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力道山

2006年03月08日 | ら行 外国映画
先週のウィルス性胃腸炎以来、なかなかの具合の悪さと忙しさで、しばらくぶりの更新です。

昭和のヒーロー『力道山』の登場。1961年生まれの私は、生の力道山の活躍は残念ながら知らない。私が物心ついたときのヒーローはジャイアント馬場に、若きアントニオ猪木。大木金太郎も強かった。ボボ・ブラジルなんて、最高のキャラ。プロレスは見なきゃなんないものだった。そして、そのたびに出てくる名前が『力道山』だった。すでに故人だったが、昔活躍したものすごい強いレスラー。でも、ヤクザとケンカして殺された朝鮮人。何でか知らないが、知ってた。今考えると、何で知ってるのかが不思議だが、知ってた。

でも、それ以上でもそれ以下でもない。ただの『力道山』だった。この映画で謳われている【日本人が一番力道山のことを知らない】というのが、まさに言い得て妙の『力道山』だ。

相撲取りになるために日本に来て、当然の事ながらものすごいいじめを受ける。戦争中、相撲取りというのはどんな立場だったのかよくわからないが、微妙な立場だったことには変わりないだろう。ただでさえ飯を食わなければならない彼ら。あの時代に飯を食うためには、強力なバックが必要だったのでは。

そうでなくても、今も昔も後見人がつくかどうかで、かなり様相が変わってくる。朝鮮から来た金は、命を張ってタニマチを得、『力道山』というシコ名をもらって番付を上げていく。しかし、相撲は実力の世界ではなかった。いくら成績を上げても、関脇から大関に上がれない。小錦が大関に上がったときの批判、横綱に上がれなかったときの憤慨を思い出した。



有無を言わせぬ強さがあればよかった。と考えると、曙って凄い奴だった。批判をなぎ倒す実力があった。文句言わせぬ実力で、横綱をもぎ取ったわけだ。いまだ無様な姿を見せる曙だが、逆に尋常でない精神力の強さを改めて感じる。

相撲の世界の頂点をあきらめて、プロレスの世界に転向する。ここには国の壁なんかない。自分の強さを遺憾なく発揮できる。自分をアピールできるぴったりのものを見つけることができたわけだ。しかし、アメリカ仕込のプロレス。この海のものとも山のものとも分からないプロレスたるものを、日本人は受け入れてくれるだろうか。でも、類いまれなる才能をもつ力道山は、見事なプレゼンテーターぶりと、エンターテイメントぶりですんなりクリア。一気にプロレスの頂点に登りつめると同時に、日本中にプロレスの魅力を沁みこませた。この辺は「三丁目の夕日」あたりのTVの前の熱狂振りが物語ってる。

頂点に登りつめると、そこに止まる事は難しい。彼の努力は並大抵のものではなく、維持し続けた精神力には感服する。ただ登り方が速過ぎた。それまでの苦労は長かったが、登りつめ方の速さに本人自身も戸惑ってしまったのではないだろうか。あっという間に日本国中のヒーローになってしまった。ついこの間まで、敗戦に打ちひしがれていた日本人は、でかい外国人を倒す力道山の姿に光を見た。非力な自分に憤りを感じていた私達は、彼に姿を重ねた。TVの前で、歓声を上げるのは今も昔も同じだ。イナバウアーを決めて金メダルをとった瞬間、あたしたちはTVの前で歓声を上げたはずだ。



ちょっと前までさげすまされていた力道山は、皆のヒーローになった。悩む暇もなく、この道を突き進まなければならない。突き進んで散っていった『力道山』。まるで、【花神】のよう。時代には、その時必要な人がいる。たまたまその時代に遭遇したのかもしれないが、どう考えても、時代が必要とし、その役割を終えると消えていく。幕末の坂本竜馬や、フランス革命のロベスピエールしかり。司馬遼太郎は幕末の軍事家、大村益次郎を【花神】にたとえた。明日の見えない希望を失った日本人にエネルギーを与えてくれたのが『力道山』だったではないか。そこには国籍もジャンルもない。ただ時代が必要としていたヒーローが彼だった。そしてその役割を終えると、消えていく。ヒーローの定めのように。

