君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

☆ご案内☆

☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

「海を見たかい」 四話 桜咲き、桜舞う

2012-07-20 02:19:24 | 海を見たかい 秋月海 編 (真城灯火)

(人物紹介)
東京の大学に無事合格。人以外のモノが見える大学生 秋月海
ひょんな事から海の式神となった双子妖怪?     ミソカとツゴモリ
能力は高いが見えなかった祖父           秋月コウジロウ
前回登場、いきなりナンパ?してきた霊媒体質女   春野美津子



  「桜咲き、桜舞う」



 「桜、咲いたなぁ」
 
 やっとこの春、東京での生活が始まる。

 引越を終えた翌日、父親を見送った帰りに俺は高台にある公園に寄った。
 そこで咲き始めの桜を見ていた。

 まだ少し肌寒かったが日差しは心地よかった。
 桜は好きだった。
 祖父の家の桜を残したのもその所為だが、あの桜が咲くのはもう少し先だろうと思っていた。
 そんな、まったりとした空気を破ったのは、少し高い女の声だった。

「あれ?秋月くんじゃない?どうしたの?」
 振り向かず、返事もしないでいると、ずんずんと側に来て、
「あ、花見?ここの綺麗だよね。まだ少し早いけど…」
 と、隣に立った。

 彼女の名は、春野美津子。
 三日前の朝、駅前の交差点で「俺の後ろに何かが見える」と呼び止めた霊媒体質の女。 彼女のまわりは、今日も変なモノで賑やかだった。

「春野さんは会社は?」
「今日はね。休みだったけど急用でねぇ…今、帰り」
「ふーん」
と言って俺は何も無い春野の肩を手ではらった。
「え?桜?もう散ってる?」
「ん、ああ」
「…この前話を聞いてくれてありがと」
「いえ、俺は、別に何もしてない」
「私が霊を寄せ付けちゃう体質で、視えるのはその所為なのはわかったわ」
「……」
「それで、君は知り合いに霊能者がいるんじゃなくて、君がそうなんだよね?」
「…どうして、そう思ったの?」
「今もだけど、初めて会った時も君が触ると肩こりが軽くなる気がするの。何かしてくれたんでしょ?」
「…別に実害が無いのだけどね。そうだな、あんたのドジが少し減るくらいかな?」
「私ドジじゃないわよ。それより雲行きが…雨が降りそう…。どこか行く所?」
「んー、また駅の不動産屋に。父さんの書類を届けに…」
 と、言っている間に、少し降ってきた。

 俺達はあわてて駅に向かって坂を下った。
 それでも、駅に着く前に本降りになってしまった。
「散らかってるけど、ウチに寄ってく?傘貸してあげる」
 と、春野は駅の手前を曲がった。
「え、春野さんちって駅の向こうって言わなかったっけ?」
「駅の向こうじゃない?」
 ここをどっちから見て向こうって言うんだよ。
 そう言われたら普通、線路を越えた向こうだって思うだろ?
 ここじゃ、駅の横か側のが合ってる。
 と思っていると、中型のマンションに着いた。
 入り口に郵便受けがあり曲がった所にエレベーターがある六階建てのマンション。
 その三階。

 付いて来てしまったが、ほぼ初対面の女性の部屋だ。
「入っていいよ」
 と言われても、玄関の土間から上がれずにいた俺に
「はい」
 とタオルを渡して、遠慮しないの。と言った。
「お邪魔します」
 入ると部屋はキッチンと奥に二間あった。
 別に部屋は散らかってはいなかった。
 春野はインスタントのコーヒーを出してくれた。
 そして、俺が座ったテレビの前の小さなテーブルの横に座った。

 ここで俺はこの春野という女を改めて見たのだが、今日も前もニットの服を着ている。
 前は白だった。
 今日は薄い黄色のニットのセーターだった。
 そこで思った。春野はスタイルが良かったのだ。
 胸が大きい。
 気がついてしまうと、目のやり場にこまってしまった。
 俺はショルダーバッグから携帯を取り出し、携帯を見てごまかす事にした。

