☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む衛星都市
木星軌道上の衛星都市メティス 二人がいた建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)
『君がいる幸せ』 四章「心のままに」二話(短編集)
Epilogue Bridge「道なき道へ」一(全三話)
※この章は流血もBLもあります。時間も飛びます。ご注意を!
大戦終結から約一年半。
僕は、イグドラシルから戻って半年近く、自由に動ける状態ではなかった。
その復帰から一年が過ぎようとしていた。
「僕がシャングリラを降りよう」
「人類の中へ行って、もっとちゃんと皆が生きていけるように話を進ませる。時間はかかるかもしれないが、暫く我慢をしていて欲しい」
ミュウの元を離れて人類の中で暮らす事にした僕は、人類の代表であるキースをたずねた。
彼と会うのは地球で救出された人類の船以来だった。
あの時、僕は上昇中の船で意識を取り戻したが、キースはまだ昏睡状態で彼の部下のセルジュが必死に声をかけていた。
(キース。キース・アニアン)
僕はテレパシーを送った。
すると彼はうっすらと目を開けた。
探すように目が動く、僕を見つけるとこう言った。
「ありがとう」
その声は小さくてはっきりと聞こえなかったが、確かにそう言った。
その後はキースは人類の医療船へ移動をし、僕は迎えに来たシャングリラへと移った。
ミュウである僕の方が怪我の治りが早いのは当然だった。
彼は、大戦からまだ一年半では、彼の怪我は完治しておらず車椅子の生活をしていた。
そんな状態でも様々な問題の対応をしていた。あれだけの怪我をしたのにここまで回復しているのが正直驚きだった。
その頃のキースは主席を辞めていたが、軍部には休暇となっていた。
それでも、彼が軍事の中心である事に変わりは無かった。
彼はまだ太陽系の木星に居た。
何故木星なのかと言うと、我々ミュウがここに居るから、離れられなかったのだと思う。
船を降りた僕は病院にいるキースを訪ねた。
そして「僕の身柄を君に預けたい」と申し出た。
キースはその真意が全く測れないでいるようだった。
「戦後、間もないと言うのに、戦って勝った方の大将を、負けた方が預かるなど聞いた事がない」
「ここに来るまで僕は三度検査をされた。それこそ身体中くまなく。だけど、外の警備が何も意味を成さない事も、たとえ僕が何も着ていなくて、ここに裸で来たとしても、僕は君を殺せる」
「それはわかっている」
「それでも、君は僕を拘束せず、ここに入れてくれた」
「負けたのはこちらだからな」
「戦争の勝敗なんて、関係ない。僕に君を守らせてもらえないだろうか?」
「…ソルジャーであるお前が、カナリアと暮らしだしたフィシスのようにミュウから離れて生きると言うのか?」
人類側は、こんな馬鹿な提案を受ける事はないだろう。
僕はキースを守る為にと言ったが、それは口実でしかない。
マザーの意思を伝えたあの発言からキースが一部の人間やミュウから恨まれ命を狙われているのは誰でも知っている事だったのだが、僕が彼を守る必要はなかった。
「僕はカナリアの所に行く気はない。君の下に置いてくれればいい」
「何の為にそうする?」
「何の為…。先に進む為かな?シャングリラを降りてしまったから行く所が無いんだ」
「船を降りて来た…のか?」
戦後でごたついているのはわかるが、自分達の大将を降ろすなんて、ミュウは一体何を考えているんだ。
それともこれは…。
「キース、それは違う…。僕の行動は、ミュウの意思ではない。僕が船を降りる事を皆は認めてはいない。だけど、もう皆は僕無しで生きないといけない。そしてそれは僕にも言える」
「疲れたと言うのか?」
「いいや、違う。そうだな…生きていく方向が違ってしまった…と言うのが合っているのかもしれない」
「俺がお前の身柄を預かったら、ミュウからは反発が起きると思うが…」
「それはない。君を敵と思っているのはまだいるけれど、僕がここに来たのは、僕の意思であるのは皆には伝えてある。これは僕の独断なんだ」
「…考えさせてもらえないか」
「では、その答えが出るまで、ここに居させてくれないかな?本当に行く所が無いんだ。その間、僕を拘束していいから…。動けないように縛り付けても、薬で眠らせてもいい。僕がそうしても良いというのだから…一つも遠慮する事はない」
「それはいつでも逃げれるという自信からか?」
「信じてもらえるなら何でもするって事だ…」
「信じる?それはないな」
「なら…君たちの気が済むなら…いや…今、この時点から、僕の命を君に預ける。好きにすればいい」
「何がお前をそうさせる?」
「先に進む為に」
「…了解した」
僕はメティスの病院から軍事施設へと移送された。
動けないような拘束はされていないが、警備の兵士がぴったりと張り付いていた。
そして二週間近く、その施設にいる事となった。
対ミュウのシールドがしてあるので、外の事は何一つわからないままだった。
残念だが、普通のミュウなら無理だろうが、僕には簡単に破れるような物だった。
多分、これはきっと、破って逃げていいって事なんだ…。
僕の意思は彼らには、伝わらないのか?
