皆さんと一緒に考えましょう

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

「当たり前の医療ができない」「仲間を守れるのか」大阪・看護師たちの悲鳴

2021-05-16 15:30:00 | 日記

下記の記事は文春オンラインからの借用(コピー)です

 新型コロナウイルスの感染者が爆発的に増え続ける大阪府。累計死亡者が1700人を超え、今なお入院もできず、自宅やホテルでもがき苦しむ重症者が数多く存在する。5月上旬の7日間の大阪府の死者数は人口100万人あたり22.6人。インドの同16.5人を上回っている。その最前線に立つ看護師たちの本音とは――。
 大阪府内の病院の救急科で日夜、重症者対応に追われる看護師・Aさんが現状を吐露する。
「私たちが限界と言ったらいけない……そんな思いでなんとか踏ん張っていますが、正直言ってしんどいですよ。できることならもう辞めたい。疲れた……。通常の3倍、4倍の業務量なので、日勤も遅くまで残業したり、16時間にも及ぶ夜勤は普通、仮眠を2時間ほど取れるのですが、それも取れていません。17時に入って、入院対応や急変対応しているうちに気がつけば午前0時になっているとか、酷い日は午前3時、4時になっているなんてこともざらです。一度も休憩せず、飲み食いもせず、忙しすぎてトイレに行くのさえ忘れることも。もう滅茶苦茶な状況です」赤く染まった通天閣
 大阪市内の民間病院で働く看護師・Bさんもこう語る。
「毎日、毎日、不安の中で働いていて、感情のコントロールができなくなってしまっている。定時にはもちろん帰れません。時間外勤務が増え、基本的には朝8時45分から夕方5時半までの勤務ですが、5月に入り重症者が増えてからは8時半とか9時になることも。師長も、深夜24時くらいまで残って対応しています。コロナの重症患者の方に加えて、一般の重症患者も見ているので、そうした患者さんの退院調整やマネジメントもある。師長にはそこに職員の感情面のフォローも重なって相当な負荷がかかっています。とにかくマンパワーが足りません。加えて、4月は新人が入ってきている。新人教育をしながら、慣れないコロナ患者さんも診なければいけないんです」
 こう激務の状況を打ち明けるのだ。
「実際のところ、みんな、いつ辞めよう、いつ辞めようと思いながら、自分が辞めると益々周りが大変になるから言い出せなくて、辞められずにズルズル来ているような状況です」大阪医科薬科大学病院のICU
 もちろん自身や家族への不安もある。
「自分たちも伝染るんじゃないかという不安感はあります。特に第4波以降は急変する患者さんが増えており、今まで以上の緊張感を強いられる。これまで1年以上頑張ってきましたが、終わりが見えないどころかさらに追い打ちをかけられている状況です。急変の割合が第3波の比じゃないのに加えて、感染力がすごく高い。ちょっとした間違いで自分も感染するんじゃないかという不安は常に消えません。若手もベテランも何とか気を張っていますが、ちょっとしたことで泣いてしまう看護師も多い。患者さんの命ももちろん大切ですが、一緒に働いている仲間をどうしたら守れるのか、悩みながら日々を過ごしています」
 過酷な環境の看護師たちをさらに悩ませているのが、「看取り」だ。
「家庭内感染が増加していて、家族も陽性や濃厚接触者という場合が多く、家族に会えないまま亡くなられていった患者さんが数多くいます。人生の最期に、私達だけが見送る状況です。ご家族の気持ちを思うと、『本当にこれでよかったんだろうか』と。ご家族が陽性や濃厚接触者でなければ、うちの病院では感染対策をきちっと取ってもらった上で、本当に数分ですが、最期のお別れをしてもらえるよう努力しています。『会わなかったら絶対後悔する』という気持ちが私達の中にあるので」
 先日、コロナで亡くなった患者の遺品を片付けていると、ハーモニカを見つけたという。
