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太平洋の奇跡 ~フォックスと呼ばれた男

2011年02月16日 | た行 日本映画
1944年、既に日本軍は絶望的な戦いを太平洋各地で行っていたが、7月のサイパン島での玉砕は特に大きかった。42年のミッドウェー海戦の敗北から、連戦連敗。そして、7月7日のサイパン島玉砕に至る。

その後、レイテ島の絶望的な戦いを経て、45年の硫黄島での守備隊全滅は、3月。そしてアメリカ軍はいよいよ沖縄に上陸・・・というのが、太平洋をじわじわと攻めてきたアメリカ軍の道のりだ。

どの戦いでも、物量圧倒的なアメリカに対して、絶望的な戦いを挑んでいった日本軍。それは無謀そのものとしか思えないが、無謀であってもそうしなければならなかったのがあの時の状況であり、そんな戦い方を強いた日本のあり方が問われるべきで、一兵卒の行動に、責任を問うわけにはいかない。

日本兵にしみ込んでいたのが「生きて虜囚の辱めをうけず・・・」という戦陣訓。精神は買う。戦いをしているんだから、勝って何ぼの世界だ。負けることなどかけらも考えてはならない。負けてそこで捕虜になるんなら、自爆して一人でも敵を倒せ!と叩きこまれたのが、日本軍だった。

捕虜になろうとせず、自決を選ぶ日本の兵隊の気持ちを全く理解できない米司令官に対して、将棋のルールで説明したのが、新しく赴任したルイス大尉。日本に留学したことがあり、日本の文化に精通していた彼。ルイスが赴任して間もなく7日の総攻撃に遭遇するが、総攻撃の前に指揮官たちが自決したことも、司令官には理解を超える。

その行動もわかりやすく説明するルイスだが、日本人よりも日本のことをわかっている。こんだけ理解できた人がいたのか!と思うくらいの理解者だが、これは映画全体の狂言回しの役目でもあるので、ものわかりがとってもいい。

総攻撃で、日本軍は全滅したはずだったが、生き残りがいた。多数の民間人と、なんとか命がたすかった軍人たちの200人あまり。彼らは、協力して野営地を作り、身を潜め息を殺して生活する。

その中で指導的な立場に立ったのが先の総攻撃で生き残った大場栄大尉だった。サイパン島での玉砕はよく知られたことで、最後に追い詰められた島の住民たちが、岬から飛び降りて自決したのも映像まで残っている。「バンザイクリフ」と名づけられたが、そこまでの行動をとらせるように教え込んだ教育って言うものが、つくづく恐ろしい。

大場大尉にあったのもほかの日本人と同じ「生きて虜囚の辱めを受けず・・」には、違いないが、死ぬために戦うのではなく、まず生きて戦うことが一番大事だ!という考えが行動の根っこにある。戦うのも何も、まず生きてなければ!生きてなんぼだ。生きるための知恵こそがみなを助け、敵を陥れていった。

1年半に渡った山中生活で、アメリカ軍をケムに巻いた・・・というのは、それほど多くはなかったように見えたが(時間の都合上か)、何より耐え抜いた力ってものが大きかったのだろうと感じた。

最後に投降して、ルイス大尉が大場大尉に対して、恐れを抱いていた、と言った時、「単に生きようとしただけ」と答えるが、それが何より大事なこと。戦争は、その大事なことを忘れさせてしまったのが一番の罪なのではないか。

映画は、非常にわかりやすかった。複雑な性格を持った人間は皆無。そのキャラもはっきりと性格が描かれてわかり安すぎ。戦争ものの常で、泥だらけになると、誰が誰やらわからなくなるのが難点。リアルさも大事だが、顔も大事かなと。

軍隊で何より重要な、上官の命令に従うことによって彼らは生き延びることになるが、どんな状況に追い込まれようと、軍人としての規律を守り、整然としていた彼らの姿は、じんときた。さすが、明治、大正の人だ。

南方の島で生き残り、戦争が終わったのも知らずに生き延びていた人は大勢いたという。横井さんだったり、小野田さんだったり、その後見つかって話題になった人もいたが、多くは亡くなり、現地の人間となり、誰もが戦争を引きずって生きていった。でも生きてこそ!だ。

ウィンド・トーカーズのときにサイパン島での悲惨な戦い、その後の生き延びた人生をつづったサイト、、「サイパン島の怒号」を見つけました。その方から、当時掲載の許可を得たので、ここにも掲載します。よろしければ、ご覧くださいませ。


戦争もの、、って言うだけで、きっと若い方は敬遠なさるんではないかと思います。見てらっしゃる方々も、年配の方々が多かったです。こういうのこそ、若い人が見るべきなんだけどなああ。。。と思います。

