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百合子、ダスヴィダーニヤ&監督トーク

2012年05月30日 | や行 映画
監督はピンク映画界にこの人あり!と言われる浜野佐知監督。いままで300本以上のピンク映画をとり続けてきた。その視点は女性ならでは!女性じゃなければ撮れないピンク映画である!と自負してやまない。その姿勢は一切ぶれず、自身がずっと映画を撮りたい!!と言う思いから監督になって、この日本という摩訶不思議な男社会の中で、どんな目にあってきたのか想像に難くないのだが、それでも断固撮り続けてきた意志の人。そんな彼女が撮った作品である。

ロシア文学者として後に大成する湯浅芳子。1896年生まれの彼女は、あの時代で、女性を愛する!ということを公言してきた女性である。芳子が出会ったのが中條百合子。1899年生まれ。17歳で作家デビュー。天才少女と騒がれ、当時は15歳年上の古代ペルシア語研究者の荒木茂氏と結婚していたが、それも行き詰っていた頃。

一目で惹かれあった二人は、どんどんとひきつけ合い、お互いにお互いを理解し、愛し合い、深め合い、高めあっていく。性別の一致だけがこの時代に相容れないもので、愛し合うもの同士には、なんら問題はない。

しかし、百合子の夫の荒木にとっては、青天の霹靂、大嵐、自分のあり方を根底から覆されるもの。何とこの荒木茂と言う人は、ものすごい研究者だったのだそうで、東大に荒木文庫という一角まで設けられているほど古代ペルシア研究では、第一人者だったのだそうで。。。

それが百合子にかかっては、完全駄々っ子。自分を捨てて湯浅に走った百合子に、しがみつき、付きまとい、何でも言うことを聞く!とかしずき、自分の感情をぶつけてくる。まあ、そりゃあきらめきれないし、わからないでもないのですが、自分は捨てられたなんて、絶対にダメ!!ベイビー、ベイビー!!!と、駄々っ子みたく、突進する・・・・。

で、この夫を演じた大杉漣が絶品そのもの!!超頭はいいけど、15も年下の女性にめろめろとなってしまって、恥も外聞もなくなってしまう。一心に突き進む姿が、滑稽なのですが、それを本当にいやらしく、あきれちゃうくらいの間抜けな感じを、見事に演じております。ここでの大杉さんが、この映画の大事なツボとなってます。いやーー、お見事。

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ここは監督さんから聞いた話ですが、若い頃ピンクにも出て、お活躍だった大杉さん。妻と最後の夜!!という濡れ場のシーンで、監督は「ピンクじゃないんだから、脱がなくていいから!」と言ったところ、本番に自ら脱いで、渾身のシーンになったとか。出来上がった絵を見て、大杉さんは「まったく、60のおっさんを脱がせるんだから!」と笑ってたそうです。
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結局は夫を捨て、共同生活に入り、その後ロシアに渡った二人。しかし、共産主義運動にのめり込んだ百合子は、あの共産党の宮本顕治と出会い、二人の仲は終わる。

百合子は戦中、夫とともに投獄され、そのせいもあってか、51年に没する。しかし、芳子はその後もロシア語翻訳家として活躍し、1990年、93歳で没した。

ということで、なんとも不思議な映画だった。実話であり、芳子の回想、思い出、百合子との愛の日々が綴られる。いままでほとんど、誰にも知られずに、まさかあの宮本顕治の奥さんの百合子がこんな生活をしていた・・・と言うのを憚って、なんとか隠そうとしてきた経緯もあるらしいのだが、宮本百合子の著作の中に出てくる登場人物が湯浅芳子であることを知った原作者が、彼女に会って、この話が出来あがった・・・と言うことだそうな。いろいろなるほど。

映画は、結構淡々と、二人の愛の軌跡が描かれるのだが、とにかくそこに割って入る恋敵(?)の夫@大杉漣がいいスパイスになって流れていく。毅然とした風情の芳子役の菜葉菜、百合子役のシンガー一十三十一さんが、なんとも不思議な味わいで、とっても大正していたのが面白かった。

見終わってからの監督のお話のバイタリティあふれるお姿が印象的だった。浜野監督と言えばピンク映画!と来るのだが、ただのピンク映画ではない。強い女性、絶対に男の監督では撮れないピンク、女性の視点ならではの映画を撮る!の気持ちよろしく、この映画もまさにそれ。女性でなければ分からない生きづらさ、でも生きて行く強さを表したかったと。それがまた山形の女性と見事にマッチ。



開口一番、山形の女性の力強いと。それは、生きて行く難しさをよーく知ってるから。そして百合子や芳子の辛さと私たちが共有している辛さ、難しさ。私たちはそのことを意識するしないにかかわらず、理解出来ちゃうのが悲しくもあり、矜持でもある・・と感じた。

原作に出会って、芳子の孤独と潔さに強く惹かれたと。大正、昭和初期と言う閉ざされた社会の中で、自分の気持ちを開放させ、信じる愛にまっしぐらに突き進んだ勇気の何が悪いか!それをかき消してきた日本と言う国に、物申したいと。

芳子は「孤独だけど寂しくはない」と晩年言ってたそうな。自分を貫き、己の信じる道を生きるためには孤独さえも引き受ける覚悟をそこに見たそうな。うーん、深いです。あの時代、男に依存せず、女性とかそういう世俗なものを超えて生きた二人をぜひ見てください!と言うことで、監督の思いを聞くと、見てよかった!!と思いました。

派手な映画ではありませんが、味わい深いです。よろしければ、ぜひともご覧になってください。レズ??と言うようなアレルギーなど心配する必要はないです。

「恋の罪」で一番インパクトあった大方斐紗子さんがチョイ役ながら、またまたインパクト大!なんかしそう・・・と思わせるのは、あの映画のおかげ??

◎◎◎○

「百合子、ダスヴィダーニヤ」

監督 浜野佐知
出演 菜葉菜 一十三十一 大杉漣 吉行和子 

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