☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノア副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
ジョミー 本当はジョミーはクローンではない(タイプイエロー)
『君がいる幸せ』 Missing-link編 「伝えたい言葉」 十五話
ジョミーは暫く笑った後で、
「もう君の答えを聞かなくてもわかるような気がするよ。答えは出たかい?」と聞いた。
「はい」
ブルーはジョミーを見て明るく答えた。
「僕を殺せる人間は、力のバランスを考えたら、ソルジャー・トォニィが相応しいと思う。だけど、僕は、僕が死ぬ時に最後に見たいのは彼じゃない。だから…」
と、少し言い淀んだ。
「わかるよ…その気持ち…」ジョミーが同意をする。
「…僕は…ジョミーがいい」
「それは…」
どっちの?と言いかけるジョミー。
それをにっこりと笑って受け止めたブルーが言う。
「二人のジョミー」
「あっは。それは…」
ジョミーがブルーの顔を見たまま笑い出す。
「ブルー。それって、とっても、君らしいね」
笑うジョミーを見つめ、真剣な眼差しを浮かべたブルーが聞く。
「ジョミー。僕はあなたをずっと探し求めるように出来ている。そうなんですよね?」
「そうだよ、でもそれは、僕が、そう彼(ソルジャー・ブルー)の中にそう刻み込んだからね…」
「だから、僕は彼と同じようにあるべきだと望んでしまったんだ。それが、僕らをタイプブルーの運命へと進む事になったと、それは、ジョミー。あなたが言うように『悲劇』だと思うんだ。でも、それをあいつに、ジョミーに言ったら「僕はそうは思わない。これは悲劇なんかじゃない。僕たちの、ただの運命だ」と答えたんだ」
「タイプブルーのそんな力を持ってしまった者の『運命』はあるが、それを『悲劇』だとは思わないと、彼は言うんだね」
「運命も何も超えてゆこうって、この力はそんな、悲劇を呼ぶものじゃないって、これは『幸運』なんだって。僕たちには僕らでしか出来ない何かがあるはずだと言うんだ」
そんなブルーのまっすぐな視線を受け止めジョミーは答えた。
「二人は、それを求めて生きると言うんだね」
「だから、彼を選んだそれでは…いけませんか?」
「ううん。わかったよ。彼は強いな。彼なら任せられるかもしれないな。いい?ブルー。知っていて欲しい。僕やトォニィが言う何か起きるような状態はきっと起きない。殺せる相手を決めるなんて事は、僕たちタイプブルーとしての覚悟を言うだけのものなんだ。君に何かを出来る者はいない。君は誰かに心を操られるような事は無い」
「ジョミー、あなたになら…」
「僕に?それはありえないよ。それとね、ブルー。自分を殺す相手に選ぶという事は、自分をそれほどまでに信頼する人間を殺すという十字架を相手に背負わせる事になる」
「…あ…」
「残すつらさ。残されるつらさ。そこには何があれば良いと思う?」
「わからないな…」
「考えてみて」
ジョミーはにっこりと笑った。
「でも、それでも、僕になにか起きたら、二人で殺して欲しい。それなら、僕も、あいつもきっと辛くないし…」言葉に詰まるブルーだった。
「わかったよ。さっきの問は…次までの課題にしておこうね…」
と、ジョミーは笑った。
「ジョミー」
つられるようにブルーも笑う。
「しかし、ずいぶん我ままな願いだね。二人で殺してなんて、本当に君らしい」
「違うよ。ジョミー。僕だからじゃない。これはきっと本体も…ソルジャー・ブルーも同じ事を聞かれてたら、そう言うと思う…」
「ソルジャー・ブルーも?…確かにそうかもしれないね」
ジョミーが思い出したように少し考えながらこう言った。
「ねぇ、ブルー。もう一つ聞いていいかい?あの時、どうして「僕を忘れろ」と言ったの?」
ブルーがハッとしたようになり、顔を逸らした。
そして、小さく息を吸うと再び顔を上げた。
ゆっくりと、ジョミーを見つめた。
「僕はジョミー、君を望むんだ…」
ソルジャーズのブルーがジョミーの事を「君」と呼んだ。
それだけで、ジョミーは心が騒ぎ出した。
