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インファナル・アフェア3 終極無間

2005年04月16日 | あ行 外国映画
ヤンが殉職してから十ヶ月、一人残されたラウは、「自分は警察官として生きる」と言う道を選んでいた。ヤンを殺したラムをやむなく殺害した事によって、ラウは一時的に左遷されていたが、ラムは潜入マフィア、ヤンも特別捜査官であった事が判明していた。しかし、他にも潜入マフィアがいるとのラムの言葉を聞き、潜入マフィアを抹殺するラウだった。

保安部のエリート警視、ヨンの存在がどうしても気になるラウ。かつて、マフィアのボス、サムと取引していた本土のシェンと、ヨンはつながりがある。ヨンこそ潜入マフィアなのではないか?保安部に監視カメラを取り付けて、ヨンを見張るラウ。果たしてヨンは本当に潜入マフィアなのか?警官として生きると決意したラウの運命は?

ストーリーを書くのももどかしいくらいの胸に迫る展開だ。低迷していた香港映画の起死回生をあっさり成し遂げた、いわずとしれた三部作の完結編。1作目の手に汗握る白熱した流れと、トニー・レオン演じるヤンの寂しげな瞳に完全に打ちのめされてしまった。

次は、セオリー破りの、時を遡る2作目。誰しも若いときを経てきた。その若さゆえが生み出してしまったのちの時代の地獄。無垢な目が見たものはなんだったのか。希望に燃えた目が、哀しみに満ちた目に変わっていく様が、見るものに突き刺さる。そして、明らかに2作目は、黒社会のドンになるサムと、やり手警視のウォンの物語だった。のちに鋭く対立する彼らが辿る道を知っているだけに、この描き方はうならせる出来だった。

そして、本作。ヤンの殉職前に遡り、あるいは今のラウを描く。時の交差が少々わかりにくい展開にしているが、そこは差し引いても、本のうまさに感嘆してしまう。今までの香港映画の弱点だった、シナリオの甘さを見事に払拭した。緻密な展開、うならせる布石、どれも極上のサスペンスだった。

その展開をしっかりと受け止めた役者がまた素晴らしい。すでにあの世の人になってしまったヤンは、本作でどこか突き抜けたような明るさがにじみ出ている。背負ってきた重い荷物から解き放たれたとでも感じるかのようなヤンだ。これはこれで『3』の思想だ。

白眉はなんといってもアンディ・ラウのラウ刑事。取り付かれたようにヨンを追う姿には鬼気迫るものがある。そして時折見せる放心したような表情。ヤンを知り尽くし、ヤンをとことん理解し、ヤンに同化してしまった自分。しかし、業から逃れる事は出来ない。すべてを背負い、生き残ってしまった地獄に生きる男だ。かわいた表情に隠されたあまりの哀しさに、一筋の涙がこぼれた。泣くというのではない。本当に一滴、こらえにこらえたあとに、流れた一滴の涙がこの映画をあらわしたような気がした。

『インファナル・アフェア3 終極無間』

監督 アンドリュー・ラウ アラン・マック 
出演 アンディ・ラウ トニー・レオン ケリー・チャン 2003年 中国(香港)作品


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