皆さんと一緒に考えましょう

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

「“独特な性癖”を持つ少年を治療する技術はない」茨城一家殺傷 精神鑑定の専門家が指摘する少年法の“穴”

2021-05-23 15:30:00 | 日記
下記の記事は文春オンラインからの借用(コピー)です

「医療少年院というのは精神科病院だと思っていただくとわかりやすいでしょう。一般的には、医療少年院というのは意味があります。ですが、ある独特の性癖を持っている少年のような非常に特殊なケースに対しては、そもそも今の精神医学の中に、そういった人たちを治療して、性的傾向を修正するような治療技術自体がないのです。この点を踏まえ、どうすれば茨城の事件のような悲劇を防げるのか、市民ひとりひとりが考えて、国がルール作りを進めてほしいと思います」(精神科医の井原裕氏)
16歳で「女性を襲うのに性的興奮を感じていた」と証言
 2019年9月に茨城県境町の住宅で起きた一家4人殺傷事件で、死亡した夫妻に対する殺人容疑で今年5月7日に逮捕された岡庭由征容疑者(おかにわよしゆき・26)。
 岡庭容疑者は16歳だった2011年11月、猫を惨殺後に連続少女通り魔事件を起こし、殺人未遂容疑で逮捕された過去を持っていた。当時の裁判では、「当初は殺害し、首を持ち帰ろうと思った」「女性を襲うのに性的興奮を感じていた」などと証言。“独得の性癖”を満たすための犯行だったことが明らかとなった。中学校時代の岡庭容疑者
 同事件の裁判員裁判で、検察は「再犯の恐れが極めて高い」と指摘していたが、岡庭容疑者には結局、医療少年院送致で更生を促す決断が下された。岡庭容疑者は2018年に満期で医療少年院を出所。治療を受けたにもかかわらず、それからわずか1年後に再び凶行に及んでしまった。吉川署へ入る岡庭容疑者 
 未成年者への刑事罰について定めた「少年法」の限界も指摘される中、再発を防止するためにどのような手段があるのか。獨協医科大学埼玉医療センターこころの診療科で教授を務め、埼玉県内の少年事件の精神鑑定を数多く担当している井原裕氏に聞いた。
治療だけでは再犯を防止することはできない
(今回の事件が起こった)原因は法的不備にあります。治安当局が再犯防止の措置を行えないのです。「医療少年院の更生プログラム」がいけないわけではない。通常の少年院や刑務所の方がよかったというわけでもない。むしろ、少年院や医療少年院は機能しています。井原裕氏
 実際に刑罰を与えることを目的とする刑務所に比べ、少年院や医療少年院を出た人の再犯率が低いというデータがあります。また、そもそも少年犯罪自体が減少傾向にあり、平成元年に26万人ほどだった刑法犯検挙少年は、平成30年には約2万3000人にまで減少しています。データから見ても、少年を取り巻く環境が良くなっているというのは事実。それは少年院や医療少年院がしっかりと機能しているからと考えて良いでしょう。
