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ふがいない僕は空を見た

2013年01月06日 | は行 日本映画
人間と言うのは、そんなに悪意に満ちたもんなんだろうか・・・と思ってしまった。小物の小悪人がうそうそ出てくる。高校生と浮気をしている主婦。高校生の分際で、主婦をとりこにしている男。その夫ときたら、情けないことこの上ない。姑はきっと息子を溺愛し、その孫をネコっ可愛がりすることを普通にできると思っていた。この時点ではまだ普通。

学校も悪意に満ちている。バイト先のコンビニも。ちょいと襤褸目な団地の住人に、自分のことしか考えないような輩がうじゃうじゃと。その中で唯一いい人、だと思っていたのに、なんてのもちゃんといる。

でも、それはほんのちょっとの悪意。誰でも持っている心の中の悪魔の声で、本当によくあることだ。しかし、そのちょっとした悪意が人を追い詰め、傷つけ、貶しめる。そんな悪意に満ち満ちてしまった世界で生きていかなければならない私たちのなんと生きにくいことか。。。

コスプレにはまった主婦、里美。と言うより、若い時から好きだったアニメから卒業できず、そのままファンでいると言った感じ。それが許されてる状況が今。イタイ、と言われてもそれも自由じゃん!と言える今の世の中だ。

そこにやってきた高校生、卓巳。日の高いうちに気持ちいいことしちゃう。こらこら!高校生!!情事ってやつにしちゃ、あまりにイタイタしい。ままごとみたいな情事だ。

高校生は普通に学校に行き、可愛い女の子に告られ、友達にそのことを嬉しそうに話す。ごくごく普通。その友達の良太は、借金に追われる母を持ち、認知症のばあさんを抱え、新聞配達に嫌みなコンビニ店長のもとで働き、差し入れの弁当を捨てる。別に施しは要らねえよ!なんて思ってるわけでもなく、なんとなく捨ててる。

里美は妊娠しにくい体で、さまざまな治療も行っているが、出来ない。姑にプレッシャーをかけられ、嫌みを言われ、人格を否定され、夫はそれをかばいもしない。夫にも責任がある・・・などと本当のことを言えば、半狂乱になる。

子供ってのは何なんだろう。そんなことを考えさせらる。そして、いろんな子供が出てくる。卓巳の母は助産師で、産院を開いている。いまどきのカン違いした妊婦さんが、「自然に産みたいんです・・」などと、これ見よがしにやってくるのをニコニコと受け流す。物語に出てくる人の中で、一番まともなのが、この産院の二人なよう。

痛い、本当に苦しい思いをして生まれてくる子供。小さな小さな赤ちゃんをその手で抱いた時、いとおしいと思わないわけがない。この子を守れるのは自分だけだ!と思う。思うとか、思わないとかの次元の前に、この手の中に命があるのだ。でも、子供は百人百様。こんなに世の中にうじゃうじゃ人がいるのに、同じ人は絶対にいない。それぞれが違う人生をゆだねられ、それぞれの道を歩む。

だれしもがこの子は幸せになって欲しい。まっとうな道を歩まないわけがない。悪意などかけらもない、豊かなさに満ちた人生を送るはず・・・・と思う。でも、そうならないのはなぜだ?悲しすぎるのはなぜだ?

リアルに辛すぎる良太は、母に「なぜ自分を産んだ・・・」と絞るようにつぶやく。人を愛しただけなのに、それは人妻で、その浮気が暴露され、世の中からほぼ抹殺される。妻を愛しているのに、うまくいかない。それでも、こんなに生きにくい世の中なのに、生きていく。悪意に満ちた世界でも、生きていく。なぜ?空がきれいだから・・・・・。それじゃダメかな。きっとそんなんだよ。世の中って。。。。

なんとも辛く、厳しく、世の中なめんじゃねえよっていう物語だった。監督のタナダさんとは「タカダワタル的」の時に山形にいらっしゃって、お会いしたが、若くてチャーミングで頭が良くて、絶対にこれから行くぞ!!と感じさせてもらった。いいぞお!作を重ねるごとに、じわじわと貫録が増してくるよう。今回の撮り方は、違う視点からの二度見が多かったが、ちょっと長かったかな。完全に別の視点で、もうちょっと簡潔でもいいような気がした、、、かな。

