迷宮映画館

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女帝

2007年07月10日 | さ行 外国映画
ここで問題です。
『中国、五代十国時代・・・。さて、五代の歴代王朝をお答え下さい。』
・・・やですね。自分が嫌い。
ここ、五代時代の歴史は中国の中でも、ついスルーしてしまうところ。唐という中国歴代王朝の中でも、とっても勢いのあった統一王朝のあと、わずか50年の間に、5つの王朝が興亡し、小さな国が林立していた混乱の時代。そこを舞台に持ってくるというあたりに、うまいなああ、と感心させられました。


この混乱の時代、皇帝である兄を毒殺し、その座に上りつめた新帝。権力に対する執念とともに、兄の若く美しい奥方ワンをも手に入れる。しかし、彼女には心に秘めた思いを委ねる男がいた。先帝の皇子、ウールアン。

父に娶られたワンを忘れるために、呉越の地で隠遁生活を送っていたウールアンにも、新帝の刺客の手が伸びる。何とか生き延びたウールアンは、宮廷に帰り、夫婦となった新帝と、ワンの姿を見る。

宮廷の中でも、ウールアンの安住の場所はない。命の危険にさらされ、果ては人質として契丹に送られる。そこで、果てる命のはずだったが、ワンの計らいで、助けられる。しかし、そのまま宮廷の戻ってもまた命を狙われるだけ。血に染まった面を送り、ウールアンは契丹に行く途中で、襲われ亡くなったと報告させた。

都では、盛大に宴会が催された。ワンは、身も心も自分のものになったはず。皇后の即位式を行い、新帝は天下に自分の威光を知らしめようとした。しかし、その宴でワンが狙っていたものは・・・。そして密かに帰ってきたウールアンは・・・。ウールアンを慕うチンニーの覚悟は・・・。

とまあ、愛憎渦巻くどろどろねっとりの宮廷の様子を、シェークスピアの「ハムレット」を借りて、ガートルートの立場から切り取ってみたわけだ。この際、原案「ハムレット」は忘れていただいて、後ろを気をつけていないと、命の保障はまったくなかった武断の時代の様子がよく出ていて、面白い。

殺された先帝の妻と、先帝の皇太子が実は恋仲だった、という設定がこの物語を複雑に、そして面白くしているわけだが、中国では、よくあるような話だ。

映画の中で秀逸なのは、なんと言っても中国きっての名優、グォ・ヨウの怪しさ。この人の前までは、中国最高の俳優は紛れもなく朱旭をあげていたが、今はもうこの人を置いていないでしょう。堂々とした皇帝っぷりも様になってるかと思うと、若い妃に溺れる助平親父の雰囲気も見事。そして、目の前で繰り広げられる演舞や、劇を見るときの表情。感情のないような目に、一瞬蛇のような狡猾さが宿る。ほんとにうまい、うまいなあ。

そして、彼に堂々渡りあったのが、いまや押しも押されぬ大女優になっちゃったチャン・ツイィー。コン・リーの域までの到達はまだまだ無理だが、踊れて、戦えて、美しく、若い今のうち、ガンガンやって頂きたい。

展開は『ハムレット』なので、悲劇が待っているだろうとの覚悟で見るわけだが、非常にうまいストーリーだったと思う。視点がハムレット皇子ではなく、ガートルートなのが、とっても目新しかった。混乱に巻き込まれ、自分の意志にそぐわぬ人生が待っている。そしていつの間にやら・・・・。しかし、それすらも運命のいたずら。翻弄された人生を凛と歩もうとする姿は、威厳があった。

『イノセント・ワールド』に続いて、フォン・シャオガン監督の作品を拝見したが、中国では、3本指に入るほどの人なんだとか。日本での公開が、いままであまり頻繁ではなかったようだが、これからぐぐっとくるんでないでしょうか。

豪華絢爛、一代絵巻を見たような満足感あり。普遍のシェークスピアは偉大です。

◎◎◎○●

『女帝』

監督 フォン・シャオガン
出演 チャン・ツィイー グォ・ヨウ ダニエル・ウー ジョウ・シュン ホァン・シャオミン マー・チンウー

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6 コメント

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五大十国とは・・・ (圭一朗)
2007-07-15 08:20:46
 台風4号で雨がシトシト降っている・・・

そこで、中国の歴史の勉強をしました。

五代十国とは唐の滅亡(907年)宋朝の成立(960)
と全国統一(979)までの興亡した諸国およびその
時代をいう。五代とは華北の中心地帯を支配し正統
王朝系列とみなされる後梁、後唐、後晋、後漢、後周
の五王朝。十国とは華南その他 周辺各地に興亡した
地方政権 呉・南唐、呉越、ビン(門+虫)、荊南
(または南平)、楚、南漢、前蜀・後蜀、北漢を指す。
その他にも短期間独立を保ったものに燕、周行逢政権
(建州)、岐、などがあった。

 先生!これでいいですか? 正解?

 これから『女帝』を見に行きます。
歴史の勉強をしてから映画を見に行けば、より一層理解できますね、先生!
>圭一朗さま (sakurai)
2007-07-15 22:48:35
お答えいただきありがとうございます。
映画本編は、あまり時代とは関係なく、「ハムレット」が根本だったのですが、そのどろどろのウォッチ・バックの時代を五代十国にもってきたたりがうまいなあ、と感心した次第です。
世間の評判はよくわかりませんが、あたしてきには非常に面白かったですわ。
皇帝役のグォ・ヨウに座布団3枚です。
初投稿のごあいさつ・・・ (圭一朗)
2007-07-16 10:55:13
 初めて訪問しながら ご挨拶もせず失礼しました。
いつも見てるので初めてだってこと忘れてました。
「桜井ブログ」は楽しみで、僕の映画を見る参考にしています。よろしくお願いします。

 この『女帝』、僕的にも大変面白かったです。こんなに面白い作品なのに、どうして上映期間が短いのですかねぇ。

 何と言っても、チャン・ツィイーの魅力には参ってしまうのですが、「初恋のきた道」が未だに大好きなので“おんな”の成長振りには驚きです。
 僕は、ジョウ・シュンの一途な愛に座布団4枚です。彼女気に入りました。

 最後の犯人は・・・?

 僕の大好きなユーミンの曲が イメージソングになっています。
 この『女帝』お薦めなんですがねぇ。20日まで、お早めに!!
>圭一朗さま (sakurai)
2007-07-17 08:38:54
読んで頂いているということ。ありがとうございます。
お恥ずかしい限りですが、どうぞ、ヨロシク。

チャン・ツィイーは、同性にはあまり評判がよくないんですよね。半分、やっかみもあるかもしれませんが、彼女の描き方次第で、評価が分かれることが多いですね。
これもそういう要素が大きいかも。

振り向いた彼女の顔が、かなりたまげてましたので、一体誰でしょうね??

そろそろ夏休みモードで、ロードショー系に席巻されて、レビューはがたっと減りそうですが、またいらしてくださいませ。
確かに (miyu)
2008-05-16 09:36:44
シェイクスピアってどの時代、どの国、
そして性別をも超えて普遍の面白さがありますよね。
本当偉大ですね。
>miyuさま (sakurai)
2008-05-20 09:08:34
普遍です。
ネタがなくなったらシェークスピア!っていうのが定番みたいですからね。
『王妃の紋章』も、シェークスピアっぽかったですわ。今考えると。

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