「ああ、この人、ハーモニカを吹く人だったんだって。患者さんのことを何も知らず、何の関わりもできないままだった。この人のことを『人』としてちゃんと診れていないと愕然としました。コロナの場合、こちらもフル装備で、マスクをして、ゴーグルをして、表情も見えません。看護師として当たり前のケアもできないのは本当につらい」
 大阪府堺市にある総合病院の看護師・Cさんも、「看取り」についてこう語る。
「第4波では家庭内感染が増えていて、家族が濃厚接触者だったりすると、病院まで来てもらうこともできない。本来、お亡くなりになられたら看護師の方で体をきれいにさせてもらい、身支度をしてご家族にも面会をしてもらうんですが、今は極力、亡くなった後も曝露のリスクがあるのでご家族は体には触れないよう徹底しています。納体袋に患者さんを入れ、棺に入れるところまで看護師がするんです。ストレッチャーと棺をお預かりして看護師がベッドから移し替える。霊安室に移動してからご家族に対面してもらうんですが、お顔を見ることも、触れることもできない。いままでの看取りとまったく状況が違います」
 Cさんも、やはり第4波の危険性を肌身で感じているという。
「第3波までは入院患者は高齢者が中心でしたが、今は若くなっている。40〜50代が中心になっています。30代が複数いた時もありますし、30代の重症化もあります」
 振り返ると、大阪が緊急事態宣言を前倒しで解除した2月末が悔まれるとCさんは言う。
「感染者が減って、病棟全体で陽性の患者さんがはじめて0になったことが3月頭にあったんです。でも、それも2週間くらいで、あっという間に増えだした。専門家の方々が指摘されていますが、解除を前倒しした後、他の地域に比べて感染が急拡大したのは否めません。本当ならPCRの検査数をもっと拡大するべきだったと思います。例えば高齢者施設では、多くのクラスターがスタッフから持ち込まれています。結果論ですが、スタッフのPCR検査が徹底されていれば多くのクラスターは防げたんじゃないかと思います。吉村(洋文)府知事はイソジンとか、ワクチン開発とか、たいそうなことをぶち上げる前に、もっと地道にできたことがあったんじゃないかなって思います」
 看護師の日常生活にも深刻な影響が出ている。
「本当に職場への往復と日用品の買い物くらいで、電車に乗るのもはばかられるような状態が続いています。外出は、もう1年くらい控えています。つらいです。この4月からはさらに厳しくなって、同居者以外とは一切会わないで下さいと病院からは言われています」
 今、前出のBさんが強く訴えたいのは、変異株が中心となった「第4波の危険性」と、それと乖離した人々の行動だ。
「私達も驚くのですが、10代の子でも感染している状況です。小・中学生でも感染し、症状が出ている。それなのに、『慣れ』が人の流動を止めない。大阪の人口100万人あたりの死者数はインドより多いと報道されています。重症化の速度は速く、発熱外来を予約して自分で歩いて来た方が、病院に到着した頃には低酸素ですぐにでも挿管が必要な状況になってしまっている。ものすごく怖い」自宅療養中の患者。ハンガーに点滴をつり下げている 
 Bさんは、時々、コロナで亡くなった方の遺族から優しく「どこも断られていると聞くのに、自分の家族は受け入れてもらえただけで感謝しています」と声をかけられるという。
「ご遺族にそんなことまで言わせてしまって、益々やりきれない。本来当たり前のはずの医療がもうできてないので、完全に医療崩壊だと思います」
 Aさん、Bさん、Cさん。3人に共通するのは、「医療現場の危機感を、少しでも多くの人に共有してほしくて取材に協力した」という思いだった。
 5月11日(火曜)16時配信の「週刊文春 電子版」および12日(水曜)発売の「週刊文春」では、今大阪の医療現場で何が起こっているのかを徹底取材。大学病院のICUの様子や、病院長の実名インタビュー、医師や保健師の証言をもとに、「もう70歳以上は受け入れられない」という医療崩壊の現場の詳細を報じている。



コメントを投稿