迷宮映画館

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ドレスデン 運命の日

2007年09月13日 | た行 外国映画
1945年2月、第二次世界大戦もそろそろ最終局面を迎えていたころ。すでに結果は明々白々だったのだが、絶望的な戦いを続けていたのは、ドイツと日本だった・・・。

人間の生き方で一番大事な瞬間というのは、引き時ではないだろうか。いくら輝かしい業績をあげ、すばらしいことを成し遂げたとしても、引き時を間違えた後の運命は悲惨だ。昨日の某国の総理大臣の引き時の大いなる間違いを見て、つくづくそう思った。

戻る勇気、ここでやめる決断、昭和天皇が評価されるのは、引き時は遅かったが、自分に与えられた権限を持って、戦争をスパッとやめたことではないかと思う。それ以前に、やらなきゃ一番いいのだが、やむにやまれぬ状況で、日本国中、火の玉になって突っ走ってたときに、それは難しすぎる。

さて、大戦中のドイツ。第一次世界大戦で、完膚なきまでに叩きのめされたドイツは、完全に自信を失った。経済は破綻し、ゲルマン民族の誇りはズタズタにされ、皆が行き先を見失っていたころ、間違った方法だったが、自信と誇りを取り戻させた人物がヒトラー、その人だ。

国を復興させ、自信と強さを取り戻し、第一次世界大戦で受けた恥辱を晴らすためにはイギリスと一線交えなければならなかった。そして、ファシズムに対して支持を集めるためにとことん利用した対共産主義。イデオロギーの対立なんて高尚なものとは到底思えず、ガキのケンカか!とも思えるくらいの単純な戦いだった。

やられたからやり返す!あいつの考えが嫌いだからぼこる。金がないから、あるところからぶんどる。AとBは本当は仲が悪いのだけど、どっちもCが嫌いだから、とりあえず今は手結ぼう・・・・よくよく考えてみなくても、戦争と言うのはこんなもんだ。それを力のある為政者が行うからとんでもないことになるのだ。

歴史で言ってはいけないことは「あの時、もし○○だったら・・・」。そうでなかったから今があるのだ。選択のミスをしてしまったことを反省しなかったら、ただのアホだ。

ということで『ドレスデン』!戦争も末期、負け続けのドイツだったが、日本と同様に国民には勝ち続けているとの報道を繰り返し、絶望的な戦争を続けていた。これは都市部の空襲を行い、市民に知らしめるしかない。非戦闘員である市民を対象に、爆弾を落とすのだ。ロンドンも数え切れないくらいの空襲を受けた。

爆弾の落ちて行く先には、ごく普通の生活を送っている市民たちがいる。治療を行う病院、ごく普通の家族の住む家庭、ユダヤ人が暮らしている地域、金持ち、貧乏人・・・・。味方もいるかもしれない。しかし、そんなことは一切お構いなし。容赦なく、区別なく、雨あられと爆弾が降ってくる。

石造りのヨーロッパの古い街並みに容赦なく降り注ぐ爆弾は、石の町を焼き尽くした。跡に残るのは、石の残骸。防空壕は整備されていても、天井一枚上が焼き尽くされていては中はオーブンの中と同じ状態になるわけだ。そのことを改めて知らされた。

頑丈な防空壕の中は、酸素がなくなり、窒息、一酸化炭素中毒。蒸し焼き状態になり、地獄の苦しみを味わう。しかし、外は灼熱地獄。空襲ということはこういうことだったのだ。これが容赦なく爆弾を落とした状態なのだ、ということをまざまざと見た。

そこに、ドレスデンに紛れ込んでしまったイギリス兵とドイツ女性の許されない愛!なんていうのを絡ませて、ドイツを見捨てて、スイスに逃げようとしていた親父様のやむをえない愛情とか、盛りだくさん。登場するのはみんないい人ばっかだし、因果応報はちゃんとあったりして、とにかく盛りだくさん。

空襲のすさまじさは、CGなんかに頼らず、本当に迫力があったが、それをドンとメインに据えて、サブストーリーは、もっと簡潔にしてしまったほうがまとまりがあったかなあ。あの状態で恋愛に陥るのには、やはり無理がありすぎるような。

と、ストーリーにはいくばくかの不満を申し上げたが、戦争がもたらした数え切れない悲劇と、戦争を終わらせる勇気の大切さ。引き時の大事さを痛切に感じた一本。

◎◎◎

『ドレスデン 運命の日』

監督 ローランド・ズゾ・リヒター

出演 フェリシタス・ヴォール ジョン・ライト ベンヤミン・サドラー ハイナー・ラウターバッハ カタリーナ・マイネケ ズザンネ・ボルマン マリー・ボイマー カイ・ヴィージンガー


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
おはようございます (武子丸)
2007-09-16 07:40:37
戦争映画って、どう感想言ったらいいか、いつも悩みます。面白いとか、良かったとかいう言葉は、不適切のような気がするし・・。んでもって、重い気持ちで帰ってきます。それが、負けた側の話なら尚更です。でも、恋愛の話は・・・?という事と、ちっと長いなぁと思った事を除けば満足でした。爆撃シーンは、圧巻でしたね。
>武子丸さま (sakurai)
2007-09-16 22:39:30
いろんなことを盛り込みたい!!という気持ちは買うのですが、ちょっと欲張りだったかなあと、思いました。
この監督は長いのが好きなんですかね。
爆撃のシーンはほんとすごかった。灼熱地獄!!!がびんびん伝わってきて、こっちも息苦しくなりそうでした。

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