迷宮映画館

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フロスト×ニクソン

2009年05月24日 | は行 外国映画
アメリカ歴代の大統領の中で、途中で辞任した唯一の人物、リチャード・ニクソン。
あの天狗をほうふつさせる風貌は、私がアメリカの大統領!!という存在を、一番最初に、印象深く記憶に刻んだ大統領だ。

やたらにこにこして、画面に出てくる。覚えているのは、飛行機のタラップのところで、自信満々に手を振る姿なのだが、彼の最大の功績は外交。目にも、その姿を焼き付けさせた。彼ならば、自分が自信満々に手を振る姿を、サブリミナル効果として使っていたと聞いても、全然驚かないだろう。

そのニクソンを、一躍有名にし、世界中の人に焼き付けさせたのが【ウォーターゲート事件】。ワシントンのウォーターゲートビルの中にある民主党本部に盗聴装置をつけようとして、その犯人が捕まってしまう。

当初、単なるコソ泥の犯行と思われていたが、徐々に大統領再選委員会(当然、ニクソンの)の関与が判明していき、芋づる式に共和党の幹部、大統領の側近、そしてとどのつまり、大統領の辞任にまで発展していった未曾有の事件だ。

それほど大きな事件とは思われていなかったが、ワシントン・ポストの記者が、犯罪の中に見えた小さなほころびから、あきらめず、執念深く、ひとつひとつ事実を探っていって、大魚を釣り上げた。

相手は大統領府というとんでもない化け物で、司法省もFBIもそっち側の組織だ。でも、この釈然としない事件に対して、ドンキホーテみたく絶望的な闘いを挑み、勝ち取ったのがジャーナリズムだった。

この一連の記者の奔走ぶりを描いたのが、レッドフォードとダスティン・ホフマンが演じた「大統領の陰謀」である。前日に見た「消されたヘッドライン」は、この「大統領の陰謀」へのオマージュたる作品だという。ジャーナリストの真髄、これにあり!だ。

そして、本編はその後のことである。ずいぶんと前置きが長くなったが、大統領を辞めた後のニクソンの姿だ。辞めたとはいえ、依然として影響力を誇る元大統領。彼を呼ぶときはみな「ミスター・プレジデント!」だ。【ウォーターゲート事件】の本当のところはいまだよくわからず、まるでイエスのように自分が背負って辞めたことによって、ニクソンの人気はいまだに不動だ。

その怪物ニクソンの生の声を聞くことができたら、どれだけの視聴率を得ることができるか。最近、少々左前で、尻つぼみ状態であったイギリスのトークショーの司会者、デヴィッド・フロストが、そのインタービューを行うことを決意する。

見る方は、結末を知っているので、どこか安心感があるが、(あたしがロン・ハワードの映画に対して抱いているのはそこ!どんだけはらはらしてても、どこかに安心がある)威厳も、パワーも、経験も圧倒的に足りない相手が、巨人で怪物でどこつっついても倒れそうにない老獪な敵に、絶望的な闘いを挑むのだ。

最初はちょっとだけ有利、途中は案の定コテンパンにやられる。そして、最後に・・・・。うーん、よく見るスポ根もの定番だ。このままでは絶対に負けそうになるときに、何かの作用で奮起し、俄然やる気を出して、大逆転をねらって、結果は???

ということで、とってもよくできてた。盛り上げ方と、カタルシスの描き方はとってもうまい。とってもロン・ハワード的だった。ニクソンのでかさ(心身ともに)を、フランク・ランジェロが見事に表している。あのしゃべり方、迫力、自信満々な様子、そして打ちのめされたとはいえ、並みの人間ではない風情が見事。

ごくごく普通の人の役ではお目にかかったことのないマイケル・シーン。「この『小公子』!」と言われていたのが、あまりにぴったりで笑ってしまったが、浅はかななのか、ほんとは深遠な遠望があったのか、さっぱりわかんないあたりをお見事に演じた。

いつか、素のマイケル・シーンを見たいもんだ。

声が印象的なマシュー・マクファディン。冒頭、実際の人物にドキュメンタリータッチで、しゃべってもらったんだろうか・・・とまで思わせた撮り方だったが、すぐに声でわかったのがおもしろい。

おもしろいし、流れも見事だし、見せたし、勉強にもなった。でもどっか不満が残る。なんでだろう。そつがなさすぎるのかなあ。事実やべストセラーを映画化するのを得意と言われているが、ぜひ、オリジナルでうならせて欲しいと思うのは、贅沢?

