付け根まで陽の届きたり破れ蓮
つけねまで ひのとどきたり やれはちす
<一言>
この夏は葉に一杯の雨を受け、小魚には涼しげな日蔭を与え続けていた蓮の葉。今は無残に破れたが、根元にはいっぱいの陽が射しこんでいる。ものには、無くした時に得る物もある・・・
・季語は、破れ蓮’で、秋’です。
付け根まで陽の届きたり破れ蓮
つけねまで ひのとどきたり やれはちす
<一言>
この夏は葉に一杯の雨を受け、小魚には涼しげな日蔭を与え続けていた蓮の葉。今は無残に破れたが、根元にはいっぱいの陽が射しこんでいる。ものには、無くした時に得る物もある・・・
・季語は、破れ蓮’で、秋’です。
風に伏す野のローレライ野紺菊
かぜにふす ののローレライ のこんぎく
<一言>
猛々しいまでに茂っていた夏草もいつしか枯初め、野分に倒れ伏した。そんな殺伐とした野にあって静かに咲いている一もとの野紺菊。荒れ野の持つ生命の耀きに思わず引き込まれてしまう・・・
・季語は、野紺菊’で、秋’です。
花穂撓むほどには重し秋の蝶
かほたわむ ほどにはおもし あきのてふ
<一言>
台風一過の蒼空となったが、まだ強風の残る野原に秋の蝶が花を巡っている。春の蝶ほどに軽々しく見えないのは、実際に翅が重い種類の蝶なのかもしれない。花を撓ませてゆっくりと飛翔する姿は儚さというよりも寂しさを感じさせる。
・季語は、秋の蝶’で、秋’です。
残菊に世に問ふ薫りありにけり
ざんぎくに よにとふかをり ありにけり
<一言>
鳩山首相の所信演説によると、今回の政権交代は平成の維新だとか。どこまで信用してよいのか迷っているのは私ばかりではあるまい。ふと、谷垣さんに残菊を重ねる。
残菊とは、晩秋になり、他の花が枯れた後にひっそりと咲き残った菊の事だが、旧暦九月九日の菊の節句を過ぎた為に「十日の菊」などとも言われ、時期外れで役に立たない事の喩に使われる。人間とは勝手なものである・・・
・季語は、残菊’で、秋’です。
錦木や山から風の吹き初めて
にしきぎや やまからかぜの ふきそめて
<一言>
錦木が赤い実をたくさん付けた。葉も色付き始め、秋の深まりを感じる。そういえばもう秩父の連山辺りから北風も吹き始めたようだ。
・季語は、錦木’で、秋’です。
午後の陽の黄金めきたり刈田風
ごごのひの こがねめきたり かりたかぜ
<一言>
稲刈りも最近はコンバインが当たり前となり、藁はその場で刻んでしまうのだそうだ。昔は当たり前だった藁細工は特別扱いの「民芸品」となってしまった。こういった稲架(はざ)もあまり見かけなくなってしまった。
・季語は、刈田風’で、秋’です。
撫子の風に影ろふ狭庭かな
なでしこの かぜにかげろふ さにわかな
<一言>
撫子の花。多分今年最後の開花だろう。秋の七草の一つだが、夏の内から咲き始めるためこの時期になってから咲くことは珍しいようだ。繊細で優しい雰囲気を持った花の為、大和撫子などと言うが昨今では異論のある人も居るかもしれない・・・
・季語は、撫子’で、秋’です。
山裾は日なたの匂ひ藤袴
やますそは ひなたのにほひ ふじばかま
<一言>
あちらこちらから紅葉の便りも聞かれるようになり、朝夕などは肌寒いほどになった。里山を歩いても日陰に入ればすーっと汗の引くのがなんとも心地よい。咲き残った藤袴の花も、秋の名残を感じさせてくれる。
・季語は、藤袴’で、秋’です。
空に浮きやぐら組む鳶紫苑晴れ
そらにうき やぐらくむとび しおんばれ
<一言>
鳶職の若者が10数メーターも有ろうかというやぐらを、ロープ一本で部材を引き上げながら次々と組みあげている。足元は細い鉄のパイプのみ。つい暫らく見入ってしまった。それが箱根駅伝予選会の設備だったと知ったのは、翌日の新聞記事だった。
・季語は、紫苑’で、秋’です。
木漏れ日は風の足跡赤のまま
こもれびは かぜのあしあと あかのまま
<一言>
まだ日中に日なたに出れば暑さを感じるが、木陰に入れば肌寒いくらいの爽やかな気候となった。紅葉にはまだ少し早いが、足もとの小草にも秋の深まりを感じられる。
・季語は、赤のまま’で、秋’です。