20世紀は自他共に認めるアメリカの世紀だった。帝国主義に遅れをとって、植民地争奪戦には加われず、民族自決などもうたって、イギリスの悪行を目立たせた。第一次と第二次世界大戦の勝利の結果、アメリカが世界の冠たる国になったが、そこから引きづり落とせる国はなかった。
冨と力の象徴の国。その象徴とでも言うべきツインタワーが崩れ落ちたとき、何かが変わる・・・と思った。いい意味でも、悪い意味でも。やられたことのない国は、打たれ弱い。負けに慣れてない。いや、誰だって負けたくはないが、負けたときにそこからどう進むべきかの道を選ぶかが大事になる。
9・11が即、アメリカの負け・・・と言うことではないが、どう見ても負けだろう・・。しかし、負けを認めるわけにはいかない。それはアメリカだから。そして、挽回すべく、ありとあらゆる画策をして、9・11の悲劇を過去のものにするべく、圧倒的で、正義の勝利を手にしなければならなかったのだ。
と言うことで、今年の上半期の一番楽しみにしていた映画がこれ!「グリーン。ゾーン」!!ポール・グリーングラスは言うに及ばず、脚本がヘルゲランド!マットは間違いがないとして、これで面白い・・・・いやすごい映画にならないわけがない。
さて、2003年のイラク侵攻から始まったイラク戦争。圧倒的な物量を誇るアメリカがイラクごときにてこずるはずがない。そう、てこずってなどいなかったのだが、戦争には大義名分がいる。何のために戦争をするのか!それはひとえにイラクのどこかに隠されている大量破壊兵器を見つけるため。
それが戦争の最大の目的だった。世界中がそれを信じ、サダムのおもちゃをいつ取り上げることができるのかを、みな待っていた。しかし、なかなか兵器は現れない。確かな情報だ・・・とのもと、兵器を捜索する隊、ミラー隊長率いるMET隊は、うらぶれた工場に直行。銃撃戦を潜り抜けて、工場に潜入するが、そこには兵器のかけらもない。これで3度目の失敗。
いくら命令には絶対服従のソルジャーであっても、この情報は間違いで、いったいどんな意図があるのかと思うのは、当然だ。しかし、ソルジャーはそう思ってはいけない。命令に従い、勝手なことをしてはならない。勝手なことを思ってはいけないのだ。
そして、また兵器が隠されている情報に基づいて、MET隊はその場所に向かうが、そこで1人のイラク人が、この先で、重要人物らしい人たちが集まって、なにやら会合のようなものを開いてるようだとの話を伝えにくる。
何もないことがわかっている穴を掘ってるのが兵士か?命がけの情報をもとに、挑戦するのが兵士か???ミラーは会合が行われているという場所に向かう。そしてそこにいたのは、重要人物、アル・ラウィ将軍だった。トランプの絵面はジャック。かなりの高官だ。彼を逃がしてしまったが、側近を捕らえた。将軍の居所をはかせるのはそう難しくはない。しかし、そこに政府の横槍が入る。
せっかく捕らえた側近を奪われ、証拠も奪われそうになる。一体、何なんだ?将軍に対する執着と幾度となる兵器のがせねたは、関係があるのか・・・・。そして、ミラーは、唾棄すべき事実に辿り着く。
詳しくは見ていただくことにして、いまや大量破壊兵器はなかったと周知のことになっている。しかし、あれだけ自信を持って兵器があると言い張る根拠は、どこにあったのだろうか。イランイラク戦争のときに、膨大な兵器を提供した後ろめたさか・・・。
ついついなぜあんな世界になってしまったのかを考えると、結論は帝国主義までに行ってしまうので、そこは言及しない。問題は、取り繕おうとして最初に嘘をついてしまい、どんどんと泥沼にはまり、果ては収拾不可能にまで陥ってしまった状況。それが個人のことだったら、せいぜいその周りの人間が迷惑をこうむるだけだが、これをかのアメリカがやってしまったのだ。その甚大な迷惑も考えず。
何度やっても懲りないアメリカは、また似たようなことをするかもしれない。戦争に限らず、国内の不景気も、金があるんだ!あるんだ!と、ないのにあるように見せかけ、嘘をつき重ね、にっちもさっちも行かなくなった。同じように思える。
