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さらば、わが愛 覇王別姫

2003年05月19日 | さ行 外国映画
1924年から1977年までの中国を、京劇の役者、程蝶衣と段小樓という二人の役者を通して描いた傑作。カンヌでグランプリを受賞し、チェン・カイコーの名を世界に知らしめた作品だった。4月に自ら命を絶ったレスリー・チャンの追悼と言うことで、急遽上映することになった。

京劇は中国の最高の娯楽。その役者は文字通りのスターだ。富も名声も手に入る。その養成所には、捨て子やら、捨て子同然で家族から見放された子供たちがいた。過酷ともいえる修行に明け暮れ、いつか舞台に立ってスターになるんだ、というわずかな希望にしがみついて、耐えていた。

その養成所で一緒に育った石頭と小豆。今は段小樓と程蝶衣と言う名前の、飛ぶ鳥も落とす勢いのスターになっていた。マッチョで直情型の段と、私生活まで女形になりきってしまっている根っからの役者・程は、幼い頃からの絆を大事にしてきた。しかし、段が女郎の菊仙と結婚をしたことから、二人の関係は三人の関係となってしまう。

日中戦争が始まり、日本軍の占領下での悲劇、日本軍が去った後の開放感からか、国民党の兵士の暴虐ぶりが描かれる。そして共産党の支配。文革に翻弄され、徹底的に叩きのめされたときの人間の姿をこれでもかと描く。

そして、今。すべてを吐き出し、膿を流し、歴史に踊らされ、生き抜いた彼らはどんな運命を選択するのか・・・。

9年ぶりに見た「さらば、わが愛」。当時も凄い衝撃を受けたが、今回の衝撃は深く、たっぷりと堪能できた。前回はストーリーを追うのにもエネルギーを費やしたので、あんまり泣いた覚えがないのだが、今回は先がわかっていて、この場面はこうなるのね、この表情は次のこれの布石、などとわかっていると、もうそれだけで、涙、涙、涙。こういう堪能の仕方もあるんだなあと感じた。

子役のうまさに改めてビックリ。まなざしの演技の素晴らしさは天性のものか。その後、あの子らは、どうなったのだろう。そして、レスリーのうまさ。改めて驚愕した。香港のスターに京劇が出来るか、彼に文革の厳しさがわかるかとの批判があったらしいが、そんなもの微塵も感じさせない。身も心の役者になりきってしまった人間の持つ矛盾と哀しさと純粋さを見事にあらわしていた。しかし、レスリー自体もそれになりきっていた。彼は段役の張豐毅に対して、翳りも見せず、ひたすら逞しい男を演じようとしていたと、少々批判しているが、その後の張豐毅の活躍を見て、その才能を見るに、この映画では彼はそう演技し、レスリーの演技との対比にしたのではないかと思えた。段小樓はそういう男だったのだ。しかし、自分の哲学に徹し、自分の美学に順ずるレスリーにはそれが許せなかったのだろう。

役にのめりこみ、役になりきるレスリー。彼の哲学から行くと、このときは完全に程蝶衣になりきっていた。そしてその後も役につくたびになりきったのだろう。どれだけのエネルギーを消耗したのか。その消耗は想像を絶するのではないか。彼が死を選んだのも、今ならなんとなくわかるような気がする。

改めて見て、コン・リーの凛とした女優魂、彼女のカリスマ性を確認した。「活きる」のだんな、葛優って存在感あったなあ。チェン・カイコーの紛れもない最高傑作だ。同じ人が「キリング・ミー・ソフトリー」作ったのかと思うと、ちょっと淋しい。

レスリー・チャンよ、さようなら。

「さらば、わが愛 覇王別姫」

原題「覇王別姫」 
監督 陳 凱歌  
出演 張 國榮  鞏 俐  張 豐毅 1993年 中国作品

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