迷宮映画館

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青い鳥

2008年12月28日 | あ行 日本映画
ある中学校の三学期の始業式。
いつもと変わらないように見える風景だが、どこか空気がよそよそしい。
そこに一人の男性教師が入って行く。静かな佇まいで、意を決したような風がある。

2年1組の臨時教師としてやってきた村内先生。彼は、吃音の国語教師。言葉をゆっくり、一つ一つ絞りだすように語る。
担任は心労で休職中。クラスでいじめがあり、その生徒は自ら命を断とうとしたのだった。あだ名はコンビニエンス・ストア野口。

いじめなんて思ったこともない。軽いからかいだったんだ。あいつがそんなに深刻に考えているとは思ってもみなかった。「なあ、そうだよな・・・」。

でも、そう表面では思いながらも、みんな心の中は思いっきり重い。できるなら、とっとと忘れてしまいたい。こっちの気持ちを知ってか、ここには居られないと思ったか、野口は転校して行った。

しかし、村内は忘れよう、忘れようとしている彼らの神経を逆なでするように、片付けた野口の机を教室に戻し、毎朝、「おはよう、野口君!」と、ゆっくり声をかける。

なぜ?どうして?俺たちは十分反省した。苦しんだ。あいつの気持ちを推し量った。これ以上俺たちは何をしなければならないのか。せっかく嵐が過ぎ去って、また元のように静かな生活が送れるはずだったのに・・・。いや、元が静かだったのか・・・。

忘れることを選択しようとしているみんな。それは子供たちも教師たちも同じだった。とにかく問題を解決して、何もトラブルもない、落ち着いた生活が送れればいい。

忘れることが大事なのか。忘れることなどできるはずもないのに、忘れたふりをして、とにかくこの場をやり過ごすことだけを考えているみんなに、村内は静かに逆の行動をとる。

忘れないことが大事なんだ。あったことを消すことなどできない。忘れないでいることが自分たちができる一番大事なことなのではないか・・・・。でも、それが正しい答えだというわけでもない。どうしたらいいのか正解は分からないが、今できる精一杯のことは、忘れないことではないだろうか。

とにかく難しく、重い、できれば避けておきたいようなテーマだ。戦争の映画や、厳しい現実のドキュメンタリーを「あたし、こういうの見れないんだ・・」というような言葉をよく聞くが、これもできれば耳をふさぎたくなるようなテーマに、真正面からガンとぶつかった映画だ。

クラスに必ずいる力と発言力のあるあいつ、ちょっと引き気味に全体を見ているあいつ、調子のいいやつ、女の子にちょっかい出す奴、その他大勢。。。。ものすごいティピカルな体育教師、とにかく穏便に、穏便に済まそうとする教頭。キャラがぴったりはまりすぎて、どんどん眉間にしわが寄って行く。

またこのようなことがあってはならないと、生徒の意見を聞こうと投書ボックスのようなものを設置するが、あの先生が見るんだと思ったら、誰も書かないだろうなと、容易に想像がつくのだが、それも気づかない教師。でも、あの教師も本当に一所懸命なのだ。

だれしもが心の中に持っていたような傷をえぐられたような映画だった。やられたかもしれないし、やった方かもしれない。どれもが納得がいく。その中で大事なものは、本気で人と向き合うことの大切さだ。

表現が難しいが、見ててきついが、見てよかったと心から思える。いつものカリスマを抑えて、朴訥に、不器用な男を演じる阿部ちゃんがじわっと沁みてくる。

1月に上映される映画だが、一足早く見る機会があった。見た甲斐のある映画だ。上映の際にはぜひ。

◎◎◎◎
 
『青い鳥』

監督 中西健二
出演 阿部寛 本郷奏多 太賀 鈴木達也 河神将平 伊藤大翔 篠原愛実 遠藤義明

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6 コメント

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Unknown (masako)
2008-12-30 00:54:00
こんばんは。
今年の最後にこの映画と「ラースとその彼女」を観ようと思ってます。

