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リアリティのダンス

2014年09月11日 | ら行 外国映画
見てる順番で書いてきて、とうとうこの映画になってしまったのだが、何をどう書いたらいいのか、どう評したらいいのか、アタシごときが評していいのか、そんなおこがましいことしていいのか・・・と、いまだどうしたらいいのかわからない状態でいる。

まず、生きてるうちに、ホドロフスキーの新作にお目にかかれるとは!!!という夢のような出来事であること。じゃあ、自分はホドロフスキーの何を知っているのかというと、ただ一本、劇場でみた「サンタ・サングレ」。これに打ちのめされて、ホドロフスキーという名前が刻印されたのだが、他には・・と言われると何も言えない自分がいる。

「エル・トポ」と「ホーリー・マウンテン」は所持しているが、私はあくまで映画はスクリーンで見るものであって、DVDビデオで家のテレビで見た作品を、同じようにはどうしても並べられない。なので、新作を見ることができた!もうそれだけで満足というか、至福というか、ただ受け入れるということでいい。ほかにそんな監督がいるだろうか・・・と鑑みても、いない。孤高の存在だ。


映画は監督自身が育った1920年代のチリの田舎町が舞台。ロシア系ユダヤ人であることでいじめられてきたアレハンドロ少年。ピノキオと呼ばれ、バカにされたと言うが、アレハンドロを演じる少年が、あまりにぴったりで、儚く、美しく、寂しげだ。この少年を見つけたことで、もうこの映画は完成しているように思えた。

豊満な母は、アレハンドロに金髪のかつらをかぶせ、自分の息子を父と呼ぶ。厳格な父は、そんな息子をふがいなく思い、殴りつけ、麻酔なしに恐怖の歯の治療を行わせる。でも、思い返すと、自分がちっちゃいころって、歯の治療に行っても、そうそう麻酔ってのはなかったような気がする。自然、私たちの根性は鍛えられていたのかも。

街の様子が映し出される。ロシアからの移民。明らかにこの街では異端だ。そしてユダヤ人。スタート地点から、自分は周りとは違うと否が応でも知らされる。しかし、そこにいる少年はごくごく普通だと思っている。周りにいる普通の少年と変わりはない。しかし、そう生きることを許されなかったのはかぞくのせい?

街にはさまざまな人がいる。貧しい友人、鉱山の事故で手足を失った人たち、地を這うように生きている人たち、そんな雑多な中で多感な少年が見つめてきたものは人間の弱さであったり、強靭さ、あるいは滑稽な姿。理不尽だったり、偏愛だったり。

どうにかストーリーをなぞって書こうとしたのだが、するする行かない。どう書いたらいいかわからなくなる。なんどか、書いたり、削ったりと、紆余曲折。書こうとしてから、はや何日・・・・・。結論、書けない。やめます。

パンフをつらつら読んでいたら、前回私が書いたことと、まるで逆のことがあった。「過去は変えられる」!!というのだ。(以下、引用)「私にとって過去は変えられると思っています。過去というのは主観的な見方だからです。この映画では主観的過去がどういうものか掘り出して、それを変えようと思ったのです。・・・・・」

妙にすとんと自分の中で落ちた。客観的な過去は厳然としてあるわけで、自分の中の思い出の過去はいくらでも変えていいんだ。あれほど昔のことをさらさらと語る大先生の脳には、きっちりとした過去が収納されているはず。そんな夢のような大先生の過去を、彼流の解釈で、人生の一部をたどらせてもらった。映像として見せてもらった。この映画はそういうことなんじゃないでは。とにもかくにも、やはり素晴らしいです。

次回作も作っているとか。また見れると思ったら、まだ死ねないわ。

◎◎◎◎○

「リアリティのダンス」

監督 アレハンドロ・ホドロフスキー
出演 ブロンティス・ホドロフスキー パメラ・フローレス イェレミアス・ハースコビッツ アレハンドロ・ホドロフスキー バスティアン・ボーデンホーファー


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6 コメント

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こんにちは (ナドレック)
2014-09-15 08:08:31
そうですよね、歯の治療に麻酔なんてしませんでしたよね。
チリでは1920年代から麻酔していたのでしょうか。
つか、麻酔なしに耐えた日本の子供はホドロフスキーのようになれたのでしょうか。

何はともあれ、ホドロフスキーの新作が観られるなんて嬉しいですね。
次作も楽しみです。
>ナドレックさま (sakurai)
2014-09-15 08:52:51
ふっとんで。
夜にいっぱいひっかけながら、どうにも進まず書いてたもんで、まちがいだらけでお恥ずかしい。
UPする前に、もっかいちゃんとみろよ!といつも自分で思うんですが、情けない。
なんともまとまらず、そっちも情けないです。

なんだか意味不明になってしまいましたが、お許しくださいませ。

子供のころ、歯医者は本当に恐怖で、おっきくなったら、歯医者になって復讐してやる!と思ってたちっちゃい自分を思い出しました。
どこか優しい (rose_chocolat)
2014-10-01 16:24:36
けったいな話・・・かもしれないけど、
その裏に潜む悲しみやら、人への温かい目線を感じるんです。
巨乳お母さんの、オペラ風な会話も好きだなあ。
いい作品でした。
>rose_chocolatさま (sakurai)
2014-10-06 13:34:22
いっぱい、コメ、TB、ありがとうございます。
感謝です。

あのお母さんには、ほんとに驚愕でした。
女優さんじゃないというのを聞いて、さらにびっくりでした。
そういう人を見つけてくるのもまた才能なんでしょうね、監督の。
コンプレックスこそクリエイティブの源 (西京極 紫)
2015-01-22 22:59:53
幼少期に欲圧されたり、鬱屈があったりすることが
創作のエネルギーになるのかもしれません。
映画の少年アレハンドロが本当に監督自身の体験ならば、
こういう映画を撮るってのも肯けますね。
>西京極 紫さま (sakurai)
2015-01-26 13:18:12
彼の底知れないエネルギーの根源を見た気がします。
鬱屈すると、皆監督になるわけではないでしょうが。
圧倒されたのと、ぶれないスタンスと、まだまだイケる!というのが見れて、本当によかったです。

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