つらつら考えてみるに、諸悪の根源は里美かなあ。夫に愛されてるが、夫を好きではない。夫は自分を好きだが。。。。暇な主婦はろくな頃がない。あんたさえまともだったらこんな悲惨なことは起きなかったのに、と思うが、事件が起きなきゃ物語は始まらない。ぽこぽこ妊娠して、子供を産むのを苦労しなかった自分に語る権利はないかもしれないが、悲しい逃げ道だった。その複雑なキャラを見事に演じたのが、田畑智子さん。この人、年取ってから、複雑すぎていい。そして大胆。そしてペチャパイ。

永山君の高校生は、そろそろきついんじゃないかな~と思ったところ。でも、むっつりスケベの高校生って雰囲気がにじみ出てる。お見事だったが良太の窪田君。ちょこちょこいろんな映画でお目にかかってうまいなあ~と思っていたが、素晴らしいわ。贔屓にします。

「俺たちのいじめられっ子の遺伝子を持った子どもなんか生まれない方がいい・・・」という言葉が哀しすぎた。長い映画を観終わって、一番心に残ったのが、これだった。あとは気持ちのいいS○Xのあとに子供ができたら、最高だなあ~という心の言葉。とっても普通のことが、難しいこともある。

今まで見た出産シーンの中で、一番上手な助産だった。その辺の細やかさが、さすがタナダさん。

秘め事ってのは、大体が暗いところで行うこと。でも、浮気っていうよろしくないことだけは、太陽のもと!燦々と明るく輝く日の光のもとで行うんだなあ。これって神のいたずら?いや、悪魔のいたずらかな。

なんとももやもやの残る、すっきりしない作品だけど、素敵なHな映画だった。好きだわ。

◎◎◎◎

「ふがいない僕は空を見た」

監督 タナダユキ
出演 永山絢斗 田畑智子 窪田正孝 小篠恵奈 田中美晴 三浦貴大 銀粉蝶 原田美枝子

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6 コメント

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生きにくい… (ナドレック)
2013-01-09 00:22:03
生きにくい世の中でしょうか。私は漫然と暮らしているのでよく判りません。
結婚が両者の合意に基くのは当然としても、どうして離婚も合意しなきゃいけないんでしょうね。一方が離婚したいと思ったら、もう終わりのはずなのに。
離婚のハードルが高いのなら、結婚を段階的にした方がいいのか。それじゃ足入れ婚か。

慶一郎がしょうもないヤツのようでいて、本気で里美に惚れているのが切ないです。
>ナドレックさま (sakurai)
2013-01-09 18:05:51
実は私もそんなに生きにくいと思ってないです。それなりに普通に、うまく生きてるし。
好きな映画はがんがん見れるし。
ことさら、世の中を生きにくいんだ!としてるようにも思えなくもないです。
原作読んだのですが、慶一郎君は、ストーカーで、とんでもない奴だったようです。
いろんな女性をストーカーしてきて、里美も半ばストーカーだったのを、自分を愛してくれてるから・・で、結婚したようで。
その辺をぼやかしたのは、映画がうまかったなあと。
ナドレックさんもご覧になったようですが、私も「希望の国」を見てきまして、山中君の妙なうまさに感動してます。
Unknown (ふじき78)
2013-01-20 09:30:40
同じ映画を観て「ふがふが言いながら空を観た」じゃダメだろう、なんて思ってるのはやっぱり私だけなんだろうなあ。
>ふじき78さま (sakurai)
2013-01-20 21:01:32
空をふがふがいいながら見上げてると、ゴミ入ると悪いんで、口を閉じた方がいいかもしれないです。
しようもない時は、空でも見ましょう!
優しい映画 (kon)
2014-05-15 00:32:32
なかなかタイミングが合わず、やっと今回見た今作。文句のつけようがなく素晴らしい。田畑さん、よくやった。永山くん、えらい。そして窪田くん、あなたはやっぱり役者だ。うまくいかない日々を優しく見つめる目線が好きです。
>konさま (sakurai)
2014-05-20 20:50:33
これは田畑智子に尽きるような気がします。
すごい女優魂。
しかし、なんでこう悪意に満ちた世の中なんでしょね。
空はきれいなのに。。

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