「ハートロッカー」が、無機的な乾いた冷静な戦争映画なら、こっちは砂漠なのに粘っこい、もつれた戦争に見えた。面白いのが、いつもは悪の権化、陰謀の標本、やたら秘密めいてるCIAが、政府にたてつく正義の人になっている。いや、CIAはいつも正義に向かっているんです!と、言われるかな。
外はロケット弾の飛び交う灼熱の世界なのに、片やビール片手にプールサイドでねっころんで次の戦いの作戦を練っている。唖然としながら見ていたが、いかにもアメリカらしい。それを見事にあらわしていたのが、グレッグ・キニア!いまや、腹に一物ありますよ・・・をやらせたら、この人しかいないくらいにぴったり。ブッシュの懐刀・・・・ってな感じが出てる。
さて、戦争も終わらせ、イラク主導で国家を作らせて行こう・・・と、表面上は思っているアメリカだが、最後に宗教の指導者やら、部族長やら、傀儡政治家やらが、将来のイラクについて、喧々囂々の論議を行うが、何もまとまらず、烏合の衆に化している。いつぞや見た風景とまるで同じ。「アラビアのロレンス」だ。一世紀近くたって、またぞろ同じようなことをしている。でも、それを笑うことはできない。彼らの国は、彼らがつくって行かなければならないのだから。
ミラーに情報を提供したイラクの元兵士のフレディが搾り出すように言う言葉が重い。「俺の国のことは、誰よりも自分たちが思っている。あんたたちより重い」・・・当たり前だが、いまさらのように気づく。
いったい世界は何をやってるんだ・・・。愕然としながらも、映画の面白さに引きこまれた。
◎◎◎◎○
「グリーン・ゾーン」
監督 ポール・グリーングラス
脚本 ブライアン・ヘルゲランド
出演 マット・デイモン グレッグ・キニア ブレンダン・グリーソン エイミー・ライアン ハリド・アブダラ ジェイソン・アイザックス イガル・ノール
冨と力の象徴の国。その象徴とでも言うべきツインタワーが崩れ落ちたとき、何かが変わる・・・と思った。いい意味でも、悪い意味でも。やられたことのない国は、打たれ弱い。負けに慣れてない。いや、誰だって負けたくはないが、負けたときにそこからどう進むべきかの道を選ぶかが大事になる。
9・11が即、アメリカの負け・・・と言うことではないが、どう見ても負けだろう・・。しかし、負けを認めるわけにはいかない。それはアメリカだから。そして、挽回すべく、ありとあらゆる画策をして、9・11の悲劇を過去のものにするべく、圧倒的で、正義の勝利を手にしなければならなかったのだ。
と言うことで、今年の上半期の一番楽しみにしていた映画がこれ!「グリーン。ゾーン」!!ポール・グリーングラスは言うに及ばず、脚本がヘルゲランド!マットは間違いがないとして、これで面白い・・・・いやすごい映画にならないわけがない。
さて、2003年のイラク侵攻から始まったイラク戦争。圧倒的な物量を誇るアメリカがイラクごときにてこずるはずがない。そう、てこずってなどいなかったのだが、戦争には大義名分がいる。何のために戦争をするのか!それはひとえにイラクのどこかに隠されている大量破壊兵器を見つけるため。
それが戦争の最大の目的だった。世界中がそれを信じ、サダムのおもちゃをいつ取り上げることができるのかを、みな待っていた。しかし、なかなか兵器は現れない。確かな情報だ・・・とのもと、兵器を捜索する隊、ミラー隊長率いるMET隊は、うらぶれた工場に直行。銃撃戦を潜り抜けて、工場に潜入するが、そこには兵器のかけらもない。これで3度目の失敗。
いくら命令には絶対服従のソルジャーであっても、この情報は間違いで、いったいどんな意図があるのかと思うのは、当然だ。しかし、ソルジャーはそう思ってはいけない。命令に従い、勝手なことをしてはならない。勝手なことを思ってはいけないのだ。
そして、また兵器が隠されている情報に基づいて、MET隊はその場所に向かうが、そこで1人のイラク人が、この先で、重要人物らしい人たちが集まって、なにやら会合のようなものを開いてるようだとの話を伝えにくる。
何もないことがわかっている穴を掘ってるのが兵士か?命がけの情報をもとに、挑戦するのが兵士か???ミラーは会合が行われているという場所に向かう。そしてそこにいたのは、重要人物、アル・ラウィ将軍だった。トランプの絵面はジャック。かなりの高官だ。彼を逃がしてしまったが、側近を捕らえた。将軍の居所をはかせるのはそう難しくはない。しかし、そこに政府の横槍が入る。