記事UPは来年になりますがまた来年もお邪魔させていただきますね♪
よろしくお願いします。
>masakoさま (sakurai)
2008-12-30 09:46:48
いま、当事者である中学生が見たい・・・と思うかどうかは難しいところですが、よくぞこういった難しいテーマで描いてくれた、と心打たれました。
ぜひ、ご覧になってください。
感想も教えてくださいね。
また来年もどうぞよろしく。
Unknown (永島大輔)
2009-01-22 07:08:07
はじめまして
「青い鳥」は昨年観た映画で一番好きな作品です♪
山形でも上映されるようで嬉しく思っていました。
感情を押しつけることなく、大切な事をそっと考えさせてくれるいい作品です。
中学生の話だけど、日本という社会を描いているように思えます。

阿部さんの先生もすごいけれど、あんな複雑な役を演じた本郷奏多さんもすごかった…

では乱文失礼します。
>永島大輔さま (sakurai)
2009-01-22 08:18:41
おはようございます。
はじめまして。どうぞよろしく。

フォーラムのことを応援してくださってるようで、ありがとうございます。
ときどき、手伝いなどをしているので。

淡々としながら、きちんと大事なことを描き、バランスよく作られていたなあと感じ入りました。
一週間しか上映しないのですが、多くの方に見ていただいて、さらにもっと多くの方に見て欲しい!!!また上映させたくなる・・・・・という運動を期待してます。
ぜひ、たくさんの方に見ていただきたいです。

本郷奏多君、うまかったですねええ。
唸らされましたが、そのあとすぐ「K-20」で、小林少年をやってて、別の面も見せてくれました。
赤マル急上昇です。

お越しいただき、ありがとうございました。
重かった・・ (メル)
2009-08-24 09:34:57
sakuraiさん、こんにちは~☆^^

学校も本格的に始まって、お忙しいでしょうねぇ~。
でも、お子さんの方は学校に行ってくれて嬉しいって言うか?!(笑)
先日のコメントバックにも書きましたが、あの自由研究は凄い!!!!!
毎年何にしようかなぁ~・・などと言ってる子たちに教えてやりたいけど、多分教えてもあれは出来ませんよ~。
お坊ちゃま、それにsakuraiさん、本当にお疲れ様でした!

今年は9月に連休があるせいで、運動会も例年よりも早くあり、そのせいか、ただでさえ少ない信州の夏休みがさらに短くなってたので、生徒たちはぶーぶー文句言ってました(笑)

で、この映画、
”忘れるなんて、卑怯だな”って、まさしくそうなんですよねぇ~・・・
人間、苦しかったこと、辛かったことは忘れよう忘れようとしますが、この場合、相手が一生覚えてるであろう辛い出来事を、彼らが忘れちゃいけないんですよね。

本気で話してる人には、本気で答える等々、村内先生が発した数少ない言葉は、どれも重く、そして胸に堪え・響きました。

阿部ちゃん、良かったです!
こういった役も出来るんだなぁって感心したし、たまたまですが、この映画を見る直前に、再放送でやってた「ドラゴン桜」見てたんですよ~(^_^;)
同じ先生でも、違うタイプを、どちらも上手く演じてて、これまでよりもずっと阿部ちゃんを好きになりました^^
>メルさま (sakurai)
2009-08-24 21:39:46
去年は豆腐を作ったんですよ。
ちまちま観察とかもいいのですが、何かをがつんと作る!!これで通しました。
まあ、これで終わりだから、もうなんでもいいです!!
うれしいいいい。

そうそう、9月は5連休がありますもんね。
でも、その5連休も、サッカーの試合やら、いろいろあって、忙しい日々になりそうです。

さて映画。
殴った手の痛みは忘れるが、殴られた頬の痛みは忘れない・・・などと陽言いますが、結構殴った方も忘れないんですよね。
忘れたふりをした方が簡単に生きていけますが、それはむなしい生き方かもしれない・・・んでしょうかね。

いろいろと突き刺さりましたが、難しい中学生、、、なんとか困難を乗り越えていってもらいたいなあと思う日々です。

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『青い鳥』 (京の昼寝~♪)
   □作品オフィシャルサイト 「青い鳥」□監督 中西健二 □原作 重松 清(「青い鳥」新潮社刊) □脚本 飯田健三郎 / 長谷川康夫 □キャスト 阿部 寛、本郷奏多、太賀、鈴木達也、重松 収、岸 博之、井上 肇、山賀教弘、中帆登美、伊藤 歩 ■鑑賞日...
「青い鳥」 (心の栄養♪映画と英語のジョーク)
静かで、そして胸に堪える映画でした