても良かったのかもしれませんが、
わりと、ドライな感じで淡々と話はすすんでいきます。
なんだろう、こういうのは、日常にありすぎていて、あまりにも、すっと、はいりこんでしまうんでしょう。

自然すぎる、そういう描写が、いとも簡単に描かれているような気にさせるところがすごいと思います。
難しいことを簡単にやってのけた、ので、誰も気づかずに、当たり前のように読んでしまう、
そんな、透明感のある、自然な作品です。

ぜひ、読んでみてくださいね。

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