迷宮映画館

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シリアナ その2

2006年03月29日 | さ行 外国映画
長年、潜入捜査をしてきたしょぼくれてきたCIA職員。私には、どこにでもいる疲れたサラリーマンにしか見えなかった。
子供を失った経営コンサルタント。仕事一筋だったわけではないのだが、偶然の事故が産油国のプリンスに引き合わせてもらった。
理想に燃えるかのプリンスは、自分の国を何とか普通の国にしたい。彼の思いはそれだけ、でもソレが最大の思い。なのに、超産油国の王は、旧態依然とした人でアメリカの思惑が通じる者でなくては困る。これはアメリカの思い。
有能な若手法律家。きっと正義を貫く強い意志を抱いて法律家になったと思う。酒もタバコもやらないスノッブな黒人。好むと好まざるとにかかわらず、彼のやろうとしている合併の仕事からは、さまざまな膿が出てくる。何をそんな肩肘はってんだよ、と飲んだクレの親父の目が言っている。
よい暮らしをしたい、それだけを願って祖国をあとにしたパキスタンの青年の夢を削ぐのに時間はかからなかった。

まるで違う世界の出来事なのに、何かがつながっている。世界が向かおうとしているのは一体どこなのだ。誰が正しくて、誰が間違っているのか。自分が今こうしていることは、本当にただしいことなのか。答えを探せないまま、時間は動いていく。

難しい、話がとんとん進む、観客置いてきぼり、等々の意見がある中、まず鑑賞。頭の中を整理しながら見ていかないと、やはりちょっとの隙においていかれそうになる。しかし、それが現実の世界なのだ。自分一人が世の中を生きているわけではない。いろんなところにアンテナを立て、自分が置かれている状況に一体どんな意味があるのか、考えたことがあるだろうか。さまざまなことを知ろうとしたことがあるだろうか。

ひとつの公開された映画なのだから、いろんな見方があっていいと思う。さっぱりわからなかった。だからわからないままでいい。いや、わからなかったからこそ、何とか深く知りたいと思った。すごくよくわかった。勉強になった。世の中にはいろんな思惑がある。陰謀に満ち溢れている。見る人の受け取り方はさまざまでいい。

一度ではどうしても納得がいかないところがあって、私は2度鑑賞した。非常によく見えた。一度ではわからなかったことが、よくわかった。そういう見方でもいいと思う。それぞれ見る人によって受け止め方が違う映画だ。

しかし、この映画を作った意図をわからないままではいけない。何かが世界を動かしている。そのことを自分達は知らないといけない。それは食べ物でも、水でも何でもいい。考える材料はそこいらにある。そしてこの映画が取り上げたのは、20世紀の魔法の水、『石油』だ。十二分に石油を使い、豊かな、豪華な、便利な世の中が出来た。私達はその恩恵をたっぷりと受け取った。そして今、そのつけがたっぷりとまわってきている。なのに、相変わらずのほほんと生活している私達がそこにいる。二酸化炭素なんぞ、じゃんじゃん出してしまえと言ってる国がある。『石油』だけは絶対に手放さない。それには大きなつけがついてまわるはずなのに、払いたくない国のごく一部の人が世界を牛耳っているのかもしれない、という事だ。

何度もいう。映画を受け止めるのは個々人の自由なので、どう捉えても構わないが、若干の背景を知っているといないとでは大きな違いになる。知っておくべきは、イスラム教徒についてと、メジャーについて。

我々はイスラム教徒というと、十把一絡げにしてしまいがちだが、ソレは大きな間違いだ。イランとイラクでは、民族も違えば言葉も違う。同じイスラム教徒でも、宗派の違いが大きい。お互いの対立は長く、それぞれのプライドは山のように高い。同じイスラム教徒の中でも、格差が生まれているという現実もある。

