Sandy Cowgirl

植田昌宏。在阪奄美人。座右の銘は、「死ぬまで生きる。」

夜のピクニック

2017-06-18 17:26:51 | 書評


確か、その男が17歳だったころ、アイルトン・セナとカート・コバーンが死んだ。
それは、その男にとって、どうでもいいことだった。
なぜなら、そのころ、その男の世界は、ガラガラと音をたてて崩れ去ったからだ。
これが現実なのか、それを信じることができず、それでも生きていかざるを得ないことに絶望して、
目の前で起きていることがまるきり真実だと理解できなくなり、
無駄に怒り、無駄に後悔して、空回りばかりして、
忘れてしまえば前に進めるのだと、言い聞かせ、
一刻もはやく、身を削って消えてなくなりたいのに、
惰性で23年も経過してしまった。

その男は、今や40歳になり、生エビを食べて、ひどく喉がピリピリして、やっぱり、アレルギーやな、食べたらアカンねんな、と思い、
英語の勉強とドラムの練習をしていて、
今さらながら夢中になれるものって、ええな、って思い、
そういうのんが、なんかしらんけど、やっと、かっと、たどりついた、生きるっていうことなんかもしらんな、
と思いながら、酒を飲んでいる。

あのとき、17歳の時に忘れてきてしまった、何かを、思い出しながら。






恩田 陸 さんの、 夜のピクニック をご紹介します。
もー、これは、全ての人に読んでもらいたい! 傑作です!
恩田 陸 さんは、これで本屋大賞を受賞していますが、さらに、直木賞と前人未到の本屋大賞の2回目まで受賞した、レジェンドです!
これは、すごい、指原くらいすごい、いや、普通に、もっと、すごいだろう。

ネタバレしない程度に簡単に紹介すると、

高校3年生のときクラスメートになった西脇融と甲田貴子は、誰にも言えない秘密を抱えている。
交わることなく終わろうとしていた高校生活の最後のイベント、歩行祭で、
どうしても存在が大きくなってしまった融に対し、貴子は密かに、ある賭けを実行する。
友人達と過ごす不思議な夜のピクニックで、2人は何を思うのであろうか。

という作品です。


高校生活の、あるある、っていう話題を随所に織り交ぜつつ、
すごく感心したのは、
一人称、融視点、貴子視点で書いてあるものが、最後は、三人称視点に変わるところだ。
2人が同じ時間を過ごしているときは、一歩、ひいて描写しているのだ。
かっこいい!

もちろん青春ものなので、誰が誰を好きで、誰と誰がつきあってて、別れて、
なんて話も盛りだくさんで、面白い。

そして、一種の旅行物の雰囲気もあって、すごく、鮮明だ。
時間と景色が移ろうたびに、それにあわせて登場人物たちの気分が移ろうのだ。




個人的な感想として、
これは、恥ずかしながら、リアルな話なのですが、
この作品って、茨城県立水戸第一高等学校の歩く会がモデルになっていて、
私は県南のライバル校だった、茨城県立土浦第一高等学校の出身で、
同じようなイベントがあった(しかも修学旅行がない、というのも同じ)ので、
もっそい、こっぱずかしくて、こそばゆくて、でも、わかるわかる、というので楽しめました。
いや、でも、あれやで、水戸一高の人からすれば一緒にすな、って思うやろけど、
そこは素直に認めるわ、向こうの方が、全然上や。
ただ、学区違うから、こっちは、うちらとして、いい方と思ってんねんけど、井の中の蛙いうやつやな。


気持ち悪さとか、これっぽっちもなくて、
読んだ人、全員に、すがすがしさを連れて来てくれる、傑作です。
映画にもなっています。

ぜひ、読んでみてくださいね!
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