 ただ、医療少年院のプログラムを完全にこなした結果、少年たちが再び犯罪に手を染める可能性を「低くする」ことはできても、「ゼロ」にはできません。プログラムには限界があります。更正プログラムを施したとしても、再び犯罪に手を染めてしまう少年が一定数出ます。そもそも今の精神医学では独特の性癖を持っている少年のような特殊なケースに対しては、性的傾向を修正する治療技術自体がありません。治療に限界がある以上、治療しきれなかった少年のなかから再犯者が出ます。治療だけでは再犯は防止できません。そこから先は治安当局の仕事です。
出所したとたん「監視の目」が少なくなり、再犯のチャンスが何度も訪れる
 ですから、「再犯の可能性をゼロにすることはできない」という観点から問題を考えてみる必要があります。彼らが医療少年院を出た後に再犯を犯しにくいような制度を整備しなければなりません。彼らに対しては再び犯罪に手を染めないように見守る。地域住民に対しては治安情報を適切に提供する。しかし、日本では、このような「再犯防止」のための法制度が全くない。当時の新聞報道(2011年12月6日読売新聞夕刊)
 そもそも医療少年院で行われているプログラムと言うのは、犯罪予防のためでなく、心の病気の治療や社会復帰を促すためのものです。医療少年院の中では、少年たちは四六時中監視され、問題行動を起こさないよう管理されていますが、出所したあとは、とたんに「監視の目」が少なくなり、再犯のチャンスが何度も訪れるようになります。危険人物が、自由奔放に街を歩ける状態となってしまうのです。
韓国では法律でGPSによる最長30年間の監視が認められている
 一方、海外に目を向けると、イギリスやフランス、ドイツ、スウェーデン、オーストラリアなど様々な国で、犯罪者が出所した後に、再犯を防止するための法律が制定されています。特に顕著なのがアメリカと韓国です。
 アメリカでは「ミーガン法」と呼ばれる性犯罪者情報公開法が制定されており、性犯罪者の情報がデータベース化されています。1人ずつにコード番号を付けて、出所後も現在どこに住んでいるかなどの情報を追跡できるようになっており、ある州では、性犯罪者の出所(仮釈放)時や転入・転出に際して、住居周辺の住民への告知が行われるようになっています。茨城県境町の被害者宅 
 また、韓国では、再犯のおそれがある性犯罪者に対し、GPS(全地球測位システム)による監視制度を導入しており、法律では最長30年間の監視が認められています。
 再犯のおそれがある性犯罪者が、居住地から半径2キロの監視範囲から外に出たり、指定された制限区域に立ち入ると24時間体制で保護観察所に報告される仕組みです。この結果、再犯率は2008年の制度施行前が14.1%だったのに対し、施行後は1.7%と、8分の1以下にまで大きく減少しました。
少年法だけでは治安を守れない
 翻って日本の場合、少年院や刑務所を出所した後の治安上のフォローが欠落している点が制度上の致命的な欠陥です。少年の健全育成か、治安の維持か、という二者択一ではなく、両者を実現しなければなりません。少年法だけでは治安は守れません。治安を守るのはあくまで警察、保護観察所、裁判所などの治安当局です。2011年の通り魔事件の時に警察が押収したナイフ 
 平時には制度の不備は見えてきません。例外的な事例が起きた時にこそ、制度の不備が浮き彫りにされます。「少年犯罪が減っている」という一般論を口実に、制度の未整備を正当化してはなりません。再犯防止に真剣に取り組むべきです。

