折り取れば毀るる高貴実紫
おりとれば こぼるるこうき みむらさき
<この俳句の作句意図>
色付いた紫式部。一枝仏花にと折り取れば、ぱらぱらと足もとに零れる。源氏物語で有名な紫式部から名を取ったと云われるが、紫は昔から高貴な色とされている。零すのはちょっと惜しい気がするがさりとて拾うわけにもいくまい・・・
・季語は、実紫(=紫式部の実のこと)’で、秋’です。
折り取れば毀るる高貴実紫
おりとれば こぼるるこうき みむらさき
<この俳句の作句意図>
色付いた紫式部。一枝仏花にと折り取れば、ぱらぱらと足もとに零れる。源氏物語で有名な紫式部から名を取ったと云われるが、紫は昔から高貴な色とされている。零すのはちょっと惜しい気がするがさりとて拾うわけにもいくまい・・・
・季語は、実紫(=紫式部の実のこと)’で、秋’です。
莢蒾や裏山と云ふ日向道
がまずみや うらやまという ひなたみち
<この俳句の作句意図>
裏山の日溜りでガマズミの実が真っ赤に色付いた。初夏に咲く花はあまり目立ったものではないが、この時期の実は美しい。お世辞にも日当たりのよい人生だったとは言えない私だが、こんな実を付けることはできるだろうか・・
・季語は、莢蒾(がまずみ)’で、秋’です。
野の匂ふ漢の厨零余子飯
ののにおう おとこのくりや むかごめし
<この俳句の作句意図>
山道で零余子を摘んだ。これで零余子飯と勇んで帰宅してみると、もうご飯は炊いている、おまけにこれでは少なすぎると家人の言。やむなく土鍋を取り出して一合の米を炊くことに。適度にお焦げも出来、まずは上出来。
・季語は、零余子飯’で、秋’です。
水面をしばし漂ひ渓紅葉
すいめんを しばしただよい たにもみじ
<この俳句の作句意図>
北の地や高山などでは紅葉が見ごろを迎えているらしい。八王子近郊では、名所と云われる高幡不動や高尾山なども11月の声を聞かないと見ごろにはならないだろう。それでも既に色付き始めた木もあって、小川の流れに散り落ちる様は、もう充分秋を実感させてくれる。
・季語は、渓紅葉’で、秋’です。
雲を背にそらを漂ふ秋桜
くもをせに そらをただよう あきざくら
<この俳句の作句意図>
秋の雲は流れるでもなく、ゆっくりと空に漂う。風に揺れるコスモスのように・・・
・季語は、秋桜(=コスモス)’で、秋’です。
むら雲に隠れおほせず十三夜
むらくもに かくれおおせず じゅうさんや
<この俳句の作句意図>
今日は後の名月とも云われる十三夜。昼ごろまでの糠雨に、十五夜に続き、今夜も月は見えないかと思っていたが中天に掛かるころに雲も切れ冷たく光る十三夜の月を眺めることができた。
・季語は、十三夜’で、秋’です。
秋めくや円月橋の影白く
あきめくや えんげつきょうの かげしろく
<この俳句の作句意図>
水面に映る影が満月のように見えることから名付けられたという円月橋。水戸黄門が明の儒学者、朱舜水に設計をしてもらったものだとか、今年の十五夜には見られなかった満月を思い描きながら眺めるのもまた一興か。
・季語は、秋めく’で、秋’です。
雨音の池に沁みゆき秋の朝
あまおとの いけにしみゆき あきのあさ
<この俳句の作句意図>
いつからか朝がひんやりと肌寒さを感じるようになった。雨粒がつくる小さな波紋が水面に広がり、そして消えてゆく。まるですべての音が水に溶けて消えて行くかのように・・・
・季語は、秋の朝’で、秋’です。
木犀に曳かれ観音礼拝す
もくせいに ひかれかんのん れいはいす
<この俳句の作句意図>
また、木犀の薫る季節となった。甘い匂いに引かれて路地を入ると小さな観音堂、牛にひかれて善光寺’ではないが、ちょっとお参りして行こうか・・・
・季語は、木犀’で、秋’です。
阿弥陀堂韓紅の石榴かな
あみだどう からくれないの ざくろかな
<この俳句の作句意図>
秋の果物と云えば、柿や栗などいかにも日本的なものが多いが、石榴は鬼子母神の話などを考えるとインドあたりから入って来たものとは思うがなぜか中国的な臭いがする。
・季語は、石榴’で、秋’です。