僕はブルーを見つめ、何も言えなくなった。
「ジョミー」
さっきまでより少しゆっくりと、そして、優しい声でブルーが僕の名を呼んだ。
あの優しい声だ。
僕を呼ぶ、あの優しい声。
時間が戻ってゆく気がする。どんどんと過去へ。
それに流されないようにジョミーは両手にぐっと力を込めて握った。
「…それは、僕が、君に植え付けてきたものだ。だから、僕はそれを、その僕を求めてしまう気持ちを取り除こうって言ったじゃないか。だから…君はもうそれで苦しむ事は無い…」
「この気持ちを取り除く?そんな事出来るはずがない。君は僕に暗示をかけてそう思わせるだけだろう」
「いいや。出来る」
「出来るはずがない…」
「僕には出来る…だってそれは…僕が」
「だって、そうだろう。こんなにも深く根付いているものを取るなんて出来ない。これは…誰にも、そう、君にも取れないし、消せやしない。僕が消させやしない」
ブルーが強い瞳でまっすぐにジョミーを見返す。
「ブルー!ちがう。それは…」
ジョミーは思わず声を荒げた。
「だから、それが、貴方の重荷になってしまって…過酷な運命へと歩ませてしまったんだ。だから、僕は、それは、僕の責任なんだ。その気持ちは僕が…与えた。ミュウとなり、運命を生き抜き。そして、いつか生まれてくる僕を追えと、探し出せと、過去に行った僕が貴方に植え付けたんだ。だから…」
「ジョミー。それを…僕が苦しいと言ったかい?」
ブルーがじっとジョミーを見て、にっこりと笑った。
「…!…」
「君を求める事、それを、僕が苦しいなんて思うはずがない…僕自身がそう願い。僕がそう求めて、追ってきたのに…それが苦しい筈がない」
「…僕は…僕は貴方と…地球へ行きたかっただけ…。いつか…あの山の頂きに立ち、あの風を感じてみたかっただけ…だったんです…」
「僕も見たかった。君とね」
じっと見つめ続けるブルーの視線から逃れるように下を向いたジョミーが、ブルーの両腕を掴んで苦しげに言った。
「…ごめん。クローンのブルー。もう…止めて。僕は…もう…」
うつむいたままのジョミーを見つめてブルーは答えた。
「ダメだ。ジョミー逃げないで。溢れてくるんだ。彼が聞いて欲しいって言うんだ」
「これが、君たちを傷つけた僕への罰なのか?」
「いいえ。いいえ。違います。罰じゃありません…彼は聞いて欲しいだけ…なんです」
「…ブルー」
ブルーの腕を掴んだジョミーの手が小さく震えていた。
「…わかった。ブルー。これが貴方の言葉なら…僕は全てを受け止めないといけない。だから…ここから逃げても後悔をするだけだ…もう、逃げないから…ちゃんと受け止めるから…」
そう言って顔を上げたジョミーの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「こんな形で君に伝える事になるなんて…僕はどこまで諦めが悪いんだろうね」
ブルーが笑う。
「それは…それが貴方が貴方だからですよ。何百年も一人で待つなんて…とても出来ないでしょう?でも、貴方も随分な天邪鬼ですね。「忘れて」は「忘れないで」…だなんて誰も思わないですよ…」
「君に忘れて欲しくて、忘れて欲しくなかったんだ…」
やはり、ブルーだったんだ。
フィシスが彼の力を受けてミュウとして生きているのなら、彼女の中にもブルーがいる筈、なかなか記憶が戻らないのを「大丈夫」だと言ったフィシス。
彼女が「僕が何を選ぶのか見てみたかった」などと言う理由だけで、あんな事をする筈が無いと思っていた。
きっと、彼女は機会をずっと待っていたんだ。
実験体と生まれ、ブルーに助けられた身。そして、後悔の中、彼を失った。
彼女は何も言わずに、ただ優しくずっと僕を支えてくれた。
それは、長い間、辛く苦しかっただろう。
そして、そうしてずっと待っていた。
ブルーに恩返しが出来る時がくるのを。
僕の中の記憶を消し、僕の中の彼に託した想い。
これで、彼女の中のブルーも思い出になってゆくだろう…。
「辛かっただろうね…」
彼女が下した決断を、僕もしなければならない。
そう、それは。
僕も思い出にしなければならない時が来たんだ。
続く
<人物>