せっかく捕らえた側近を奪われ、証拠も奪われそうになる。一体、何なんだ?将軍に対する執着と幾度となる兵器のがせねたは、関係があるのか・・・・。そして、ミラーは、唾棄すべき事実に辿り着く。
詳しくは見ていただくことにして、いまや大量破壊兵器はなかったと周知のことになっている。しかし、あれだけ自信を持って兵器があると言い張る根拠は、どこにあったのだろうか。イランイラク戦争のときに、膨大な兵器を提供した後ろめたさか・・・。
ついついなぜあんな世界になってしまったのかを考えると、結論は帝国主義までに行ってしまうので、そこは言及しない。問題は、取り繕おうとして最初に嘘をついてしまい、どんどんと泥沼にはまり、果ては収拾不可能にまで陥ってしまった状況。それが個人のことだったら、せいぜいその周りの人間が迷惑をこうむるだけだが、これをかのアメリカがやってしまったのだ。その甚大な迷惑も考えず。
何度やっても懲りないアメリカは、また似たようなことをするかもしれない。戦争に限らず、国内の不景気も、金があるんだ!あるんだ!と、ないのにあるように見せかけ、嘘をつき重ね、にっちもさっちも行かなくなった。同じように思える。
「ハートロッカー」が、無機的な乾いた冷静な戦争映画なら、こっちは砂漠なのに粘っこい、もつれた戦争に見えた。面白いのが、いつもは悪の権化、陰謀の標本、やたら秘密めいてるCIAが、政府にたてつく正義の人になっている。いや、CIAはいつも正義に向かっているんです!と、言われるかな。
外はロケット弾の飛び交う灼熱の世界なのに、片やビール片手にプールサイドでねっころんで次の戦いの作戦を練っている。唖然としながら見ていたが、いかにもアメリカらしい。それを見事にあらわしていたのが、グレッグ・キニア!いまや、腹に一物ありますよ・・・をやらせたら、この人しかいないくらいにぴったり。ブッシュの懐刀・・・・ってな感じが出てる。
さて、戦争も終わらせ、イラク主導で国家を作らせて行こう・・・と、表面上は思っているアメリカだが、最後に宗教の指導者やら、部族長やら、傀儡政治家やらが、将来のイラクについて、喧々囂々の論議を行うが、何もまとまらず、烏合の衆に化している。いつぞや見た風景とまるで同じ。「アラビアのロレンス」だ。一世紀近くたって、またぞろ同じようなことをしている。でも、それを笑うことはできない。彼らの国は、彼らがつくって行かなければならないのだから。
ミラーに情報を提供したイラクの元兵士のフレディが搾り出すように言う言葉が重い。「俺の国のことは、誰よりも自分たちが思っている。あんたたちより重い」・・・当たり前だが、いまさらのように気づく。
いったい世界は何をやってるんだ・・・。愕然としながらも、映画の面白さに引きこまれた。
◎◎◎◎○
「グリーン・ゾーン」
監督 ポール・グリーングラス
脚本 ブライアン・ヘルゲランド
出演 マット・デイモン グレッグ・キニア ブレンダン・グリーソン エイミー・ライアン ハリド・アブダラ ジェイソン・アイザックス イガル・ノール
多分にこの監督とか、脚本家が好きなので、ひいき目もあるかも。
で、嫌いな監督なんかが同じようなものを作ると、きっとこきおろしたりしかも。
人間なんて勝手なもんですからね、主観的に受け取って、それを好き勝手に書いてますが、それはそれでいいのでは・・と思ったりも。
なんだか、よくわからなくなってきましたが、正解はわからないけど、こうやって作って、いろんなことを考えてもらう、、、それがいいように思います。
こちらに残そうと思うコメントでも色々な事を草稿しておりましたが…全部割愛。
この映画がアメリカの戦争に物申す…ものだとすれば、アクション娯楽作品として作られている時点でそれ自体が言い訳がましく、ゆえにあまり深く考えたくない(考えてあげたくない)というのが今のところ思ってる事かな。映画自体は嫌いじゃないんですけどね。
では、また来させていただきます。今後とも宜しくお願いいたします。
なかなかの一本だと思います。
石油と軍需産業と目くらましがキーワードのイラク戦争の経緯の一端が、非常に分かりやすく描かれた作品でしたねぇ。中立の視点を崩さないグリーングラスらしい作品!
