さんぐう直人 公式ブログ  ”未来は、今、創られる”

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この会社をどう救うか! -その1

2014年06月18日 18時10分15秒 | 経営改善

こんな会社があります。皆さんは、この会社で働きたいですか? 私はNoです。

それは1本の電話から始まった。

「はじめまして、私はA工業で社長をやっている佐藤と申します。自動車向けの電子部品を製造・販売しています。経営改善の指導を先生にお願いしたく電話をしました。B商工会議所に相談したところ先生を紹介されました。当社は創立して28年。これまでも危機はありましたがなんとか乗り越えてきましたが、さすがに今回のリーマン危機は内部の力だけでは・・・・・・・(中略)・・・・・・・・・・・ ついてはご指導いただけますでしょうか」。

 電話越しの社長の口調から雰囲気の良さそうな会社と期待ができた。

そして訪問の日。

 玄関に入ると、そこは無機質な空間だった。整理整頓はされている、清掃もいきとどいている、でもここがお客様を出迎える会社の顔なのか、これがこの会社の雰囲気なのか。

 インターホンで手続きをすると総務の女性(鈴木さん)がでてきた。
「本日はお忙しいところ訪問いただきありがとうございます。当社のような会社に来ていただけるなんて・・・」と何か言いかけて、社長室に案内された。社長と常務が待っているらしい。玄関から社長室までの間も掲示物がなく、すれ違う人も誰もいない、冷たいトンネルの中を歩いているかの様だった。


 社長室では佐藤社長が待っていた。慈愛に満ちて誰もがその懐に飛び込みたく表情の方だ。佐藤社長から会社の紹介、今回の経緯、現在の問題点、将来の課題などの説明を受けた。

「ここ10年、お客様の厳しい要求に応えるために、品質や環境ISO認証取得、トヨタ生産方式によるQCDの向上、経費削減などの体質強化策を図ってきた。おかげでお客様から見放されることなくやってこれた。でもここ2年程度をみると新技術や新製品の開発は遅れが目立ち、現場の改善も新しさに欠けている、中堅社員の退職が増えてきている。10年間、体質強化をやってきたが、何か大事なものを捨ててしまった様に感じている。そこにきて今回のリーマン危機で次の一手をどう打つか、このままでいいのか、このままではまずいのか、毎日自問自答の日々だ。今日は第3者の目で客観的に当社の様子を見てもらい、率直な感想を聞かせてもらいたい。」

 また、佐藤社長の人生観、お客様や従業員への想いなども聴かせてもらった。その間、同席していた総務の鈴木さんも嬉しそうな表情に見えた。佐藤社長の経営感は『会社は従業員のもの』の一語に尽きる。佐藤社長とこんな話をしているときに、遅れて常務の佐藤さんが社長室に入ってきた。

「いやー、なかなか指示を徹底できなくて。遅れてしまい申し訳ない。佐藤です。」 

 大きな声、自信に満ちた態度から自分がA工業を引っ張っているというオーラが発散されている。なかなかエネルギッシュな人物だ。佐藤常務は10年前にA工業に入社以来、製造現場一筋に歩んできた。これまでの活躍が認められ、昨年、常務に昇格した。一昨年からは、開発や営業に対しても権限を持つようになったらしい。社長の話からもA工業の経営は実質的に佐藤常務がリードしている様だ。

 佐藤常務は、具体的な評価指標や経理数字を使って、これまで実施してきた現場づくりの経緯、組立から検査までを業界で初めて全自動化したことなどを延々と話してくれた。特に自分が作り上げた現場には絶対の自信を持っているようだ。ようやく佐藤部長の話が終わり工場見学に向かった。
 
 そこには活気という空気が流れていなかった。さすがに佐藤常務が自慢するだけあって、職場の5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)は徹底されている。現場作業者は黙々と作業をしている。現場のいたるところに今日の生産目標と進捗状況がリアルタイムで表示され、進捗がおもわしくないとアラームがあがる仕組みになっている。アラームが上がると、真っ先に佐藤常務自らが駆け付け対処の指示をしているらしい。作業も標準化され標準作業書が作業者の前に掲示されている。生産工程は「かんばん方式」で制御され、一見してムダの無い規律ある製造現場になっている。

 でも作業者が窮屈そうに仕事をしている。作業者から生き生きしたエネルギーが感じられない。作業者の顔には緊張感が漂っている。すれ違い様に「こんにちはぁ!」と声をかけても反応なし。こちらが挨拶したのに誰ひとり、返事がないばかりか眼すら合せない。もちろん作業中に話をしている作業者はいない。説明を受けている間、近くにいる作業者の緊張感は増しているようだ。私より佐藤常務を気にしている。でも佐藤常務は自信満々に説明を続けている。

案内の最後に佐藤常務から

「これから1時間現場を止めるので、感想やアドバイスを従業員に話して欲しい」と申し入れがあった。コンサルタントからは以下の話があった。

「A工業さんの現場について今の段階で言うことはない。ここまで現場を仕上げてきたことに感服する。佐藤社長、佐藤常務のリーダーシップのもとで皆さんも大変な苦労があったことでしょう。ところで皆さんがこの会社で働く意義や働き甲斐はなんでしょうか。私はこの会社で働きたいとは思いませんでした。」

 その瞬間、従業員は凍りついた者と安堵の表情を浮かべた者に分かれた。佐藤常務は一瞬呆気にとられた後、怒りの表情に変わった。佐藤社長だけがいつもの笑みを浮かべていた。私の話は早々と切り上げ、残りの時間は従業員だけで意見交換をしてもらうことにし、この日はA工業を後にした。
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