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ルート・アイリッシュ

2012年08月16日 | ら行 外国映画
ある男の葬儀。そこには儀仗礼も、礼砲も、えらい人のお言葉もない。死んだのは民間の軍事会社に所属していたフランキーという男。イラクでの紛争が続く中、当然ながらアメリカを中心とする多国籍軍が常駐しているが、問題は山積状態。軍備の縮小が進められている中、大きな役割を担ってきているのが軍事会社と言うことだ。

この辺の事情はよくわからない。資金源は一体どこなんだ?一番引っかかったのはそこなのだが、危険な地域に派遣される民間兵はかなり給料もよさそうだ。しかし、それと同時に危険度も高い。そしてもしも亡くなっても名誉ある死、軍人としての厳かな葬儀は望めない。

フランキーが襲われたのは、イラクでも最も危険な地域と言われていた「ルート・アイリッシュ」。バグダッドの空港からグリーンゾーンを結ぶルートだ。なぜにアイリッシュという名前が付けられているのかは言及されないが、世界一危険なところの名前としてつけられているのが、その昔、もっとも危険な地域とされていたアイルランドが選ばれたのかもしれない。

攻撃されてもやむなし・・・の危険な地域だが、釈然としない事実がわかってくる。フランキーが隠し、なんとかして親友のファーガスに届けようとした携帯には、彼らが民間人を間違って襲っている映像が残されていた。

本当は軍の仕事から足を洗いたいと思っていたフランキーに、無理に仕事をするよう頼んだの人物こそ、ファーガスだった。ファーガスとフランキーは幼いころからの親友。どんなことも一緒に乗り越えてきた。秘密の携帯に隠されていた映像から、もしやフランキーは謀略の上に殺されてしまったのではないかと思うようになっていく。

アラビア語の携帯は翻訳しないと理解できない。ファーガスは、イギリスに滞在している難民のハリムに頼んで翻訳をしてもらうと、そこには驚くべき事実が隠されていた。フランキー達がテロリストと襲撃したタクシーは民間人。それを目撃し、携帯で撮影していた子供たちも射殺してしまった。

この事実を公にしようとしたフランキーは死んだ。一緒に襲撃した仲間も死んだ。ただ一人、フランキーを嫌っていた短気なネルソンを除いて。

やばい時に、やばいところに行ったからフランキーは死んだのか?いや違う。フランキーは殺された!と信じるファーガスは、自分で自分を追い込んでいく。そして彼が掴んだ真実は・・・・。

結局、ファーガスの見つけたフランキーを殺した犯人は、大きすぎた組織。一人の人間があがいてもどうしようもない憤りすら感じる。なぜこうなってしまったのか・・・?と突き詰めていけば、イラク戦争を起こしたアメリカを見逃すわけにもいかず、その前の湾岸戦争に、イライラ戦争、そしてそれを引き起こした冷戦、大戦、植民地抗争・・・。きりがない。

ファーガスは仇を取るが虚しさしかない。ファーガスの取った行動はテロリストとなんら変わらない。しかし、そうせざるをなかったと言うことがますます虚しさを感じさせる。

いままでのケン・ローチ監督の切り口とは若干違ったものだったが、人間が歩んできた道が生み出した間違いと争いの積み重ねによって、にっちもさっちもいかなくなったドロドロの世界。虚しさが覆ってしまう世の中に一石を投じ続ける監督の姿勢に揺らぎない。

きっとローチ監督がこの題材を撮ろうと思ったのは、世界で最も危険な道路に冠された名前があまりに悲しすぎたからではないかと勝手に想像する。

◎◎◎◎

「ルート・アイリッシュ」

監督 ケン・ローチ
出演 マーク・ウォーマック アンドレア・ロウ ジョン・ビショップ ジェフ・ベル タリブ・ラスール

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2 コメント

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やりきれない (ナドレック)
2012-08-17 14:27:25
やりきれないのは、タクシーを襲い、路傍の子供を射殺した行為も、民間兵にしてみれば自衛の延長であることですね。
現実に爆弾を搭載して突っ込んでくるクルマが多く、携帯は爆弾のリモコンだったりする。彼らを見逃したら、自分たち(とクライアント)の命が危ない。
それは民間軍事会社のボスを懲らしめてもどうにもならないのがやりきれません。
>ナドレックさま (sakurai)
2012-08-23 13:08:58
だれも悪くないはずなのに、自分を守ることが相手を殺すことしかないのか・・・というのが、なんともはやです。
解決の道は見えないまま、またこういう映画を作らなければならない世の中は、いつまでも続くんでしょうね。

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