「あの、秋月くんってちょっと呼びにくいから、変えていい?」
「え、はい。いいです」
「秋月で、あっくん。んっ…と、やっぱり、カイくんかな」
「んじゃ、俺からはハルさんでいいですか?」
「春さん?おばさんっぽいわね」
「…だって、俺、春野さんのおばあちゃんを呼んでるもん」
「おばあちゃん?」
「春野さんの守護霊。春野さんのおばあちゃんだよ」
「そうなんだ。それは自分じゃ見えないんだね…残念」
 とあたりを見回す春野。
「すごく優しい人だね。さっきは部屋に入れ入れって言ってた」
「今は、何か言ってる?」
「ううん。必要ないとしゃべらないよ」
「ふーん」
「いいなぁ、おばあちゃんと話せて。あ、ねぇ。カイくんは、私とそういう話が出来て嬉しい?」
「まぁ、普通は話せないから楽だとは思うけど…やっかい事も多いから…」

 いつもならこんな事は俺は言わない。
 理解してくれそうな人であっても、興味本位に見るだけなら話してやる必要はない。
 面倒なだけだ。
 話だけ聞いておいて、それで何かあったら、それを俺の所為にされるのは不愉快だ。
 なのに、何故、この春野には話してしまうのだろう。
 ハルさんの所為かもしれないな。

「カイくん。私も迷惑かけちゃうかもしれないけど。私はカイくんと会えて良かったと思ってるわよ」
「肩こり治るし?」
「違う。違う。あのねぇ…」
「何?」
「私、そういう話が大好きなのよ!」
「………」
 なんとなく、俺の事を嬉しそうに見る時があるなと思ったのはそういう事だったのか…オカルトが好きなんだ。

「…で、何か聞きたそうだね…」
 と言うと、
「えへへ、聞きたい事があるの。いい?」
「優しいおばあちゃんに免じて、聞いていいよ」
 と答えると、
 彼女は奥の部屋からノートを持ってきてメモしながら
「あのね、あなたって陰陽師なの?」
 と聞いた。
「違うけど、俺が視えたりするのは血筋だからだよ」
「秋月家って古いの?」
「歴史はあるかな本家はね。俺のとこは分家。普通の家庭だよ。祖父と両親の4人暮らし」
「分家。ってなんかいいわね」
 何がいいんだか…。
 本家、分家なんてどこの家もあるじゃないか…。
「本家は大きかったけど…小さい時に行ったきりで覚えてないな」
「どこにあるの?」
「群馬」
「へぇ…、そういえば、私の高校にも何か霊が見えるっていうのがいたわ。彼なんていったかな…彼も確か群馬だったような…いつもあだ名だったからなぁ…えっと、アルバムは…」
 と奥の部屋に行く。春野。
 それを追って俺も入った。 
「あ…ちょっと、待っ…」
 と、2人同時に言った。
 春野は入って来ないで。だったけど、
 俺のは入りたくない。だった…。
 勝手に入った俺が悪い。
 だけど、だけど、この部屋は………。
「春野さん。御札、貼り過ぎ!グッズも集め過ぎ!古いお札はお返しして、水晶はパワーがあり過ぎるから普段は布でも被して…」
 頭がくらくらした俺はその部屋を出た。
 ハルさんが俺に見せたかったのはこれか。と思った。

 これじゃ、彼氏出来ないはずだよ。
 と俺が思っていると
「あ、痛った。血が出てるー」
 と、春野が部屋から出てきた。
 見ると小さくプッツと指先から血が出ていた。
「何か刺したの?」
「うん。アルバム探してたらピンバッジがあってそれで…」
 と言いながら絆創膏を探す春野。
「俺、持ってる…」
 バッグから出して指に貼ってやった。