「ナイフを買い与えた親を岡庭容疑者が見透かしていた可能性」茨城一家殺傷で問われる親の責任

「医療少年院を出たからといって、それが100%更生したということを意味するわけではありません。学校などと同じで入所して学ぶことで自覚を持てるかどうかだと思います。結果論にはなりますが、今回の岡庭容疑者は自覚を持つことが全くできていなかったのではないでしょうか。自覚を持った少年たちの中には環境を変えたいと出所後に親元を離れる人も多いのですが、岡庭容疑者の場合は両親がいる実家に戻ってしまった。これにより“巻き戻し”が起こってしまったのかもしれません」(弁護士の大澤孝征氏)大澤孝征氏
両親の元へ戻ったことが事件の遠因になった可能性も
 2019年9月に茨城県境町の住宅で起きた一家4人殺傷事件で、死亡した夫妻に対する殺人容疑で今年5月7日に逮捕された岡庭由征容疑者(おかにわよしゆき・26)。
 岡庭容疑者は16歳だった2011年11月、猫を惨殺後に連続少女通り魔事件を起こし、殺人未遂容疑で逮捕された過去を持っていた。当時の裁判では、「当初は殺害し、首を持ち帰ろうと思った」「女性を襲うのに性的興奮を感じていた」などと証言。“独得の性癖”を満たすための犯行だったことが明らかとなった。
 当時の報道(読売新聞12月6日夕刊)
 当時の裁判員裁判で、検察は「再犯の恐れが極めて高い」と指摘し「再犯の防止には刑事処分が必要だ」と主張したが、さいたま地裁は広汎性発達障害の影響や両親の養育環境が動機につながったとして刑事処分を退け、岡庭容疑者には最終的に医療少年院送致で更生を促す判断が下された。岡庭容疑者は2018年に満期で医療少年院を出所し、わずか1年後に再び凶行に及んでしまった。
 注目されるのは「親の責任」の問題だ。岡庭容疑者が通り魔事件を起こした際には、父親も、刃物などの有害玩具を息子に持たせていたことから、青少年健全育成条例違反容疑で書類送検された。さいたま地裁も岡庭容疑者の犯行動機の一つに「両親の養育環境」があったとしている。また医療少年院退所後に、自立できず両親の元へ戻ってしまったことが今回の事件の遠因となったと指摘する声もある。少年法や家事事件、犯罪被害者保護法等に精通し、医療少年院にも足を運ぶ弁護士の大澤孝征氏に聞いた。
ナイフの画像を見ながら「かっこいいからコレクションしたい」
 岡庭容疑者は2011年の連続少女通り魔事件の際、父親に買ってもらったバタフライナイフを使って凶行に及んでいました。父親は、通り魔事件の裁判の証人尋問で、岡庭容疑者にナイフを買い与えた経緯についてこう述べたそうです。
〈(息子が)インターネットのオンラインショップでナイフを売っているところを見つけ、興味を示すようになった。サバイバルナイフの画像を見せながら『いいなあ、買ってよ』などと言ってきた。『なんで欲しいの』と尋ねると、『かっこいいからコレクションしたい』と。とはいえ、持ち歩くと銃刀法違反になるのはわかっていたので、『外に持ち歩いたりしたら絶対ダメだぞ』などといって、代わりに私の名前で注文し代引で購入していた〉中学時代の岡庭容疑者
 この父親は「有害玩具」を子供に買い与えたことから、青少年健全育成条例違反容疑で書類送検されています。
岡庭容疑者の医療少年院での更生プログラムは失敗した
 もちろん、一概に子供に何でもかんでも買い与えることがダメだということにはなりません。しかし、子供は親を見て育つもの。まして、日本の場合、「親権」というのはとても強い権利で、滅多なことでは親権をはく奪されることはありません。例えば、増え続ける実親・保護者からの児童虐待案件数に対して、日本で親権停止にまで踏み切った事例はわずかに年間数十件に留まります。だからこそ、親権を持つ者は、その権利を正しく行使しなければなりません。
「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う」(民放820条)とある通り、親は子供のことを見て、良いことをするように教育しなければいけない義務を負っているのです。岡庭容疑者の場合、過去に刃物を使って通り魔事件を起こしたという事実があります。それにも関わらず、今回、また刃物を買い与えていたり、刃物の購入を容認し、親が止めなかった場合などには、親の責任が問われる可能性もあります。通り魔事件の際に、少年宅から警察に押収されたナイフ 
 今回の事件について改めて検証すると、岡庭容疑者の医療少年院での更生プログラムは失敗したと言わざるをえないでしょう。しかし、だからと言って、医療少年院の更生プログラムそのものが適正でないということにはなりません。
医療少年院に入所した少年少女の7割は更生する
