迷宮映画館

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ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

2008年06月04日 | さ行 外国映画
アメリカ西部の岩のごつごつと荒れ果てた土地。そこで、穴倉に入り、こつこつと岩を叩く男。わずかな金を求めて、骨を折り、ズタぼろになり、手にするのはわずかなお金。

ゴールドラッシュに沸いたのは半世紀も前だ。カリフォルニアに金鉱が見つかり、人も住めないような荒野だった西部は、瞬く間に人が集まってきた。しかし、その金ももうほとんどない。次に人を呼び寄せるのは20世紀の魔法の水、石油だ。

露天の手掘りの油井の中に入り、泥と油にまみれた真黒い顔で、にんまりと笑う。この臭い水は夢のような金をもたらしてくれるはず。

着々と油を掘り出し、その名声とともに、おこぼれを与ろうとする輩や、自分のところを掘ってくれと、さまざまな人間が群がってくる。どれも欲の皮のつっぱらかった、金の匂いに誘われて、わらわらと集まってきた人々。

もともとが一旗揚げようと、この地にやってきたものばかりのはずだ。現状に満足し、欲に見向きもしないのだったならば、まずこの地にはいないだろう。

その中で成功した一人の男、ダニエル・プレインビュー。彼は努力をした。必死で働き、苦労し、万全の態勢を整え、賭けに勝ち、周到な準備をし、十分な財産を築く地位に昇った。

それがいいとも、悪いとも描いてない。ただ、ひたすらに油を掘った男がそこにいる。その彼には、必ず対峙するものがあらわれてくる。彼の仕事の邪魔をする、注意の足りなかった作業。金しか信じない男に、神の存在を押し付ける伝道師。その後、メジャーに成長する大企業の甘い誘惑。自分の家族だと名乗る男。そして、自分が育ててきた分身ともいえる男。

それらと真正面に対立し、戦い、生きぬく一人の男。その男が行きついた成功には、何もない。幸せな家庭も、豊かな笑顔も、笑い声も、温かなぬくもりも何もない。だから不幸か・・・・。それすらもわからない。


とんと英語に造詣の深くない私は、この題名の持つ意味がどうしてもよくわからず、映画を見終えたらわかるのだろうか・・・と、思って臨んだのだが、わからずじまいだった。

英語の先生に意味を聞いてみたが、どうも要領を得ない。ここは一番ネイティブに。彼はすぐさま『ファイティング・ポーズ』を取って見せた。すなわち争い。バトル、行きつくとこの戦争・・・・。いずれは血を見る・・。これは人間が生み出してきた戦いのことだったのだ。

人間は自分が可愛い。自分の命を守る。自分がどう幸せになるかを目指して生きている。「私は他人のために生きてます!」などと胸を張って、いけしゃあしゃあと言う人を信用できるだろうか。

この映画に登場する人は、皆自己を守り、自己のために生きていくために、我を通す人たちばかりだ。その姿はとことん醜く、嫌悪感を感じさせるような人たちだ。しかし、それこそが紛れもない人の姿であり、眉を顰めながら、実は自分の姿のどこかを見せつけられたように不愉快になる。

PTAの映画は、いつもテーマが大きく違う。単純な愛の物語があったと思えば、予想もできない大どんでん返しがあったり、やられた!と思わせるような愛の結末などなど。どれもみな違うタッチで、個性的だ。そしてまた全く違う切り口から見せられた人間の姿。

うーん。。。。うなるしかできない自分が情けないが、凄い。凄いものを見てしまった。ただし、その凄さは、ほとんどが鬼気迫るダニエル・デイ=ルイスがあってこそ。この人の存在感のすさまじさに敬服。その人物の生きざまが映し出されていた。

やっぱり靴職人なんかしてないで、演技をしてくれねば!でも、こうなってしまうと、生半可な役では使えない。監督も心して使わないといけない俳優と言うのも、複雑だ。

この鬼気迫る演技をした彼が、オスカーをいただいたとき、あっさり女王陛下に跪くあのおしゃれな姿。こういうことをさらっとしてしまうのが、ダニエルの真骨頂。相変わらず、すさまじい役者さんです。