ジョミー ノア副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
ジョミー 本当はジョミーはクローンではない(タイプイエロー)
『君がいる幸せ』 Missing-link編 「伝えたい言葉」 十五話
ジョミーは暫く笑った後で、
「もう君の答えを聞かなくてもわかるような気がするよ。答えは出たかい?」と聞いた。
「はい」
ブルーはジョミーを見て明るく答えた。
「僕を殺せる人間は、力のバランスを考えたら、ソルジャー・トォニィが相応しいと思う。だけど、僕は、僕が死ぬ時に最後に見たいのは彼じゃない。だから…」
と、少し言い淀んだ。
「わかるよ…その気持ち…」ジョミーが同意をする。
「…僕は…ジョミーがいい」
「それは…」
どっちの?と言いかけるジョミー。
それをにっこりと笑って受け止めたブルーが言う。
「二人のジョミー」
「あっは。それは…」
ジョミーがブルーの顔を見たまま笑い出す。
「ブルー。それって、とっても、君らしいね」
笑うジョミーを見つめ、真剣な眼差しを浮かべたブルーが聞く。
「ジョミー。僕はあなたをずっと探し求めるように出来ている。そうなんですよね?」
「そうだよ、でもそれは、僕が、そう彼(ソルジャー・ブルー)の中にそう刻み込んだからね…」
「だから、僕は彼と同じようにあるべきだと望んでしまったんだ。それが、僕らをタイプブルーの運命へと進む事になったと、それは、ジョミー。あなたが言うように『悲劇』だと思うんだ。でも、それをあいつに、ジョミーに言ったら「僕はそうは思わない。これは悲劇なんかじゃない。僕たちの、ただの運命だ」と答えたんだ」
「タイプブルーのそんな力を持ってしまった者の『運命』はあるが、それを『悲劇』だとは思わないと、彼は言うんだね」
「運命も何も超えてゆこうって、この力はそんな、悲劇を呼ぶものじゃないって、これは『幸運』なんだって。僕たちには僕らでしか出来ない何かがあるはずだと言うんだ」
そんなブルーのまっすぐな視線を受け止めジョミーは答えた。
「二人は、それを求めて生きると言うんだね」
「だから、彼を選んだそれでは…いけませんか?」
「ううん。わかったよ。彼は強いな。彼なら任せられるかもしれないな。いい?ブルー。知っていて欲しい。僕やトォニィが言う何か起きるような状態はきっと起きない。殺せる相手を決めるなんて事は、僕たちタイプブルーとしての覚悟を言うだけのものなんだ。君に何かを出来る者はいない。君は誰かに心を操られるような事は無い」
「ジョミー、あなたになら…」
「僕に?それはありえないよ。それとね、ブルー。自分を殺す相手に選ぶという事は、自分をそれほどまでに信頼する人間を殺すという十字架を相手に背負わせる事になる」
「…あ…」
「残すつらさ。残されるつらさ。そこには何があれば良いと思う?」
「わからないな…」
「考えてみて」
ジョミーはにっこりと笑った。
「でも、それでも、僕になにか起きたら、二人で殺して欲しい。それなら、僕も、あいつもきっと辛くないし…」言葉に詰まるブルーだった。
「わかったよ。さっきの問は…次までの課題にしておこうね…」
と、ジョミーは笑った。
「ジョミー」
つられるようにブルーも笑う。
「しかし、ずいぶん我ままな願いだね。二人で殺してなんて、本当に君らしい」
「違うよ。ジョミー。僕だからじゃない。これはきっと本体も…ソルジャー・ブルーも同じ事を聞かれてたら、そう言うと思う…」
「ソルジャー・ブルーも?…確かにそうかもしれないね」
ジョミーが思い出したように少し考えながらこう言った。
「ねぇ、ブルー。もう一つ聞いていいかい?あの時、どうして「僕を忘れろ」と言ったの?」
ブルーがハッとしたようになり、顔を逸らした。
そして、小さく息を吸うと再び顔を上げた。
ゆっくりと、ジョミーを見つめた。
「僕はジョミー、君を望むんだ…」
ソルジャーズのブルーがジョミーの事を「君」と呼んだ。
それだけで、ジョミーは心が騒ぎ出した。
僕はブルーを見つめ、何も言えなくなった。
「ジョミー」
さっきまでより少しゆっくりと、そして、優しい声でブルーが僕の名を呼んだ。