 医療少年院に入所した少年少女のうち約7割は更生すると言われています。成人の更生保護施設の場合、更生する割合は僅か3割と言われていますから、その2倍以上。とても高い更生率です。この結果は、成人に比べ、少年少女の方が若く柔軟で更生プログラムを受け入れやすいということもありますが、そもそも医療少年院という施設がしっかりと「教育」という観点に立って指導を行っているからこそ達成できた数字だともいえます。
 例えば、成人の場合は、刑務作業などをさせますが、しっかりと1人1人を見ることまではしません。しかし、少年については1人に対して、複数の専門家がつき、社会復帰のための指導に当たります。 
きちんと立つ、まともに歩く、当たり前の行動ができない少年少女
 医療少年院での更生プログラムはまず何より「本人の自覚」を持たせることを目的としています。入所後、最初は誰とも会話をしない完全に1人となる時間を数日間作り、自分と向き合わせます。自分のしたことや自分の立場、周囲との関係などを誰からも何も言われずに自分で考える時間です。
 その後は社会人として当たり前に行われていることができるような指導をします。驚いてしまうかもしれませんが、入所してくる少年少女らの中にはきちんと立つ、人と合わせてまともに歩くということすらできない子達が大勢います。ちゃんと立っていなければいけない時に座り込んでしまったり、周囲と合わせてまっすぐ歩くことができずフラフラしてしまう子達もいます。岡庭容疑者(2020年11月) 
 そういった少年少女に対しても、根気強く教育を徹底し、次は毎日同じ時間に起きて、同じ時間に食事をし、決められた時間に作業や勉強を行う。そういった当たり前を日常化する指導を続けていきます。そして、ある程度基本的な生活習慣が身に着いたところで、段々と本人たちの心の中に踏み込んでいく指導を行っていくのです。
元の悪い環境に戻った結果、心理状態も元に戻ることがある
 具体的にはまず、少年少女たちに知能検査を行ったり、絵を描かせてその子が抱える問題を心理学的に追求します。また、ある程度までプログラムが進んだと判断されると、自身が起こしてしまった事件の被害者の話を聞かせます。被害者はその後どうなったのか、家族はどんな立場にあるのかといった話ですね。また加害者である自分と、被害者の立場を変えて話をしたり、自分の親の立場になって、自分に手紙を書くなどのプログラムもあります。こうして相手の立場に立って、物事を理解させることで、自分が犯してしまった「罪」の重さを「自覚」するよう促します。自分の罪の重さを自覚することができれば、もう同じ過ちを繰り返すことはない。いわば、これらのプログラムは病院と一緒。入院し、悪いところを見つけて、治療する。医療少年院には、社会的な病院としての役割があるのです。大澤氏
 ほとんどの少年少女はこの“病院”に入院することで、相当程度矯正はできていると思います。ただし、問題は出所後にあります。更生施設を出るときには良い心理状態であっても、結局、社会に馴染めず、元いた悪い環境に戻ってしまった結果、心理状態も元に戻ってしまうということが多く見られるからです。これを“巻き戻し”といいます。
親は“巻き戻し”が起きないように十分に気を配る必要があった
 自覚のある少年少女ならば、「あ、自分は今巻き戻しの状態になりつつあるな」と初期段階で気づき、例えば、両親の元を離れ、支援者の指導を受けながら独り暮らしを始めるなど、自ら環境を変えていく子達もいます。しかし、今回の岡庭容疑者は、医療少年院出所後に、一時はグループホームで暮らしたものの、1年も経たないうちに両親の元に戻り、再び犯罪に手を染めてしまった。まさに、“巻き戻し”が起きてしまった可能性があります。
 岡庭容疑者の場合、本人としては居心地が良く、前と同じことをやりやすい環境があると考え、親の元に帰ったのかもしれません。しかし、親としても“巻き戻し”が起きないように十分に気を配る必要があったと言わざるを得ません。今回のケースでは、実家に戻れば再び好きなことができるかもしれないと考えた――岡庭容疑者が親を見透かしていたということも十分に考えられます。
 岡庭容疑者については憶測による部分もあり、一概に言えることではありませんが、いずれにせよ、間違いなく言えるのは、問題は少年院にあるのではなく、出所後にあるということです。どうやって“巻き戻し”を防いでいくか。法制度の改正も含めて、我々社会全体で早急に取り組んでいくべき課題です。
 
追記:再犯率の高い性犯罪者と共にこのような恐ろし性癖をもった若者を放置しておいては安心して暮らしていけません。彼らの人権よりも被害にあわれた方の苦痛は何倍も大きい。韓国では法律でGPSによる最長30年間の監視が認められていると書かれているように日本も見習うべきです。


コメントを投稿