迷宮映画館

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ハンテッド

2003年05月26日 | は行 外国映画
1999年、コソボを攻撃していたアメリカ軍の秘密工作員の中に、ハラム軍曹がいた。彼はサバイバル技術を駆使し、ナイフ1本でどんな任務も必ず成し遂げていた。セルビア軍の指導者を素手で殺した彼は、銀星章を授与された。最高の栄誉だった。

2003年、アメリカのオレゴンの山奥で、鹿狩りに来ていたビジネスマンが無残な死体で発見された。その冷酷さ、残忍さは目を覆うばかりで、FBIはサバイバル技術の達人、L.T.に犯人捜索の依頼を申し入れた。そして、そこで犯人として見たものは自分がかつて教えた生徒だった。

一度は逮捕されたハラムだったが、元軍人であることから、FBIから軍に管轄が移動、基地に護送される。しかし、黙って、護送されるハラムではない。護送車から逃げ出したハラムは恐ろしい殺人マシーンと化し、父とも慕うL.T.と壮絶な戦いが始まった。果たして、生き残るのはどっちだ。

現代のランボーはコソボで生まれる。90年代で一番悲惨な過酷な歴史をたどった国の一つが旧ユーゴだろう。「ボーリング・フォー・コロンバイン」で描かれていた名も知らない国への最大の爆撃のあと、あの悲惨な事件が起きたというあの国だ。クリントンが誇らしげに、コソボ空爆の事実を国民に告げていた下で、ハラムは特殊任務を遂行していたのかも。セルビア人勢力による、コソボ市民への虐殺が彼の神経を蝕んだらしい。事実だろう。しかし、アメリカ軍の空爆によって。コソボ市民が何千人も死んだのも事実だ。

サバイバル教官のL.T.は自分では決して人を殺さない。しかし、自分は人殺しを教えているという事実を突きつけられる。そして自分の子供の後始末でもするようにハラム軍曹を追うのであった。銃は絶対に使わない。その辺にある石からナイフを削り、鉄の棒から、サバイバルナイフを作り出す。実際にL.T.のモデルとなったサバイバル教官は、その辺にあるものから凶器を作り出したそうだ。

銃が人を殺すのではない、人が人を殺すのだというのはまぎれもない事実である。人が人を殺そうと思ったときに必要なものは、その辺にある石ころと、ちょっとした神経の損傷があればいい、じゃあまりに哀しい。しかし、現にある事実だ。

フリードキン監督が、ただ単にエンターテイメントでこれを作ったとは思えない。人を殺す原動力となるものは何なのか、人を殺す卓越した技術を持つ人の精神は誰が保障するのか。ちょっとした男臭い映画を見るつもりで行ったのが、えらい考えさせられてしまった。「ボーリング・フォー・コロンバイン」とセットで見ると、一層見に沁みた。

トミー・リー・ジョーンズ!痛々しいほどの頑張り、どう物理的に見てもベニチオの勝ちだわ。でも素手で相手に立ち向かうときは、すべてをかなぐり捨てて戦うのが、ぐさぐさとわかった。

「ハンテッド」

原題「The Hunted」 
監督 ウィリアム・フリードキン
出演 トミー・リー・ジョーンズ ベニチオ・デル・トロ コニー・ニールセン
2003年 アメリカ作品

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