と、やっぱり音楽はハンス・ジマー。ロン・ハワードは、見せ方をよー知ってます。

◎◎◎○

『フロスト×ニクソン』

監督 ロン・ハワード
出演 マイケル・シーン フランク・ランジェラ ケビン・ベーコン レベッカ・ホール トビー・ジョーンズ マシュー・マクファディン オリヴァー・プラット サム・ロックウェル

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10 コメント

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こんばんは! (アイマック)
2009-05-25 22:23:12
sakuraiさんの記事、すごくわかりやすいですよ。
ウォーターゲート事件ってそういう事件だったんだ。
「大統領の陰謀」は見てないんだけど、「消されたヘッドライン」ってオマージュになってるんだ。メモメモ
ロン・ハワード監督の映画が好きというのもあるんだけど、この映画とてもみたい!!
まだやってるかなあ。
音楽はやっぱハンス・ジマーなのね。笑
ロン・ハワード監督・・・。 (mezzotint)
2009-05-25 23:56:03
sakuraiさま
今晩は☆彡
確かにロン・ハワードさん、結末が
見えているものを選んでいますね。
うんうん納得です!最新作「天使と悪魔」
なんかその極め付けですよね。でも面白く
なかった!原作を読んでなくても、感じる
のは、何故なのか?この作品には、まだ
二人のバトルの結果が分かりつつも、
どんな過程があったかという楽しみがある。
その過程を上手く表現したロン・ハワード
さん。計算しつくされたところが、あまりにも
完璧なので、きっと面白くないのかも
しれませんね。と言いながらこの作品で
zzzzとなってしまった私です。
>アイマックさま (sakurai)
2009-05-26 13:50:24
わ、ありがとうございます。
ほめてもらった。
東京あたりの上映は、3月くらいなので、どうでしょう。
めぐりめぐって、やっと田舎に来るのは、2ヶ月とか3ヶ月後です。
半年とかなると、DVD出ちゃいますから、早く来てもらわないと。
やっぱ、ハンス・ジマーでした。
見せ方が上手いです。この監督は。
>mezzotintさま (sakurai)
2009-05-26 13:58:09
そうそうそう、なんか出来レースに臨んでる・・と言う風に見えるんですよ。この監督のは。
上手いし、面白いし、よく出来てるんだけど、野心作じゃない・・・って言いたい放題ですが、がむしゃらさを感じられないんですよ。
この作品は、いつものようによく出来てましたが、結果は知ってましたからね。
とか何とか言って、見るんですがね。
ロン・ハワードに「ハリー・ポッター・・」撮らせると、面白いかもです。
こんばんは^^ (KLY)
2009-05-26 23:36:16
コメントありがとうございます。
実を言うと私の中ではショーン・ペンより、フランクにアカデミー賞をあげたい位見事な演技だと思ってるんです。

それと忘れちゃいけないのがケヴィン・ベーコン。彼の存在があるんで、単なる善悪の二元論にならずにすんでるんだと思いました。
>KLYさま (sakurai)
2009-05-27 13:47:21
私もフランク・ランジェロは鳥肌立つほど、上手かったと思います。
これぞ役者だ!と。
「ミルク」は、来週来ます。
20数年前にドキュメンタリーの「ハーベイ・ミルク」もしっかと見ましたので、予告見るたびに、こっちも鳥肌立ってます。
楽しみ。

ケビン・ベーコン、よかったですね。キャラが立ってた。エンドロールで、協力者みたいな方々の名前が並んでましたが、ジャック・ブレナンもありましたね。
なんか、中世の騎士を思い浮かべるような佇まいでした。
こんにちは (はらやん)
2009-06-06 17:54:22
sakuraiさん、こんにちは!

たしかにロン・ハワードの作品て観ていて安心感ありますよね。
途中何度もうまくいかなそうなことになっても、この話、不幸せな結果には終わらないだろう、みたいな。
物語の盛り上げ方とか、ツボがわかっている気がしますね。
>はらやんさま (sakurai)
2009-06-07 19:32:50
そうなんですよ。
あたしがこの監督に少々抱いている不満はそこです。
題材の選び方から、冒険はしてない・・みたいな感じでしょうか。
十分見せるんですがね。
お利口さんの仕事なんて言ったら怒られるかな・・。
似てない (ひらりん)
2010-10-19 01:31:51
けど、なりきってたので違和感はありませんでしたね。
ジャンルは違うけど話術のプロ同士の対談は、だんだんヒートアップして迫力がありました。
>ひらりんさま (sakurai)
2010-10-19 10:13:42
似てないけど似てるって凄いですよね。
事実は小説より奇なり・・・っていうのは、本当にあるんだなあと、感じ入りました。

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