僕は事を急ぎすぎているのだろうか?
だけど、時間はもうあまりない。
僕は見たいんだ。
ミュウと人類が幸せに暮らしている未来が。
無謀な挑戦だったのだろうか?
本当に拘束され眠らされてしまったら、何も出来ずに殺されてしまうかもしれない。
たとえキースにその意思がなくても、殺してしまえばいいと思う事や、そう思う者もいるだろう。
今は、彼を信じ、そして、自分を信じるしかなかった。
そして二週間が過ぎた。
キースの直属の部下が来て部屋から出る事になった。
まずはシャワーを浴びてと言われて浴びて出て来ると、ずっとソルジャー服だった僕に、こちらで用意したスーツに着替えてもらえませんか?と言ってきた。
「この服は、ミュウの能力を抑える意味と攻撃も防ぐので、全部替えれません。インナーだけこのままでもいいですか?」と言うと、
「それでは洗ってきますから、少々待っててください」と言った。
思ったより気さくな感じの男は服を持って出て行った。
そういえばずっと着たきりだったなと、ガウンを着て、用意されたスーツを合わせてみる。
サイズは合っているようだ。
「……」
もちろんここにも対ミュウシールドがある。
「こんな物が無い世界…」
人類へと組み込まれる事になったミュウは人と暮らす事を望んだ者から順に登録をして、少しずつ病院等の公共施設が使えるようになっていた。だが、さすがに軍事施設はまだだった。
「問題は山ほど、わだかまりも消えてはいないか…」
キースは僕をどうするつもりなのだろうか?
しばらくすると、さっきの男が僕の服を持ってきた。
僕は、ちょっと丈の長めな黒のスーツに着替えた。
渡されたスーツケースに、洗濯が終わったソルジャー服をしまうと、空気が違って感じられた。
そして、ある部屋の前に来ると男はこう言った。
「キース・アニアン総監が本日付けで復帰されたましたので、会っていただきます」
「あなたはこれから総監の指示に従ってもらいます」
続く
<用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む衛星都市
木星軌道上の衛星都市メティス 二人がいた建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)
『君がいる幸せ』 四章「心のままに」二話(短編集)
Epilogue Bridge「道なき道へ」一(全三話)
※この章は流血もBLもあります。時間も飛びます。ご注意を!
大戦終結から約一年半。
僕は、イグドラシルから戻って半年近く、自由に動ける状態ではなかった。
その復帰から一年が過ぎようとしていた。
「僕がシャングリラを降りよう」
「人類の中へ行って、もっとちゃんと皆が生きていけるように話を進ませる。時間はかかるかもしれないが、暫く我慢をしていて欲しい」
ミュウの元を離れて人類の中で暮らす事にした僕は、人類の代表であるキースをたずねた。
彼と会うのは地球で救出された人類の船以来だった。
あの時、僕は上昇中の船で意識を取り戻したが、キースはまだ昏睡状態で彼の部下のセルジュが必死に声をかけていた。
(キース。キース・アニアン)
僕はテレパシーを送った。
すると彼はうっすらと目を開けた。
探すように目が動く、僕を見つけるとこう言った。
「ありがとう」
その声は小さくてはっきりと聞こえなかったが、確かにそう言った。
その後はキースは人類の医療船へ移動をし、僕は迎えに来たシャングリラへと移った。
ミュウである僕の方が怪我の治りが早いのは当然だった。
彼は、大戦からまだ一年半では、彼の怪我は完治しておらず車椅子の生活をしていた。
そんな状態でも様々な問題の対応をしていた。あれだけの怪我をしたのにここまで回復しているのが正直驚きだった。
その頃のキースは主席を辞めていたが、軍部には休暇となっていた。
それでも、彼が軍事の中心である事に変わりは無かった。
彼はまだ太陽系の木星に居た。
何故木星なのかと言うと、我々ミュウがここに居るから、離れられなかったのだと思う。
船を降りた僕は病院にいるキースを訪ねた。
そして「僕の身柄を君に預けたい」と申し出た。
キースはその真意が全く測れないでいるようだった。
「戦後、間もないと言うのに、戦って勝った方の大将を、負けた方が預かるなど聞いた事がない」
「ここに来るまで僕は三度検査をされた。それこそ身体中くまなく。だけど、外の警備が何も意味を成さない事も、たとえ僕が何も着ていなくて、ここに裸で来たとしても、僕は君を殺せる」
「それはわかっている」
「それでも、君は僕を拘束せず、ここに入れてくれた」
