「オンラインな彼女と僕とリアルマネー」
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さて、新PC つぼみ の話に行く前に補足を少しします。
ここから先は他のPCがぞろぞろと登場する為、表記を変えます。
たとえば、佐藤くんのキャラの菓子ちゃん。と、紹介してゆくと、氏名ばっかりで、しかも性別がどっち?と、ごっちゃごちゃになってしまう可能性が大なのです。
ですから、
使用キャラが女でもリアルが男なら苗字のみで記します。
同じように、使用キャラが男でもリアルが女ならば、名前で書きます。
なので、前回登場した「西園寺さん」は「はるか」となります。
自分的に彼女は苗字表記をした方が、しっくりくるのですが…。仕方ありません…。
では、再開です。
まさみが作った次のキャラの名前は、つぼみ。
この時点で、僕がゲームを始めてもう四ヶ月程になっていたので、その頃には、僕はまさみ以外の人とも遊んでいました。
まさみがころころPCを変えるのは反対だったが、僕の最初に作ったPCは育て方の配分を適当にやったので、次第に使いにくくなってきていました。
そこで、職業を変える事にしたのですが、このゲームでは現金を使わないと簡単に職を変えれなかった為、前に作ったPCのレベルを上げして、新たにメインとしてやってゆく事になりました。
そんな時、インする時間が似ていたのか、はるかとは意外に早く会えた。
「ガンナーを作ったのでよろしく」
新PCの紹介をして、今度一緒にダンジョン行く約束をした。
平成ライダーをまだ見てないの?と注意されつつ、出勤までの短い時間を過ごした。
まさみは深夜遅くまでインしているので、朝方は居ない事が多かったから、僕はささやかな「秘密の時間」が持てた事が嬉しかった。
やがて、僕のまわりで、はるかのフレと、そのフレ。という繋がりで友人が増えていった。
もちろん、まさみ(つぼみ)のフレとも仲良くなったりしていたが、段々、はるかの方のフレ達と遊ぶようになっていった。
同じ事をしているのに、つぼみには悪いが、はるかのフレ達の方が会ってて気が楽だった。
何故なら、現金の使い方が違っていたのだ。
オンラインゲームの課金には色々あるけど、ここでもそれなりに使わないと遊べないような部分はあった。
つぼみが入ったコミュのリーダーは女性で、あかね。
あかねは、あやかと言うPCと良く一緒にいた。
二人はリアルでも友人であると後で聞いた。
この二人からは、課金している感じがしていた。
僕は、あかねのコミュにサブPCを入れて、僕自身はレベル上げを手伝ってくれた人の所に入った。
そこも、リーダーは女性で、名前はしおり。
彼女からも、課金している感じがした。
リアルマネー、現金を使えば、良い装備や武器が手に入るのは、当たり前だ。
別に僕は現金を使って遊ぶのが悪いと言っているんじゃない。
皆、大人なのだから、自分の使える範囲内で遊ぶなら問題はないのだ。
が…。
この頃のまさみ(つぼみ)は、仕事が終わってからずっと深夜まで居て、一日六時間くらいインしていた。
そして、課金もどんどん増えているように見えた。
「課金してるよね?」
と聞くと、していない。と答えていたが、ある程度以上、使っているように見えた。
だけど、彼女はその頃は、あの先輩の居る工場を期間終了で辞めていたのだった。
彼女はその仕事が無い間はずっとゲーム内に居た。
何日も何時間も…。
やがて、僕の心配があたる。
「お金がない」
と言って、僕に無心してきた。
「もう家族には頼めなくて。収入が無いから、食べていけない。ゲームに使わないから」
お願いされて、仕方なく僕は彼女に五万円を送金をした。
ゲームに使わない訳がないと思いつつ、僕はその言葉を信じたかった。
しばらくして、コミュの関係で知り合ったつぼみのフレ、高原と京極と僕もフレになった。
二人はリアルでの友人で中学か高校が同じらしかった。
そのせいか、この二人も一緒に居る事が多かった。
彼らはゲームセンスも良く、二人のPCのキャラバランスも良かった。
だから、危なそうなダンジョンも二人でこなして行くのが見ていてとてもカッコよかった。
つぼみと僕もリアルフレだし、向こうもそうなら丁度良い。と、この四人で遊ぶ日が多くなっていった。
この頃の、つぼみはPTを組んでいる時に他のフレとチャットをする事を嫌っていた。
「PT内で黙っているのって面白くない。話さないならPT組む必要がない」
と会話に加わらなかったりするのを怒っている事がよくあった。
「つまんない」
「寂しい気分になる」
と言うのだ。
それはわからなくもないが、他のフレからチャットが来てもそっちとは話さずに、ずっと何かしゃべってろ。と言うのか?
現実だって、会話は止まる事はある。
そしたら、そこにある店だったり、車だったり、何もなかったら友達を出したりして会話を進める事も出来るけど、そこで初めて会ったようなのが居るPTで何を話せと?
はるかのようにイキナリ「平成ライダーを見ましょう」と言う度胸は僕には無かった。
「勝手にゲームの話題でも話していればいいじゃん」
と思う日々が続いていたのだった。
そんなある日、この四人で居るとつぼみが誤爆をしたのだ。
誤爆とは相手の違うチャットを他の人にしてしまう事だ。
彼女はPT内ではオープンな会話にして。と言いながら、PTで僕以外の人とチャットをしていたのだった。
それこそ、勝手にゲームの話をPT内でしていた訳だ。
流石に、やっぱ、これは寂しいかも。
って気分になった。
それから何となく、彼女がなついてくるようになった。
現実の言い方で書くと、べたべたしてくる感じだ。
ただなついてくるだけじゃなく、何となく会話がエロいのだ。
「ねぇ、ねぇ」
と言って、くるっと回るモーションをしておいて
「いま、パンツ見えたでしょ?エッチ!」
と言ったり、
……まぁ、そこは許そう。
会話に ねぇねぇ、が増えて、
「だってぇ」「だからぁ」とかも増え、全然使っていなかった顔文字の「ショボン」とか「シクシク」も良く使うようになっていた。
「お願ぃ」や「何々してくれるぅ?」とかも増えていった。
僕との現実のメールで
「だからぁ」などを使ってきたので、
「普通に「だから」でいいじゃん。高校生の女の子とメールしてるようで嫌だ」
と返事をした俺って堅物過ぎ?
彼女とはもう六年も友人をやっている訳だぜ。
本当の女子高生ならそういうメールでも全然構わない。
だが、彼女は、いい大人なのに、今更、そんなメールにどう返事をしろ言うのだ?
そう、その頃の彼女は、高原、京極、それと他のコミュのリーダーの林、そして、何故か僕を落とそうとしていたのだった。
そしてその本命は、高原だった。
彼、高原は会話が上手くて、ちょっとHな事を入れてくる面白い人だった。
京極や林は会話が堅いから、つぼみの会話にエロが増えたのは、高原の所為だろう。
そんな、ある日。
高原とつぼみと僕の三人でいる時。
高原が、PT会話ではなく、フレでの会話で僕に。
「つぼみちゃんを、取っていい?」
と、聞いてきたのだった。
まずそれを聞いて最初に思ったのは、取るも何も、僕のでは無いし。だった。
けれど、ここで遊ぶだけなら、こんな事を僕に聞いてはこない。
だから、これは、現実も意味するのだろうな。と、思った。
現実で彼女はフリーだ。
僕が彼との事を反対してもしょうがない。
僕は
「いいよ。かまわない」と答えた。
こんな数字の羅列のPCに、本当に恋が出来るというのなら。
それを見せてもらおう。
と僕はその時、思っていた。
つづく