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初恋

2006年06月13日 | は行 日本映画
昭和の大事件『三億円事件』。この事件の実行犯は女子高校生だった・・・。
孤独な少女と、体制に一泡吹かせたいと思っている大学生。角材振り回したり、デモに参加しても何も変わらない。あいつらは痛くも痒くもない。何が政府に打撃となるのか。政府の面子をつぶす事。なるほど・・・。

親に捨てられ、叔母の家で孤独に暮らすみすず。無口で近寄りがたい雰囲気だった彼女がどんどんと変わっていく。久しぶりに会った兄に「力になる」といわれて通い始めたジャズ喫茶。ここにたむろする兄の仲間たちといる事がなんと居心地のいいことか。人との絆を始めて味わう。

仲間の中でみんなと交わろうとしない、すこーし離れたところでランボーの詩を読む岸。彼にどんどんと惹かれていくみすずは、岸から大胆な計画を持ちかけられる。あいつらに一泡ふかせようぜ。

小学校2年の時だったろうか、『三億円事件』が起きたとは。たかだか7,8年しか生きていない自分にとって、三億円と言う数字は理解を超えていた。三億円って一体何円?10円握りしめて駄菓子屋に行って十分欲しいものが買えた。20円のアイスクリームなんて贅沢の極みだった。因みにホームランバーは5円だったような気がする。100円札には板垣退助が鎮座ましまし、100円という紙のお金が存在感を誇示していた。

そんな頃の三億円というのは理解を超えた犯罪、まさに夢の中で起きた出来事だった。良くぞやったと喝采を上げるもの。あるとこにはあるんだと思ったもの。騒然とした世の中で、殺伐とした事件と言うよりは、石川五右衛門的な意味合いがあったかもしれない。各家のポストにお金入ってるんだって、なんて流布も聞いたような覚えがある。結局、犯人もお金も見つからないまま、時効を迎えた。

実はこんな真相だったのかもしれないと思うのも自由だ。あまりに大胆な犯行は、突拍子もない犯人像を思い浮かべるのに十分な事件だ。しかし、映画では事件のことはあまり重要視していない。そう至った少女の恋心と成長物語になっている。

誰にでもあるはずの一生に一度の恋。それに出会ったとき、何かが出来る。何でもできると思わせた何かが生まれる。史上まれに見る大胆な事件が何を結実させたのかは分からない。結実させなかったのかもしれない。そのあやふやななんとも不安げな状況と時代を表していた。

デモ、でもあやふや状況を見事に表しすぎて、どうにも切れがない。騒然としていた時代の喪失感が感じられらない。時代状況をとにかく表すのにエネルギーを使いすぎて、映画としての力がない。懐かしの初代カローラに古臭いネオン。何を描きたかったのか。時代を描きたかったのか、事件の真相を描きたかったのか、少女の恋を描きたかったのか。定まらない。

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4 コメント

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描きたかったもの (kimion20002000)
2007-02-21 23:27:18
TBありがとう。
それぞれを、リアルに描くんではなく、なんか空気のようなものを淡く描きたかったんだろうな、と思います。
そうですね (sakurai)
2007-02-22 08:08:45
監督は若い方で、実際はあの空気を知らなかったような年代でしたが、よくあらわしていたと思います。
なんか拠り所のない、あやふやな時代の空気はよく出ていたと思いました。
そっかぁ~ (miyu)
2009-12-02 21:08:13
あたしは結構面白い映画だなぁ~って思ったのですが、
ちょっと焦点はぼやけ気味な感じでしたかぁ。
でも、これって全くありえないお話でもないんでしょうかね?
>miyuさま (sakurai)
2009-12-03 16:22:06
なんだろうなあ。時代の描き方にものすごく気を取られて、肝心なところがぼやけたんじゃないかと感じた次第です。
時代は、匂ってくるようでした。
でも、このシチェーションはないでしょう。
義賊っぽいんじゃないかってのはいわれたような気もしますが。

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