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ミリキタニの猫

2009年06月16日 | ドキュメンタリー映画
前回のドキュメンタリー映画際で上映された作品。話題になっていたが、見れなかった。今回、再映されるということで、楽しみにしていた。上映に携わった皆様、ご苦労さまでした。

NYの街角で、絵を描き続けている老人。名前はジミー・ミリキタニ。アメリカ生まれの日本人・・・。どう見ても、汚いホームレスのじいさんにしか見えないのだが、なかなかのタッチの絵を描き、それを売って生きながらえている。



ある日、一人の女性・リンダと出会う。絵の代金は、自分を撮ってくれという。そして、老人はいつもそこにいた。9・11のテロのときも、変わらず、そこにいた。黙々と上がる灰の中で、咳き込みながら、そこにいた。

リンダは、老人の境遇を知る。サクラメントで生まれた日系の紛れもないアメリカ人。小さい頃から絵の才能に恵まれ、一度日本に渡るが、またアメリカに帰ってきた。

さまざまな仕事をしてきたあとに、第二次世界大戦が勃発する。日米が開戦すると、日系の人々は、敵国人として収容された。収容所の劣悪な環境は、つとに知られるところだが、ここでも多くの人々が病にかかり、死んでいった人も多かった。

そして、強要されたのが市民権の放棄だった。多くの人が市民権を放棄し、ミリキタニ氏もアメリカ人ではなくなった・・・。そのまま、今に至ったのが、彼の境遇だった。

彼の絵には力がある。そこにあるのは、怒りと反骨。戦争に対する怒り、政府の処遇に対する憤り。一人で生き抜いてきた老人にはパワーがある。そのパワーは紙に描かれ、色となって、あらわれる。

その境遇を知ったリンダは、社会保障番号もなく、何の福祉の手助けもいらないという老人の思い込みと誤解を解き、一人のアメリカン・シティズンとして立ち上がらせていく。

なんだか見てて、だんだん方向性がわからなくなってきた。敵国人と一緒くたにされて、日本人だからと敵性視された60年前と、なんら変わらないことをしているアメリカ。敵を創出し、やたらに怖がり、ナショナリズムを起こさせるのはアメリカの常套手段だ。

かの国が作られてきた出発点を考えると、それはやむをえないし、それこそがアメリカをひとつにするものであって、その問題点は、すでに指摘してきた。

じゃあ、この映画の一番言わんとすることは何なのだろうか。恐怖というアキレス腱を抱えるアメリカだが、棄てたもんじゃない。老人をこんな風に扱っているはずがない。アメリカに対する誤解を解く。それが眼目になっていって、なんだかアメリカって、とってもいい国だったんですよ・・・という風に見えてきた。

いや、現実にいい国・・・なはずだ。反骨に満ちた老人は、好々爺に変わり、その絵のタッチも、なんだか穏やかな、暖かい、ほんわかした絵に変わったような気がする。まるで、映画のオチのような大団円だ。あ、これは映画だった。



ただ単に、あたしが見たかった部分と、切り取られていた部分が違っただけで、映画としてはとっても面白かった。あのじいちゃんのキャラがお見事だ。そこで、強く感じたのは、人との出会い。まるで運命の出会いのように、人生が切り開かれていく。うーん、もうちょっと早く出会えてたら・・・とも思えるが、9・11というのが大きなターニング・ポイントになっているのも面白い。

離れ離れになっていたお姉さんとの再会と、かみ締めるように「戦争はだめ・・」といった言葉が印象的だった。

◎◎◎○

『ミリキタニの猫』

監督 リンダ・ハッテンドーフ
出演 ジミー・ツトム・ミリキタニ ジャニス・ミリキタニ ロジャー・シモムラ

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4 コメント

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来場ありがとうございました (嗚呼ミリキタニ団・GMN)
2009-06-16 19:08:15
とっても嬉しいです。

今回「ひめゆり」との共催という事で、メディア戦略として「戦争が背景にある話」ってのを前面に押し出してきましたが、
個人的にはやっぱり「人と人との不思議な縁」みたいな所がこの作品の魅力かなと思ってます。

国によって存在を抹消された人が、たった一人の人間のやさしさ(時におせっかいなくらいの)によって穏やかな心を取り戻す。
そういう話だったかなぁと。

第二次大戦によって運命を変えられ、9・11がきっかけで再びまた人生が動き出すってのもやっぱり奇妙で面白い部分ですよね。

重ね重ねありがとうございました。
>GMNさま (sakurai)
2009-06-17 12:44:57
ご苦労様です。
映画を企画する、上映するという面白さとともに、大変さも伝わってきます。
病み付きになったでしょう。

戦争というより、ほんとに感じるのは、人との出会いが生み出す、広がり、縁・・を感じますね。このひとつの出会いによって、人生が変わる、運命が変わる・・その面白さや、不思議さを身にしみました。

昨日のYBCも見ましたよ。
しっかり出てましたね。
知り合いのお子さんも、あの中にいたので、親に教えました。見てなかったみたい。
ああやって、また人との出会いが広がり、新しい世界が広がっていく。
面白いですね。
またがんばってくださいね。
懐かしいです (コニコ)
2009-07-07 13:09:20
こんにちは。この映画、2年ほど前に観ました。ちょっと異色な作品でしたね。その後、リンダさんとミリキタリおじいちゃんはどうなったのでしょうね。猫の絵が気に入っています。
TBさせていただきました。
>コニコさま (sakurai)
2009-07-07 20:47:09
ご覧になられてましたか。
だんだんと好好爺になって行くのが、ありありとわかりましたが、なんか反骨の爺さん魂も好きでしたわ。

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