入院騒ぎ、大変でした。
なにより健康一番ですね。
マットアレルギーを脱せられたのではないかと想像いたします。
描き足りないのではとか、いろいろ言われてますが、あたしはえらい面白かったです。
ああならざるを得なかった道なのですが、あたしの常に突き詰めてる興味とぴったり合致で、ものすごく波長が合ったのでした。
ちょっと、家人に入院なので、ばたばたしておりました。
ひさびさに選んだのがこの映画。
マット苦手なのに、見ごたえありました。(特に後半)。
ちょっと考えさせられ、sakuraiさんの評を読んだら、うなづくことしきり。
アラビアのロレンス。。。深いです。
ほとんど大部分、オールモストの人たちの思惑ではなく、ごくごく一部の人間の妙な力によって、国や戦争や経済が動いていく・・・・。
なんだか自分たちはなんなんだろう・・と、イラつかせられる。そこも描きたかったのでは、などと思います。
それで命を落とす兵士なんか、浮かばれませんよね。
情報に飛びつく、それが嘘でも構わない。
景気が上向かないから、上向くきっかけになりそうな
情報に飛びつく、それが嘘でも構わない。
もちろん経済に関してはきっかけが嘘でも本当に
それが上向くきっかけとなったりすれば嘘から出た
誠になるワケだけど、こと戦争に関してはそうも
いきませんものね~(;・∀・)
大半の国民は、自分たちは金持ちなんだ、強いんだと思いこまされ、大規模なマインド・コントロールの傘の中にいるような。
操ってる本人は、悦に入ってるんでしょうかね。
確かにサブプライムローン問題も似ていますよね。
イラク戦争も石油利権にまつわるというのは取りざたされていますし。
どうもアメリカの一部上層部の数パーセントの思惑で世界が影響を受けているかと思うと納得いかないですねえ。
他国民だけでなく、アメリカの大半の人は迷惑を被っているんですよね。
変わりそうだけど変われないのかなあ。
日本も同じですけれど。
勝てば官軍ですっと歩んできましたからね。
ベトナム辺りから、ようやく負けを知ったかもしれませんが、それもぜんぜん生かしてないように思えます。
CIAがいい子ちゃん過ぎたのが、うそ臭いゆえんかもしれませんが、こうやって描くこと自体が、評価されるのでは。。。と、ちいと固いかな。
そうですね、アメリカの政策は常に“勝者の理屈”ですよね。
“大国のエゴ”って言うか“大国の指導者のエゴ”で、国際社会が回っているわけで。
『何が正義か?』ってのは、常に持っておかないといけないですね。ミラーのように(なかなか難しいですけど)。
あたし的には、えらいおもしろかったんですよ。
しゃっきりしないとこもありましたが、今の政治状況から考えると、ここまで政治的で、かつエンタメ性も含んでるのを作れるぎりぎりのあたりだと思います。
強ければ、観やすかったような、、、。
ポール・グリーングラス作品は、
「ユナイテッド93」は結構好きだった
ですけれどね。重くても観入るところまで
私は感じなかったですね。
ボーンシリーズはあまり好きじゃないですわ。
まあ、あんないい兵士がいるとは思いませんが、そこがせめてもの良心だったのかなとかね。
一番の言いたいとこは、フレディの言葉で、その思いを表すのもうまかったと思います。
暗殺されちゃまずいでしょうから、ちょっとよいショかな・・。うそです。
今、基地問題で、いろいろと取りざたされてますが、基地の中もあんなんなんでしょね。ふざけんな!です。
フレディの「お前たちにこの国の事は決めさせない。」の一言が響きましたよ。
なるほど、ミラーに堂々と味方するCIAの彼の立ち位置はちょっと面白かったかもしれません。
戦争中のイラクのど真ん中にあんなリゾートを作ってしまう国、それがアメリカなんですね。