石油を掘るにはものすごいコストがかかる。わずかな資産では到底無理だ。石油会社の規模は計り知れないくらいに大きい。掘って、貯めて、精製して、送って、用途別に作り直して、という作業をするには、まさに『メジャー』と呼ばれる大会社でなければならない。しかし、この国際石油資本が動いてくれないと、世界中が停滞してしまうのも事実。

この辺のことを頭に入れておいて見ると、少々理解が深まるのではないかと思うが、その辺のことを知っている人前提に見せているのか、そうでないのかは見る人の勝手。でも見る方は若干の覚悟と、理解しようという気概が必要かもしれない。それだけの見せる力のあった映画だった。

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6 コメント

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実に興味深いw (oguogu)
2007-08-25 12:45:37
 TB&コメントさせてもらいますね~
ふむふむ・・・読ませてもらいました。
この映画でこんな知的な発言ができるのは羨ましいなぁw
私なんか
悪い→アメリカ
良い→石油王の長男
と言う図式しか成り立たなかった・・・Orz
難しい話をし出すと、ぼろが出るとイヤなので、この辺にしておきます(爆
>oguoguさま (sakurai)
2007-08-25 21:48:19
ありがとうございます。
コレは本当に見た甲斐のあった映画でしたね。
監督の「見ろ!」という挑戦に、立ち向かうみたいな感じ。作り手と見る方が、真剣勝負をしたような思いでした。
アメリカの汚さとともに、強さと老練さと、子どものようなわがままさ。自分がやりたいようにするためには、こういうことをやってるんだよ、ということが嫌というほど見えました。
まあ、自分もその恩恵を蒙っているわけですが、それを分かりながら何も出来ない自分が歯がゆいです。
おじゃまします (ピロEK)
2009-01-11 11:01:50
おじゃまします。
シリアナの記事拝見させていただきました。
私は2006年半ばに鑑賞。記事にしたのが2007年4月だから…ブログ記事にするのに随分産みの苦しみがあった映画。
何度も鑑賞して、インターネットでそれなりに調べて記事にしたみたいだから(もうその頃のテンションは忘れましたが)、sakuraiさんと同じような思い(と、まではいかないか)を感じたのでしょうねぇ当時は。
まぁ私の場合「娯楽性は低い作品。1.5点」で締めくくっちゃってますけど。何度も観て、調べたって段階で製作者の意図どおりに動いている私ではあるのかなぁ(?)
TBさせていただきますので、私の拙い記事も読んでみてくださいませ。
では、また来させていただきます。今後とも宜しくお願いいたします。
>ピロEKさま (sakurai)
2009-01-11 15:28:07
あたしは、観客おいてきぼり映画ってのが、結構好きなんですよ。
作り手の気概を受け止められると、「やったーー」てな感じで。
それでもわかんかったのも多々ありますが・・・。
ちゃんとピロEKさんも作り手に乗せられているということで、「やったーー」ですね。
あれから3年くらいで、ずいぶん世界も変わってきてますね。それも痛感できる映画で、今の時点で、またいろいろと考えさせられます。
どうもありがとうございました。
たびたびおじゃまします (ピロEK)
2009-01-17 21:27:52
度々おじゃまします。

>あれから3年くらいで、ずいぶん世界も変わってきてますね。

最近「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」を観たのですが…
こちらは分かりやすい映画だったのですが、現代の世界情勢とどう照らし合わせて感想を述べたらよいものかがピンとこず、記事アップが難航している1本であります。
基本、観た映画はブログアップする方針な私なのでチョイ困ってます。

では、また来させていただきます。今後とも宜しくお願いいたします。
>ピロEKさま (sakurai)
2009-01-18 08:37:23
「大いなる陰謀」は、ご覧になったんでしたっけ?
あれとセットで見るといいかもですよ。
プラス「君のためなら千回でも」って、どんどん増えて行く。
「C・W・W」のとき、実際アフガニスタンではどういう状態だったのかが「君のためなら・・・」で、そして今のアフガンが「大いなる・・」ということで網羅しちゃってください。

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