つゆ草

つゆ草や木（こ）の下風に蝶となり

＜この俳句の作句意図＞
木漏れ日を浴びて、つゆ草が青い花びらを揺らしている、まるで瑠璃色の小さなシジミ蝶が舞っているように見える。
歳時記によると、露草は秋の季語らしいが涼しい風の渡る林の中に咲く姿は、今の季節にぴったりの感じだが・・・

天竺葵（ゼラニュウム）

雨霽（は）れてひときは紅しゼラニュウム

＜この俳句の作句意図＞
梅雨の晴れ間に天竺葵（ゼラニュウム）が咲いている、花の時期の長い花だが、
雨に洗われるせいなのかこの季節がいちばん鮮やかに見える。

ゆすら梅の実

露の世に紅を留めてゆすらの実

＜この俳句の作句意図＞
梅雨の晴れ間にゆすら梅の実をもいでほうばる、幼いころこの季節の最大の楽しみだった、つかの間のように過ぎ去った長い年月の彼方に舞い戻り、ひと粒摘まんでみようか・・・

菖蒲田

菖蒲田に消ゆる木道九十九折

＜この俳句の作句意図＞
薬師池公園の木道、花の咲き始めた菖蒲田の中を右に左に何処までも、もう暫らくすると葉が茂って丸太が隠れるほどになる。

紫陽花の雨

紫陽花の雨に染まりて回り道

＜この俳句の作句意図＞
今日は用事が有るのに朝からしとしとと雨、駅へ曲がる角の先に紫陽花が咲いている。
吸い寄せられるように回り道、そんな私の気持ちが解ったのか紫陽花は、雨に濡れた顔を重たそうに持ち上げながら微笑んでくれたようだ。

蛍袋

娘（こ）の帰るほたる袋の揺れる道

＜この俳句の作句意図＞
駅へと続く道に蛍袋が咲いている、久しぶりに娘が帰ってくるらしいが駅まで行って見ようか、いや親父の威厳を保って家で待とうか、心は蛍袋のように揺れ動く、

捩花（もじずり草）

ねじばなのべにのたすきのけなげかな

＜この俳句の作句意図＞
もじずり草の花が咲き出した。紅い襷を掛けたようなずいぶんと変わった咲き方をする、襷がけでかいがいしく働く女性も今では和食の料理屋さんぐらいでしか見かけられなくなった。などと思うのは年寄りの懐古趣味であろうか・・・

山法師

粛々と雲水の列山法師

＜この俳句の作句意図＞
山法師の白い花が静かに揺れている、その名の故か以前薬王院の参道で出会った雲水さん達の姿を連想させる、辺りの喧騒をよそに粛々と山門を目指して上っていったが・・・
なんとなく心を洗われる思いがする。

河骨（こうほね）の花

河骨（こうほね）の首まっすぐにもたげけり

＜この俳句の作句意図＞
小さな沼のほとりに河骨の蕾が首を伸ばしている、沼底の茎根が横たわる骨を連想させるゆえの命名とか、
表面上の美しさに捉われていては判断を誤ることもある、との教訓か、
ともあれ美しい花には少し気の毒な命名ではないかと思う。

梅雨入り

せんべいの奥歯に優し梅雨入（ついり）かな

＜この俳句の作句意図＞
関東地方も梅雨入り宣言が有った、じめじめとうっとうしい季節の始まりか、
お茶請けの固焼き煎餅も心なしか柔らかだ。