「負けたのはこちらだからな」
「戦争の勝敗なんて、関係ない。僕に君を守らせてもらえないだろうか?」
「…ソルジャーであるお前が、カナリアと暮らしだしたフィシスのようにミュウから離れて生きると言うのか?」
人類側は、こんな馬鹿な提案を受ける事はないだろう。
僕はキースを守る為にと言ったが、それは口実でしかない。
マザーの意思を伝えたあの発言からキースが一部の人間やミュウから恨まれ命を狙われているのは誰でも知っている事だったのだが、僕が彼を守る必要はなかった。
「僕はカナリアの所に行く気はない。君の下に置いてくれればいい」
「何の為にそうする?」
「何の為…。先に進む為かな?シャングリラを降りてしまったから行く所が無いんだ」
「船を降りて来た…のか?」
戦後でごたついているのはわかるが、自分達の大将を降ろすなんて、ミュウは一体何を考えているんだ。
それともこれは…。
「キース、それは違う…。僕の行動は、ミュウの意思ではない。僕が船を降りる事を皆は認めてはいない。だけど、もう皆は僕無しで生きないといけない。そしてそれは僕にも言える」
「疲れたと言うのか?」
「いいや、違う。そうだな…生きていく方向が違ってしまった…と言うのが合っているのかもしれない」
「俺がお前の身柄を預かったら、ミュウからは反発が起きると思うが…」
「それはない。君を敵と思っているのはまだいるけれど、僕がここに来たのは、僕の意思であるのは皆には伝えてある。これは僕の独断なんだ」
「…考えさせてもらえないか」
「では、その答えが出るまで、ここに居させてくれないかな?本当に行く所が無いんだ。その間、僕を拘束していいから…。動けないように縛り付けても、薬で眠らせてもいい。僕がそうしても良いというのだから…一つも遠慮する事はない」
「それはいつでも逃げれるという自信からか?」
「信じてもらえるなら何でもするって事だ…」
「信じる?それはないな」
「なら…君たちの気が済むなら…いや…今、この時点から、僕の命を君に預ける。好きにすればいい」
「何がお前をそうさせる?」
「先に進む為に」
「…了解した」
僕はメティスの病院から軍事施設へと移送された。
動けないような拘束はされていないが、警備の兵士がぴったりと張り付いていた。
そして二週間近く、その施設にいる事となった。
対ミュウのシールドがしてあるので、外の事は何一つわからないままだった。
残念だが、普通のミュウなら無理だろうが、僕には簡単に破れるような物だった。
多分、これはきっと、破って逃げていいって事なんだ…。
僕の意思は彼らには、伝わらないのか?
僕は事を急ぎすぎているのだろうか?
だけど、時間はもうあまりない。
僕は見たいんだ。
ミュウと人類が幸せに暮らしている未来が。
無謀な挑戦だったのだろうか?
本当に拘束され眠らされてしまったら、何も出来ずに殺されてしまうかもしれない。
たとえキースにその意思がなくても、殺してしまえばいいと思う事や、そう思う者もいるだろう。
今は、彼を信じ、そして、自分を信じるしかなかった。
そして二週間が過ぎた。
キースの直属の部下が来て部屋から出る事になった。
まずはシャワーを浴びてと言われて浴びて出て来ると、ずっとソルジャー服だった僕に、こちらで用意したスーツに着替えてもらえませんか?と言ってきた。
「この服は、ミュウの能力を抑える意味と攻撃も防ぐので、全部替えれません。インナーだけこのままでもいいですか?」と言うと、
「それでは洗ってきますから、少々待っててください」と言った。
思ったより気さくな感じの男は服を持って出て行った。
そういえばずっと着たきりだったなと、ガウンを着て、用意されたスーツを合わせてみる。
サイズは合っているようだ。
「……」
もちろんここにも対ミュウシールドがある。
「こんな物が無い世界…」
人類へと組み込まれる事になったミュウは人と暮らす事を望んだ者から順に登録をして、少しずつ病院等の公共施設が使えるようになっていた。だが、さすがに軍事施設はまだだった。
「問題は山ほど、わだかまりも消えてはいないか…」
キースは僕をどうするつもりなのだろうか?
しばらくすると、さっきの男が僕の服を持ってきた。
僕は、ちょっと丈の長めな黒のスーツに着替えた。
渡されたスーツケースに、洗濯が終わったソルジャー服をしまうと、空気が違って感じられた。
そして、ある部屋の前に来ると男はこう言った。
「キース・アニアン総監が本日付けで復帰されたましたので、会っていただきます」
「あなたはこれから総監の指示に従ってもらいます」
続く