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祖谷物語 -おくのひとー

2014年10月15日 | あ行 日本映画
祖谷と言われても、どこにある地名なのかさっぱり知らなかった。四国は徳島県。日本最後の秘境と言われる所なそうな。当地山形にも、肩を並べられそうなところはあるような気もします。

その秘境と言われる所の、またそのまた奥と言えそうな所に住んでいるマタギのお爺。ある時、雪の山の中で、車の事故によって放り出された赤ん坊を助けた。四国でも雪が降るんだ・・・に、ちょっとびっくり。

その女の子・春菜と山の中で暮らすお爺の二人。沢の水をくみ、畑を耕し、動物を狩って日々を過ごす。学校に行くには、山を駆け下り、ひたすら歩く。「世界の果ての通学路」がここにもあった!途中にあるおばあの家で一休み。おばあは、せっせと案山子を作って、家の周りに置いている。学校が終わっても遊ぶとこもない。とっとと帰らないと、暗い山道、危なくってしようがない。

美しい自然に囲まれた、エコでナチュラルなやさしい暮らし・・・と言えば聞こえはいいが、不便この上ない。ちょっと手を抜けば作物は動物にやられ、現金収入もない。でも、人はなんとなく集まってくる。都会から逃げ出してきた青年。何とかなるだろうとやってきたのだろうが、それは甘い考えであることが早々に分かる。

永遠に続くかを思われていた山の暮らしは、その思いと裏腹に徐々に変わっていく。開発は進む。老人は年老いる。少女は成長していく。時は止まらない。動いて行かざるを得ない。お爺は一言も発さないまま、その生を終える。まるで山の一部に帰ったかのように。

ガラッと展開が変わって、春菜は都会にいる。研究所で汚染物水を除去する物質を作る研究をしている。長年の苦労が報われ、成功した・・・はずだった。しかし、企業側から圧力がかかり、研究は放棄させられる。蛇口をひねれば簡単に出てくる水。でも、それは浄化しないと飲めない。便利で不便。不便で便利。春菜が住むところは祖谷しかないのか。。。祖谷に帰った春菜は、開発によって一変した故郷と、一方で全く変わらない姿も見せる故郷を見る。

ということで、2時間50分!なかなか重量感のある、大作に仕上がってました。作ったのは、あの高校野球で名を馳せた池田高校の名監督、蔦文也さんのお孫さん。新進気鋭の蔦哲一朗さんとおっしゃいます。大学で映像を勉強されて、お仲間と作ったのが「ニコニコフィルム」というだそうですよ。あの「ニコニコ動画」ではありません。

フィルムにこだわり、フィルムだから!とか、フィルムならでは!とか、フィルムだからなあ~と言ったような視点で作られた作品で、奇跡の自主製作作品と言われてるのだとか。今だからそういわれるのであって、ちょっと前は、デジタルで撮った!って方が騒がれてた時もあったなあ~と思うと、ちょっとの間で時の流れをずいぶんと感じました。今じゃ、フィルムで撮る方が、絶滅危惧種なのだとか。

監督さんと、そのお仲間がいらっしゃって、舞台挨拶を聞かせていただきましたが、どっちかというとサークルのノリのような感じ。いい意味で。一人でもんもんと撮ってる・・というよりは、仲間がいて、ワイワイとやりながら、うまくいかないことがあっても何とか乗り切っていこう!みたいな。妙に肩に力が入ってない雰囲気が、いい作用をしたように感じました。



中央が監督さん。劇中の田中泯さんのマタギの扮装でございます。

高校野球を何十年も見続けてきた身としては、やはり蔦監督の!というのが気になるところですが、地元ではやはり名士。映画作りにもいい具合に地元の人が力を貸してくれたということでした。使えるものは何でも使わないと!次回作は、おじいちゃんのドキュメンタリーだそうです。

一番の見どころは祖谷の風景と、存在感半端ないお爺の田中泯さん!オーラが違う。その場の空気を一変させるような力を持ってるのではないでしょうか。すさまじさすら感じました。谷を眺めるシーンで、落ち葉がぶわーーっと舞い上がるところがあるのですが、それも偶然だったとか。人智を超えたパワーを感じたそうです。

いろんな都合で、都会編のところの話がはしょられたり、統一感がなかったりもしたのですが、そこはやむを得ないというか、これからに期待。交渉したら、すぐにOKをくれたという河瀬直美監督の演技がさすがにうまかった。彼女は女優でも十分やってけると思います。表現のしかたが、半端なくうまかった。

これからの活躍に、十分期待できる作品でした。

◎◎◎○

監督 蔦哲一朗
出演 武田梨奈 田中泯 大西信満 石丸佐知 村上仁史

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