◎◎◎○

「太平洋の奇跡 ~フォックスと呼ばれた男」

監督 平山秀幸
出演 竹野内豊 ショーン・マクゴーウァン 井上真央 山田孝之 中嶋朋子 岡田義徳 板尾創路 光石研 柄本時生 近藤芳正 酒井敏也 ベンガル トリート・ウィリアムズ ダニエル・ボールドウィン 阿部サダヲ 唐沢寿明

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8 コメント

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Unknown (KLY)
2011-02-17 20:11:12
そうですよね、いかに死ぬかを考えていた当時の軍人の中で、彼だけはいかに生きるかを考えていた。そんな中で日本人の誇りを守りつつ、皆の命を救う手段を考えていたところがアメリカ人から見たら特異に映ったんでしょう。あの最後の行進は何だかやけに泣けました。
竹野内さんて普段は正直芝居が上手いとは思えないのですが、今回は朴訥な感じがとてもよくあっていたと思います。
>KLYさま (sakurai)
2011-02-18 17:16:34
私もあの最後の行進は、何とはなしに泣けてしまいました。
どんな時でも誇りだけは失わず、その誇りを大事にしてくれた敵軍。尊厳を大事に描いた良作でした。
誰だって死にたくなかったんだよなあ。。。ってつくづく思いましたわ。
竹野内さん、好演でした。役柄がぴったりはまってた。
生きるということ (mariyon)
2011-02-19 22:21:09
こんばんはーー。山田ひもつきTBmariyonです~~(笑)
すみません~~昨日、コメントを書いてTBしたはず…だったのに、TBしかできていませんでした。昨日のコメ…何を書いたかよく覚えてないというのも。。。(-_-;)

こういう状況下にあっては、生きることのほうが困難ということはあると思うのです。
200人もの人間の命あづかる最高指揮官に突然なってしまった大場大尉は、皆を誇りをもって生かそうとした、素晴らしい人間だった思います。
あの剣を渡すシーンは、不思議な東洋の民族の文化を尊重するアメリカ人の気持ちになって見てしまいました。
>mariyonさま (sakurai)
2011-02-20 22:39:47
ははは!これから山田君映画がじゃんじゃきそうですが、そのたびに紐を引っ張ると、mariyonさんが出てくるわけですね。了解しました。

なまじ、たくさんの民間人がいたというのが、生きねば!という思いになって行ったのでは、と想像します。
民間人でも、軍人でも、日本人ってちゃんとしてますよね。ちゃんとしてるって、変な表現だけど、まずそれを感じた。誇りがあるからこそ、無謀なことはしないし、尊厳持ってる。
尊厳を大事にしてくれた米兵に、感謝でした。
奇跡。。 (kira)
2011-02-26 01:39:03
ろくな装備もない僅かな生き残りの兵を束ねて、
200人あまりを隠し、抵抗を続けた奇跡、、じゃなくて、
あの最後、敵同士がお互いを尊重する瞬間が訪れたことが奇跡。
さらに、65年経って、当事の敵国が一緒にひとつの映画を協力して撮る奇跡。

胸を張り、軍歌を歌いながら「上官の命により」という大義をみんなに与えた。
そこに堅いだけじゃない大和男の優しさも感じられ、ぐっと来ました。
>kiraさま (sakurai)
2011-02-27 22:35:54
そうですねえ。
まるで義士のような人たちがアメリカ軍をほんろうしたことが奇跡なんではなく、お互いを認め、尊敬し、尊厳を認め合ったあの瞬間が奇跡なのかもですね。
なにより、日本人を一番理解していたのは、米兵だったってのも興味深かったです。

最後の兵隊の矜持が見えたあの場面は、よかったですね。あたしも不覚にも、ぐぐっと来て、涙してました。日本人でよかった・・と、ベタに思ってしまいました。
こんばんは!お久しぶりです~ (アイマック)
2011-08-28 00:05:19
DVDでみました。
こういう史実があったとは、今まで知らなかったし、
あの時代の日本人に潔さを感じます。
そうそう顔が泥だらけになると、区別つかなくなるのは戦争映画の常ですねー。
竹野内豊だけはイケメンなので、わかりやすかつたですが^^;
>アイマックさま (sakurai)
2011-08-28 20:23:08
お久しぶりです!!
これって、今年の2月だったんですね。なんだかずいぶん前に感じます。
怒涛の半年でしたから。
なんでしょ、今の日本人とは根本的に作りが違うような、明治の男だなあ~と思いました。
誰が誰だかわかんなくて、エンドロールで、あぁ、この人だったのねぇって感じでした!

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