そこには無理も矛盾も齟齬も生じた。でも突き進まなければならない【花神】の宿命だったではないか。それが『力道山』だった。

全編くすんだ雰囲気で、昭和の味わいをたっぷり堪能した。たまに話の進み方に説明不足のところがあって、頭の中の整理が追いつかない場面もあったが、全てはソル・ギョングの熱演で吹っ飛んだ。凄い、凄すぎる。あの役者魂。どんなときでも血管ぶちぎれそうな圧倒的な力で見るものをねじ伏せる彼だが、見事に空手チョップでぶちかまされた。そこまでやるんかい!なんてもんじゃない。≪ソル・ギョングの、ソル・ギョングによる、ソル・ギョングのための力道山≫!!

『力道山』
監督・脚本 ソン・ヘソン
出演 ソル・ギョング 中谷美紀 藤竜也 萩原聖人

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15 コメント

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素晴らしい映画! (tama)
2006-03-09 01:50:19
はじめまして

ソル・ギョングふぁんサイトの管理人をしておりますtamaと申します。



「力道山」の素晴らしいコメントを拝見し、是非ともふぁんの皆様に見て頂きたいと、BBSにこちらのURLを載せさせていただきました。



よかったら、サイトの方にも遊びにきてくださいね
>tama様 (sakurai)
2006-03-09 08:28:30
コメントありがとう。

プロレスのシーンの迫力に圧倒されました。

あすこまでやっちゃうソル・ギョングに脱帽です。
小錦 (kossy)
2006-03-09 10:37:13
TB、コメントありがとうございます。

小錦の昇進問題のときは相撲に夢中になってた頃でした。あの問題のおかげで、直前の場所で何勝必要かという規定がしっかりしはじめたんですよね。3場所合計35勝とか、優勝しなくても横綱になれるようになった・・・

力士からプロレスに転向して成功した人は力道山しかいないんですよね~天竜は結構頑張ってましたけど。



この記事だけgooにTBできない・・・ううう。
タイガーマスク (sakurai)
2006-03-09 12:46:52
ほんの一瞬、回想シーンみたい風に、刺された場面を覚えているのですが、定かではありません。



そういや、双羽黒なんてもいましたね。あの人は今?
壮絶な (カオリ)
2006-03-10 00:45:24
半生ですね。事実と異なっている点もあるようですが、魂は本物を表現してると思いました。

この映画とめぐり合えたことに感謝したいです。

TBさせていただきます。
あの頃の (sakurai)
2006-03-10 08:36:40
まるっちぃTVの前で踊ってる写真があるのですが、くすんだセピア色の昭和30年代を思い出しました。

彼は時代が生んだヒーローだったと、改めて思いました。

TBありがとう。
こんにちは (ケント)
2006-08-14 09:04:31
sakurai さんコメントありがとう。

今では独占スポンサーなんて信じられませんよね。あの頃はスポーツだけではなく、テレビドラマやアニメもアメリカものが多かったですね。



ありがとうございます (sakurai)
2006-08-15 11:24:54
サザエさんも東〇独占じゃなくなってしまいましたからね。電気屋さんっていうのが強い力を持っていた時代を思い出しました。
こんにちは! (猫姫少佐現品限り)
2006-08-29 10:32:58
echo&コメ、ありがとうございました!

そんなに若くはないのですが、、、

力道山の真実を知れば知るほど、やっぱり韓国映画だという感じがしてきて、かなり微妙です。

決してヒーロー物ではないですね。

またよろしくお願いしますね。
ソル・ギョング (sakurai)
2006-08-29 16:02:53
に尽きた映画でした。

とにかくあの熱演がなければ成立しない映画。

「ペパーミント・キャンディー」の頃から見てますが、あの気合いの入りぶりは他の役者さんにはありえません。

韓国映画といってしまえばそうですが、そこからもまたいろいろなことを考えさせられます。

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