あの優しい声だ。
僕を呼ぶ、あの優しい声。
時間が戻ってゆく気がする。どんどんと過去へ。
それに流されないようにジョミーは両手にぐっと力を込めて握った。
「…それは、僕が、君に植え付けてきたものだ。だから、僕はそれを、その僕を求めてしまう気持ちを取り除こうって言ったじゃないか。だから…君はもうそれで苦しむ事は無い…」
「この気持ちを取り除く?そんな事出来るはずがない。君は僕に暗示をかけてそう思わせるだけだろう」
「いいや。出来る」
「出来るはずがない…」
「僕には出来る…だってそれは…僕が」
「だって、そうだろう。こんなにも深く根付いているものを取るなんて出来ない。これは…誰にも、そう、君にも取れないし、消せやしない。僕が消させやしない」
ブルーが強い瞳でまっすぐにジョミーを見返す。
「ブルー!ちがう。それは…」
ジョミーは思わず声を荒げた。
「だから、それが、貴方の重荷になってしまって…過酷な運命へと歩ませてしまったんだ。だから、僕は、それは、僕の責任なんだ。その気持ちは僕が…与えた。ミュウとなり、運命を生き抜き。そして、いつか生まれてくる僕を追えと、探し出せと、過去に行った僕が貴方に植え付けたんだ。だから…」
「ジョミー。それを…僕が苦しいと言ったかい?」
ブルーがじっとジョミーを見て、にっこりと笑った。
「…!…」
「君を求める事、それを、僕が苦しいなんて思うはずがない…僕自身がそう願い。僕がそう求めて、追ってきたのに…それが苦しい筈がない」
「…僕は…僕は貴方と…地球へ行きたかっただけ…。いつか…あの山の頂きに立ち、あの風を感じてみたかっただけ…だったんです…」
「僕も見たかった。君とね」
じっと見つめ続けるブルーの視線から逃れるように下を向いたジョミーが、ブルーの両腕を掴んで苦しげに言った。
「…ごめん。クローンのブルー。もう…止めて。僕は…もう…」
うつむいたままのジョミーを見つめてブルーは答えた。
「ダメだ。ジョミー逃げないで。溢れてくるんだ。彼が聞いて欲しいって言うんだ」
「これが、君たちを傷つけた僕への罰なのか?」
「いいえ。いいえ。違います。罰じゃありません…彼は聞いて欲しいだけ…なんです」
「…ブルー」
ブルーの腕を掴んだジョミーの手が小さく震えていた。
「…わかった。ブルー。これが貴方の言葉なら…僕は全てを受け止めないといけない。だから…ここから逃げても後悔をするだけだ…もう、逃げないから…ちゃんと受け止めるから…」
そう言って顔を上げたジョミーの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「こんな形で君に伝える事になるなんて…僕はどこまで諦めが悪いんだろうね」
ブルーが笑う。
「それは…それが貴方が貴方だからですよ。何百年も一人で待つなんて…とても出来ないでしょう?でも、貴方も随分な天邪鬼ですね。「忘れて」は「忘れないで」…だなんて誰も思わないですよ…」
「君に忘れて欲しくて、忘れて欲しくなかったんだ…」
やはり、ブルーだったんだ。
フィシスが彼の力を受けてミュウとして生きているのなら、彼女の中にもブルーがいる筈、なかなか記憶が戻らないのを「大丈夫」だと言ったフィシス。
彼女が「僕が何を選ぶのか見てみたかった」などと言う理由だけで、あんな事をする筈が無いと思っていた。
きっと、彼女は機会をずっと待っていたんだ。
実験体と生まれ、ブルーに助けられた身。そして、後悔の中、彼を失った。
彼女は何も言わずに、ただ優しくずっと僕を支えてくれた。
それは、長い間、辛く苦しかっただろう。
そして、そうしてずっと待っていた。
ブルーに恩返しが出来る時がくるのを。
僕の中の記憶を消し、僕の中の彼に託した想い。
これで、彼女の中のブルーも思い出になってゆくだろう…。
「辛かっただろうね…」
彼女が下した決断を、僕もしなければならない。
そう、それは。
僕も思い出にしなければならない時が来たんだ。
続く
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