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チェ 28歳の革命

2009年01月09日 | た行 外国映画
革命の申し子、戦士として生きたゲバラの10年を、あくまで真面目に、あくまでもリアルに、真摯に撮った映画だった。
あまりのまじめな切り口に、少々拍子抜けの感も否めなかったが、ソダーバーグの思い入れも一緒に見えたような気がした。

エルネスト(ゲバラの名前)が、無謀にも南米大陸を縦断しようと、おんぼろバイクで旅を始めたのは1950年の22歳の時だ。純粋で、好奇心旺盛で、喘息持ちの爽やかな青年が、徐々に現実社会の厳しさを目の当たりにして、世界を変えたい・・・と思うようになったのは「モーター・サイクル・ダイアリーズ」で、見事に描かれた。

いったんアルゼンチンに帰って、正式な医者となるが、世界を何とかしなければ!という意志は変わらず、二度目の旅に出て、二度と故郷には帰らず、そのまま革命に殉じるまでが描かれる。

二度目の旅の途中で出会ったのが、のちにキューバを社会主義の国へと導いた、フィデル・カストロだった(このカストロを演じた役者さんが、カストロに激似で唖然でした・・)。

当時のキューバは、アメリカの影響を大きく受けた傀儡バティスタが政権を握っていたが、農民はとことん搾取され、プランテーションで作られるたばこやサトウキビは、大事な文字通りのドル箱だったわけだ。

そこで反政府勢力を組織したフィデルは、反乱をおこすが、捕えられる。しかし、国民に圧倒的な人気を誇るカストロを、抹殺することはできず、彼はメキシコに亡命する。ゲバラとカストロが運命の出会いをするのはこのころだ。

しかし、ソダーバーグは、その辺の劇的な邂逅も見せず、世紀のキューバの乗り込みもあっさり描き、じわじわと彼らがキューバに足を踏み入れていく一歩一歩も淡々と描くのだ。

そう、革命は地味で、辛くて、何も華やかなことなど起こらない。山道を歩き、ブヨに追われ、まともな食事にもありつけず、裏切るものも次々と出てくる。そういったことを何の虚飾もなく、ありのままに描いたのが、本編だった。

カストロの片腕でありながら、ゲバラは自ら前線に立ち、味方とともに、自分を惜しむことなく戦った。その彼の姿が、そのままに映し出される。まるで、ゲバラが乗り移ったかのように、デルトロの笑顔が、無性に眩しい。

「M・S・D」のときにも書いたように、彼には私心がなかったと思う。時として、時代が必要と思った人間が、その時、その場に登場する。まさに彼がそれだった。革命を必要としている国と時代に彼は登場し、そしてその役目が終わると、消えていく。

司馬遼太郎は、そういう人物を「花神」と呼んだ。花咲か爺だ。私はゲバラもそういった人物の一人だと思っているが、彼の越し方の前半はしっかと見た。

作り手の意図がそうであるように、後半を見なければ、この映画は完結しない。後半を待つ。

『チェ・ゲバラ 28歳の革命』

監督 スティーヴン・ソダーバーグ
出演 ベニチオ・デル・トロ デミアン・ビチル サンティアゴ・カブレラ エルビラ・ミンゲス カタリーナ・サンディノ・モレノ ロドリゴ・サントロ ジュリア・オーモンド

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Unknown (keyakiya)
2009-01-10 01:02:28
やっぱりきましたね。
この写真をみれば、ゲバラをみるしかないでしょう。
ゲバラが呼んでるで。
常に最前線で戦った戦士。
死ななくてはヒーローになれない。
憧れの人物です。
長生きするはずではなかった。
こんなはずではなかったのに。(ショボ)
>keyakiyaさま (sakurai)
2009-01-10 09:57:32
どんな作りなのか、まるで知らずに見に行ったもので、エンタメ性なし、虚飾なし、ひたすら真面目な作りで、こっちの居づまいも正してみないといけないような映画でした。
ソダーバーグの思い入れも感じるような。
やはり彼は時代が必要とした人物だったと思います。
そして、その役目が終わったとき、消えざるを得なかったような。
もし、ゲバラが長生きしてたら、今の世界をどう思ったでしょうね。
身体にこたえます…。 (mori2)
2009-01-11 12:49:02
昨日はTBだけいただいて帰っちゃいましたので、改めてコメントを。
実は吾輩は試写で「39歳 別れの手紙」も続けて
観たのですが、相当身体にこたえました(^^;。結構シンドカッタです。
どちらかと言えば、「39歳…」の方が内容的に
重くなってますので、後半になればなるほど
大変でした。
ソダーバーグ、真っ正面から撮ってます。
コレは気合入れて観ないといけない
映画でございますね。
どうもです! (sakurai)
2009-01-11 15:35:47
一気見はきつそうですね。
前半だけでも、かなりどどっときましたもん。
疲れました。
地味でしたねえ。
華やかさなど、かけらもなく、コツコツと前進して行った・・という風が、よく見てとれました。
後半の予告がついていたのですが、そっちは見知った役者さんも出ているようで、結構華を持たせたのではと、感じたのですが、重そうは重そうですね・・・。
後半も気合い入れて、臨みます。
こんばんは。 (はくじ)
2009-01-11 21:06:12
こんばんは。
確かに淡々と流れるので見ていて疲れるかもしれないですね。
個人的にはゲバラやキューバに興味あるので、
興味深く観ることできました。
今回の1部は次回作の2部へのプロローグ的な
感じです。
2部の公開が待ち遠しいです。
>はくじさま (sakurai)
2009-01-11 22:46:55
あくまで淡々としてましたねえ。
意識的なものも感じましたが、監督の思いも伝わっていました。
やはり、前編はこれから起きる劇的なことの前の静けさ・・と言う風にも見えましたので、全体の評価は、後編見てからにしないと。
こんばんは (ガエル)
2009-01-12 18:59:12
本当に淡々と流れてるように思いました。
見てて疲れましたが、2部は是非見たい気持ちになりました。
私自身地理的にも歴史的にもイマイチわかってなくて…。
でも、やはりゲバラは時代が必要とした人だったのだと改めて思いました。
>ガエルさま (sakurai)
2009-01-13 08:28:39
ガエル君の「モーター・サイクル・ダイアリーズ」の旅で、ゲバラは何かを見つけ、そして、この映画に至った・・・と言う風な感じに見えました。
淡々としてましたねえ。こんなに真面目な作りに意外な気もしましたが、監督の心意気も感じました。
後半が待ち遠しいです。
とら・こめどうもです (ひらりん)
2009-01-20 01:45:26
ストーリーはドキュメンタリーっぽかったので淡々としてましたが、
やはりチェの言動が一番のポイントでした。
カリスマ革命家と後々に言われる男の生きざま・・・
パート2も見逃せませんね。
>ひらりんさま (sakurai)
2009-01-20 08:35:01
もうちょっと劇的に撮ってくれても誰も文句言わないと思うのですが、やけに淡々としてましたね。
これ一本で、評価はできないので、早く完結したいですわ。

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