◎◎◎◎

『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』

監督・脚本 ポール・トーマス・アンダーソン
出演 ダニエル・デイ=ルイス ポール・ダノ ケヴィン・J・オコナー キアラン・ハインズ ディロン・フレイジャー

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10 コメント

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なるほど (miyu)
2008-06-04 23:04:20
いきつくさきは血ですか。
ダニエル・デイ・ルイスの怪演あってこその映画ですが、
確かにすさまじいものを見せられたってのは
彼の演技だけでなくPTAの紡ぎ出す世界観にも感じましたね。
>miyuさま (sakurai)
2008-06-05 12:43:08
原作の「OIL」だけじゃあ、ちょっと伝わりませんもんね。
じゃあ、どう訳したらいいのか、またまた微妙だし。
でも、どっちにしても、アメリカ的だったです。
アメリカならではだろうし、アメリカという国が前提にあったように思えました。
それをさらっとやっちゃうダニエルですわ。
やはり、この人はすごいです。
いや~ (GMN)
2008-06-08 20:40:04
凄かったですね。個人的には「ノーカントリー」よりもこっちにアカデミー賞あげたいくらいでした。

主人公嫌な奴だけど、絶対的な勝利者に対してこちらは何も言い返せないっていうようなもどかしさがありますね。

アメリカ、或いは資本主義(更に妄想すれば石油の発掘によって加速した物質文明みたいな物としても捉えられるような気も)そういった物に対しての「皮肉」なのか「悲観」なのかは他のPTA作品観て無いのでちょっとわかんないですけど、長尺が気にならない面白さでした。
>GMNさま (sakurai)
2008-06-09 16:26:38
映画的には私もこっちかなと思いましたが、きっとなんかいろいろとあるんでしょう・・。
人生、勝ってなんぼですが、あの油・・・もったいないと思ったのは、今のガソリン値の高さかなあ。
これまでのPTA作品では、資本主義のなんとか、物文明に対する・・・なんていうのはなかったと思うので、結構意外でした。
こういうのもいける!と思いましたがね。
sakuraiさんへ♪ (mezzotint)
2008-06-19 01:00:55
sakuraiさん
いやぁ~ほんまに最後の最後まで凄かった(^_^;)
ダニエル・ディ=ルイスのオスカーゲットは当然って感じです。靴職人やりながら、俳優業もやる・・・。面白いですね。おっしゃるように、役者業だけでもいいのにね。でも本人にとったら、バランスがとれていいのかも?それにしてもダニエルさん、凄い!迫力!もう言うことなしです。ポール・ダノもなかなか軟弱そうなのに、えげつないやつでした。
>mezzotintさま (sakurai)
2008-06-19 08:06:16
彼に言わせると、演技も極めちゃったし、自分がやりたいことをやる!らしいですが、彼の作った靴も凄そうです。どんなんだろう??
彼の出た映画はほとんど見てますが、どれもダニエル・ディ=ルイスなんだけど、どれもみな役柄にはまってる。本当にすごい人です。
でも、一番好きなのは超かっこええ「ラスト・オブ・モヒカン」のナサニエルかもです。
これまた (メル)
2008-08-22 21:27:27
すごいもんを見せてもらった・・という感じでした。
私も唸っちゃいました。それになにやら見終わったら相当疲れてました(^^;;)
多分私の場合その原因はあの音楽にあるかと(^^;;)
でも、ダニエル・デイ=ルイスは本当に素晴らしかったです!!!
あまり彼が出てる映画を見てなくて(^^;;) 「父の祈りを」で感激したんですが、sakuraiさんが上↑で書いてらっしゃる「ラスト・オブ・モヒカン」を見てないので、これは是非とも見なくては・・とまたまた楽しみが増えました♪
>メルさま (sakurai)
2008-08-23 20:43:19
本当に!
みてどっとと、疲れました。疲れるために映画見に行ったのではないのですが。
ひとえに、ダニエル・デイ・ルイスの演技、存在感、圧倒的なカリスマを、どの映画でも感じます。
この映は、ポール・ダノもかなりでしたが。
ダニエル・デイ・ルイスが出ている映画は、どれも見ごたえありますが、意外性のある「ラスト・オブ・モヒカン」、彼らしいスノッブな貴族の「眺めのいい部屋」、「エイジ・オブ・イノセンス」も結構好きです。
「存在の耐えられない軽さ」もいいです。
何気の「ギャング・オブ・ニューヨーク」も、らしくっていいですよ。
どうぞ、見てみてください。
こんばんは (David Gilmour)
2008-09-05 23:02:30
いつも、トラバありがとうございます。

そうですよね、この映画のダニエル役の男優、初めて見たのですが、相当なインパクトというか、その存在感はすごかったですよね。

それでは、またよろしくです。
>David Gilmourさま (sakurai)
2008-09-06 09:20:01
こちらこそ、いつもありがとうございます。
ダニエル・デイ=ルイスはデビューのときから、ほとんど全作品見てますが、どれも素晴らしく、本当にすごい役者さんだと思います。
歴史に残る役者だと思ってます。
ほかの作品も見ごたえありますんで、どうぞ。

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