 やがて、雨は小降りになったようだ。
 春野さんに傘を借りて俺は坂を下りて駅前の不動産屋に向かった。
 書類を渡し、少し話をして不動産屋を出る。

 雨は小降りだがまだ降り続いていた。
 外は薄暗くなりかけていた。

「春野さん?」
 俺は、坂を上がってゆく小さな人影を見つけた。
 傘は持っていない。
 不審に思い俺は後を追った。
 彼女は昼間の公園に向かっていた。

「春野さん」
 もう声は届いているはずだ。
 なのに彼女は振り返りもしない。
 何者かが彼女を引っ張っているのだ。
 さっきまで何もそんな気配は無かった。
 こんな強い気配は無かった。

 俺が何かを見落としていたとしたら、あの部屋。
 何か、何かがあったんだ。
 ハルさんはそれを俺に見せて、孫娘を助けて欲しくて俺を呼んだんだ。

 これは、戦闘になる。
 俺はそう思った。

「ツゴモリ。頼む」
 俺達は春野に追いついた。
 彼女は公園の真ん中に立っていた。
 俺達も公園の中に入った。
 平日の雨の夕方、まだ桜も咲き始めたばかりの小さな公園には誰も居なかった。
 好都合だ。
「暴れていいぜ。ツゴモリ」
「了解」
 ツゴモリが公園全体に気を張り始める。
 俺は春野を確保しに走った。
 ヒュッと何かが飛んできた。
 石だった。
 一つ目は避けたがすぐにきた二つ目は避けれず額をかすった。
 右目の上を切ったようだ。
「カイ!」
 俺をツゴモリが呼ぶ。
「ツゴモリ。正体はわかったか?」
「…獣だ。犬みたいな大きな…」
 そう言いながらツゴモリは剣を抜き、敵を目で追いながら距離を取っている。
「狼?」
 なんでそんなモノが。
 俺は春野さんの腕を掴んだ。

 その時、
 低いうなり声と共に
「その女は俺のだ!」
 と聞こえた。

「…話せる?」
 考えても今は意味はない。
 とにかく、今は俺達はこの場から逃げなくてはならない。
「春野さん!」
 意識がはっきりしていないようだった。
 呼んでも戻らない。
「僕が支えるから、かつげ」
 とツゴモリから指示がくる。
「ヤツは?」
「そこの桜の下」
 俺はポケットから懐紙に入った塩と携帯を取り出し黒く蠢くヤツにぶつけた。
 当たった瞬間、携帯から電気がスパークしたような光りが出る。
 光りはヤツの影を地に編み込む。
 俺は春野を担いで公園を走った。
 ツゴモリは俺と反対にヤツに向かっていった。
 俺の背後で剣と牙がぶつかり合う音がした。
 その音を聞きながら俺は公園を出た。
「ツゴモリ出ろ!」
 俺はスマホから俺の携帯を鳴らした。
 鳴った瞬間、携帯は燃え上がった。
 その炎と一緒に、獣はうなり声を上げて消えていった。


 多分、これで終わりじゃないだろう。
 担いでいた春野の体重が元に戻る。
 俺はあわてて彼女を下ろして、支えた。
 しばらくして雨が止む。
 彼女の意識も戻った。
「ああーーー」
 と、彼女が声を上げる。
「傘が、カイくんに貸した傘が浮いてる!」
「……」
 俺はツゴモリに傘を持ってもらっていたのだった。

 俺はそのまま何も言わずに、傘を閉じると桜の下に行って携帯を拾った。
 もちろん携帯は死んでいたが、桜は無事だった。

 俺が何も言わないでいるので、春野が
「私の部屋に行きましょう。怪我してるし」
 と言った。
 俺達はそれに従った。

 部屋に戻ると、救急セットで春野が手当てをしてくれた。
 俺は物凄く疲れていた。
「ツゴモリ、バッジを潰して…」
 と頼んでからもう一回
 名前を呼んだ気がするが、何で呼んだのか覚えていなかった。
 そして、「もう、寝る」と言って俺は寝た。


 当然、翌日は春野宅で目覚める訳だが、
 
 それまでは、俺は桜が舞う中にいる祖母の夢を見ていた。